第4話「偽装の愛」【後編】
【シーン:迎賓館・深夜】
夜。
窓の外には、細く冷たい月。
セリナはベッドの上で、小さく身を縮めていた。
目を閉じても、心は安らがない。
(何かが……怖い。)
誰も覚えていない世界で、
唯一、手を伸ばせる存在――ヨンジュン。
セリナは、小さな声で名前を呼んだ。
「……ヨンジュンさん……」
その声が、静かな廊下に溶ける。
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【シーン:廊下に立つヨンジュン】
部屋の外で控えていたヨンジュンの眉が、かすかに動いた。
(……まただ。)
感情に、踏み込んではならない。
この使命だけが、彼を支えているはずだった。
だが、セリナのか細い声が、
まるで見えない糸でヨンジュンを引き寄せる。
彼は、そっとドアに手を添えた。
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【シーン:別棟・ギョンシクとミランの暗躍】
一方、同じ敷地内の別棟。
暗い部屋で、ギョンシクとチェ・ミランが声を潜めていた。
「――セリナ嬢の記憶喪失。好都合だ。」
ギョンシクはにやりと笑う。
「利用する。ハン家の正統後継者として、都合よく育て直す。」
ミランは無表情で頷いた。
「ジン・ヨンジュン。あれは……使えるかもしれません。」
「ふん、いずれ処分すればいい。」
赤いワインがグラスの中で渦巻いた。
ギョンシクの目が、獲物を狙う獣のように光る。
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【シーン:迎賓館・セリナの部屋】
扉が静かに開いた。
驚いたセリナが、顔を上げる。
そこには、ヨンジュンがいた。
「大丈夫ですか。」
低く優しい声。
セリナは、たまらずヨンジュンに手を伸ばした。
ヨンジュンは、一瞬だけためらったが――
次の瞬間、彼女をそっと抱き寄せていた。
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「……怖い夢を見たの。」
震える声。
ヨンジュンは、何も言わず、
ただ彼女の肩を優しく抱きしめた。
心が、痛かった。
冷酷な仮面の下で、
彼の胸には確かな”痛み”が生まれていた。
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【シーン:ヨンジュンの独白】
その夜、
ヨンジュンはセリナが眠りにつくまで、そっとそばにいた。
胸の中で、言葉にならない葛藤が渦巻く。
(守りたい、なんて――思うな。)
(これは、偽装の愛だ。)
けれど、
セリナの無防備な寝顔を見つめながら、
ヨンジュンは気づいてしまった。
自分が、
取り返しのつかない領域に、
足を踏み入れ始めていることを。
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(俺は――まだ戻れるか?)
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夜の静寂が、
二人の間に、
消えない絆を、
そっと刻み始めていた。
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【第4話 完】




