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紅蓮の契約  作者: ZEN
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第4話「偽装の愛」【後編】

【シーン:迎賓館・深夜】


夜。


窓の外には、細く冷たい月。


セリナはベッドの上で、小さく身を縮めていた。

目を閉じても、心は安らがない。


(何かが……怖い。)


誰も覚えていない世界で、

唯一、手を伸ばせる存在――ヨンジュン。


セリナは、小さな声で名前を呼んだ。


「……ヨンジュンさん……」


その声が、静かな廊下に溶ける。


**


【シーン:廊下に立つヨンジュン】


部屋の外で控えていたヨンジュンの眉が、かすかに動いた。


(……まただ。)


感情に、踏み込んではならない。

この使命だけが、彼を支えているはずだった。


だが、セリナのか細い声が、

まるで見えない糸でヨンジュンを引き寄せる。


彼は、そっとドアに手を添えた。


**


【シーン:別棟・ギョンシクとミランの暗躍】


一方、同じ敷地内の別棟。


暗い部屋で、ギョンシクとチェ・ミランが声を潜めていた。


「――セリナ嬢の記憶喪失。好都合だ。」


ギョンシクはにやりと笑う。


「利用する。ハン家の正統後継者として、都合よく育て直す。」


ミランは無表情で頷いた。


「ジン・ヨンジュン。あれは……使えるかもしれません。」


「ふん、いずれ処分すればいい。」


赤いワインがグラスの中で渦巻いた。


ギョンシクの目が、獲物を狙う獣のように光る。


**


【シーン:迎賓館・セリナの部屋】


扉が静かに開いた。


驚いたセリナが、顔を上げる。


そこには、ヨンジュンがいた。


「大丈夫ですか。」


低く優しい声。


セリナは、たまらずヨンジュンに手を伸ばした。


ヨンジュンは、一瞬だけためらったが――

次の瞬間、彼女をそっと抱き寄せていた。


**


「……怖い夢を見たの。」


震える声。


ヨンジュンは、何も言わず、

ただ彼女の肩を優しく抱きしめた。


心が、痛かった。


冷酷な仮面の下で、

彼の胸には確かな”痛み”が生まれていた。


**


【シーン:ヨンジュンの独白】


その夜、

ヨンジュンはセリナが眠りにつくまで、そっとそばにいた。


胸の中で、言葉にならない葛藤が渦巻く。


(守りたい、なんて――思うな。)


(これは、偽装の愛だ。)


けれど、

セリナの無防備な寝顔を見つめながら、

ヨンジュンは気づいてしまった。


自分が、

取り返しのつかない領域に、

足を踏み入れ始めていることを。


**


(俺は――まだ戻れるか?)


**


夜の静寂が、

二人の間に、

消えない絆を、

そっと刻み始めていた。



【第4話 完】

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