第4話「偽装の愛」【前編】
【シーン:迎賓館・病後のセリナ】
静かな朝。
カーテン越しに、柔らかな光が差し込む。
白いベッドの上、セリナはゆっくりと目を覚ました。
世界は、まだぼんやりと霞んでいる。
名前も、家族も、過去も――思い出せない。
だが、その心の奥にだけ、
あたたかな残像があった。
――優しい声。
――温かな手。
(……誰……?)
ふと、胸がきゅっと締めつけられる。
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ノックの音。
「失礼します。」
低く穏やかな声と共に、ジン・ヨンジュンが現れた。
黒いスーツ、整った所作。
完璧な、“秘書”としての姿。
セリナは彼を見るなり、反射的に胸の奥が波打つのを感じた。
「……ヨンジュンさん……」
自分でも驚くほど自然に、名前を呼んでいた。
ヨンジュンは一瞬だけ目を細めたが、すぐに微笑んで答える。
「本日から、ハン様専属の秘書として務めさせていただきます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。」
礼儀正しく、冷静に。
完璧な仮面をかぶりながら。
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【シーン:二人だけの空間】
セリナは、小さな声で尋ねた。
「……私、いろんなことを、忘れてしまったみたいで……」
その声は、不安に震えていた。
ヨンジュンは一歩、静かに近づいた。
「大丈夫です。焦らなくていい。
少しずつ、思い出していきましょう。」
その言葉は、秘書としてのもの。
あくまで”表向き”の優しさ。
だがヨンジュン自身、
その瞳の揺れを止められなかった。
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――偽りでもいい。
――今だけは、寄り添うふりをする。
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セリナは、かすかな微笑みを浮かべた。
「……ありがとう、ヨンジュンさん。」
その微笑みが、
ヨンジュンの胸に、またひとつ小さなひびを入れたことに、
彼自身まだ気づいていなかった。
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(続く・中編へ)




