第二章 謎の世界
翌日、僕は太陽が昇る前に起きた。これは決して自分が良い生活習慣を持っているわけではなく、指定された場所があまりにも遠いため、時間までに到着するために仕方なく選んだだけだ。
緊張しすぎて眠れなかったという要因もありましたが、決してメインではない。
簡単に身だしなみを整えた後、すぐに家を出た。
手紙の中に服装に関する指示がなかったため、僕はいつも通りスーツを着ることにした。
やっぱりこの時間帯には車も少ないなぁ。
道の中に僅かな車しか運転していなかった、まる田舎の小道みたい。
それでも、道中は全く渋滞がなかったにもかかわらず、2時間が経つにつれて太陽がゆっくりと昇ってきたが、僕はまだ指定された場所に到着することができなかった。
クッソーさすがに辺鄙すぎるだろう、こんな場所に行かせて、一体何をさせるつもりなんだよ。
ついに、僕は約束の時間の10分前に到着した。
車を近くに停めた後、僕は一人で目的地に向かった。
しかし…
目的地には何もない。
文字意味上で何もない。
目に入る限り何もなく、周囲にはまばらな木々があるだけだった。。
こんな場所に行かせて、一体何をさせるつもりなんだよ!
そういう人が人の命を簡単に奪えるぞ~
突然、僕は昨日柳の話を思い出した。
まさか…
嫌な予感が湧き上がり、不安と恐怖がじわじわと頭を支配し始めた。
「も、戻ろうか、どうせ大したことはないだろう。」その瞬間、帰りたいという気持ちが湧き上がり、すぐに引き返そうと考えた。
『松本様ようこそこちらへ』
振り返った瞬間、まるで合成音のように、まったく起伏のない少女の声が突然、私の頭の中に響き渡った。
僕は突然現れた謎の声に思わず踏み出そうとした足を止め、振り返る瞬間、信じられない光景が目に飛び込んできた。
先まではっきり見えていた空き地は、いつの間にか現れた霧にすっかり覆われていた。
「な…何がお…起きた?」僕目の前の信じられない光景に驚かされ、怖くて言葉の能力さえ失ってしまったみたい。
『驚かせて申し訳ございません。少々お待ちください。』
先ほどとは異なる別の声が、同じように私の頭の中に響いた。
「な……ななな、なに?」次々と起こる出来事に頭が真っ白になり、僕はまるで古いレコードプレーヤーのように、言葉にならない単語を口にするしかできなかった。
周囲の霧がますます濃くなり、それに伴って視界も狭まっていった。
霧が周囲のすべてを覆い尽くし、視界が真っ白になるその瞬間、霧は一瞬で跡形もなく消え去り、まるで最初から存在しなかったかのようだった。
「え、なに、何があったの?」少し慣れてきたのか、目の前で消えた霧にようやく反応できるようになった。
「失礼いたしました、松本様ようこそ異人対策課本部へ。」先まで頭の中響いていた声は後ろから聞こえて来た。
振り返った瞬間、僕は再び目の前の光景に驚かされた。
いつの間にか、さっきまで何もなかった空き地に巨大な洋館が現れていた。
洋館の周囲には何もなく、見渡せば地平線さえも見えるほどだった。
洋館はダークな雰囲気を基調としている、外壁だけでなく、扉や窓、さらには周囲のフェンスまでもが黒光りしていた。
さらに上を見上げると、空の太陽はすでに姿を消していた。光源のない空はまるで黒い幕で覆われたかのように真っ暗だった。
しかし、これが視界に全く影響を与えることはなかった。
洋館の周りに青白い炎が未知の原理で空中に浮かび、静かに人々の前方の道を照らしていた。
道路の前方、洋館の大門の前、二人の少女が静か立っている。
「「松本様、こちらにお越しくださいませ。」」僕が彼女たちの存在に気づいた後、二人はまるで何度も練習したかのように整然と僕にお辞儀をした。二人の動きと速度には一切のズレがなく、始まりから頭を上げるまで、完璧に一致していた。
彼女たちのお願いを聞いた後、僕の足は突然、無意識に動き出し、ゆっくりと洋館の方へ向かって歩き始めた。
「え、待って、は早く停まれ!」けれどどんなに抵抗しても、前に進む足を止めることはできなかった。
ほどなくして、僕は彼女たちの目の前まで歩いていた。
「き、君たちは…僕をどうするつもりだ…?」短時間であまりにも多くの恐怖を受けた僕は、もう冷静さを保つことができず、口が震えてまともに言葉を紡ぐことさえできなかった。
「「驚かせてしまい申し訳ございません。それでは、どうぞ私についていらしてください。」」二人は再び深くお辞儀をし、僕に誘う。
この瞬間、僕は足を動けることを本能出来に分かった。
すると…
「いやだ、帰らせてくれ!!!」僕は頭が狂ったように走り出しました。次に何が起こるか分からないここに一秒でも長く留まっていたくない。
でも当然のこととして、僕は願っていたように逃げることができなかった。
その中の一人の少女は何の前触れもなく、突然前に現れた。
「!!」私は驚いて急ブレーキをかけ、その勢いで彼女の顔の前でぴたりと止まった。
彼女は何も言わずにいきなり懐から純白のシースナイフを取り出し、それを私に向けてこう言った『どうかご落ち着きになって、私どもについてきていただけますでしょうか。』
どういうわけか、先ほどまで慌てふためいていた僕が、その瞬間にはすっかり落ち着いていた。まるで恐怖という感情が誰かに抜き取られてしまったかのようだった。
しかし、それに驚きはしなかった。
ついさっき、彼女たちに足を操られたばかりだ。感情を操ることなど、彼女たちにとっては何の難しいことでもないのだろう。むしろ、思考を保つ余裕を与えてくれたことに感謝すべきなのかもしれない。
こうして、僕は彼女に連れられて洋館の門前まで戻された。
「「改めまして、ようこそお越しくださいました。」」再び誤差なく僕にお辞儀をした後、左側の少女が先に自己紹介を始めた「私はパールと申します。」
「私はオブシディアンと申します。」パールが自己紹介を終えた後、右側の少女は一切の間をおかずに自己紹介を続けた。
僕はようやく今になって、彼女たちをじっくり観察することができた。
パールと自称する少女は、その名の通り、月牙色の足首までの長い髪を持ち、微かに透けるような頬紅が思わず心を動かされる。身に着けている伝統的なイギリス風のメイド服は、彼女の雪のように白い肌を一層引き立てている。深く澄んだ瞳は、何の邪魔もなく真っ黒で、少し視線を合わせるだけで、その中に引き込まれるような錯覚を覚えるほど美しく、思わず心を奪われる。
隣のオブシディアンも負けてはいない程の美人だ。夜空のように純粋な黒髪は丁寧に整えられ、一本一本の長さがまるで計算されたかのように揃っている。健康的な小麦色の肌と身に纏ったメイド服は、パールとは異なる南国風の魅力を引き立たせている。銀白色の瞳からはかすかな光が漏れ、どこか生き生きとした活力と生命力を感じさせる。
もし彼女たちが街中に現れたら、きっと大勢の人に注目するだろう、少なくとも私は絶対に見とれてしまうだろう。
最初からの機械音…
美しい過ぎる程の顔…
ある大胆な推測が僕の頭の中で形を成した。
もしかして…
取るに足らないことを考えながら、僕は彼女たちの足取りに従い、洋館の中へと足を踏み入れた。
「!」
洋館に足を踏み入れた瞬間、その内装の美しさに思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
暗い外観とは裏腹に、洋館内部は非常に採光が良く、柔らかな日差しの下でアイボリー色の壁と大理石の床が、豪華でありながらも決して過度ではない心地よい印象を与えていた。高さ3~4メートルほどのケースメントウィンドウがいくつも設置されており、室内に光を取り込むだけでなく、空間の広がりをも感じさせている。元々広々としていた大広間が、さらに一層開放的でゆったりとした雰囲気を醸し出していた。
両側の壁にはさまざまな絵画が掛けられており、スケッチ、水墨画、浮世絵、さらには落書きまでも含まれていて、まさに古今東西の芸術を網羅している。
窓の外に広がる庭園では、鮮やかな色彩を持つ花々が日光を浴びてきらきらと輝いており、シンプルな内装の室内に単調さを感じさせない彩りを添えている。
ううん…
日光?
庭?
待って、外で見るとなんもないですよね?
ここ日光ではなく、太陽そのものもないですよね?
「松本様、どうなさいましたか?」僕が足を止めたことに気づいたパールが尋ねた。
「い、いいえ、別に大した事ではないが…」相手がわざわざ足を止めたのを見て、僕も直接疑問をぶつけた「ただ、窓の外の景色、外の様子と少し違うようなぁ。」
「「それは何か問題でもございますでしょうか。」」
はいはい、お前たちにとって容易い物ですね、分かりました。
彼女たちが当然のように聞き返してきたので、僕もそれ以上言わずに案内を続けるようお願いするしかなかった。
しばらくして、僕は真っ黒な扉の前まで案内された。扉の横には歪んだ記号が描かれたプレートが掛かっていたが、不思議なことに、その記号の意味がなぜかはっきりと理解できた――「第三特務小隊」。