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第八話 食べる幸せ

 キースの部屋から食堂に戻ってきた私は、はーっとため息を吐きながら、食堂のテーブルに突っ伏した。

キースから夕食を一緒にと言われ、緊張しながらも話をすることが出来た。


「私、キース様に変なこと言わなかったかな? 大丈夫だよね?」


 頭がボーっとして、何を話したのかもよく覚えていなかった。

ただ、キースが笑ってくれたことが嬉しくて、それを思い出すだけで心が暖かくなる。


「明日から厨房の仕事も始まるけど頑張れそう!」


 私は、小さくガッツポーズをした。

その時、後ろで私を呼ぶ声が聞こえた。


「サラか? こんな時間まで仕事をしていたのか?」


 食堂に入ってきたカインは、私を見て少し驚いた様にそう言った。


「カインさん! お疲れ様です」

「ああ、お疲れ様。俺は城の警備中なんだ。食堂に明かりがついていたから覗いてみた」

「そうなんですね。実はさっきまでキース様のところで夕食をご一緒させていただいていました」

「え?」


 カインは、信じられないという声を出して私を見つめた。


「キースと…… いや、キース様と?」

「はい。一緒にどうだ? と言われて」


 カインは、顎に手を当てて何かを考える様な仕草をした。


「カインさん?」

「あ、いや、キース様が他の者と食事を取るなんて初めてだから驚いたんだ」

「そうなんですか? 私、失礼だったかな……」


 自分が、もしかしたらとんでもない行動を取ってしまったのではと焦ってしまう。


「違うんだ。悪い意味じゃない。むしろ、俺はサラに感謝したいくらいだ」


 カインは、落ち込んでしまった私を見てそう言った。


「感謝、ですか?」

「ああ。実は俺とキース様は幼馴染でな。偏食で誰とも食事が出来ないキース様のことはずっと心配しているんだ」


 カインはそう言うと、私に微笑みかける。


「でも、お前がキース様を変えてくれそうで俺は嬉しい」

「そんな。私なんかでよければ毎日でも夕食をご一緒したいです」


 (もっとキース様のことが知りたい)


 カインの話を聞いて、ますますその思いは強くなった。


「これからもキース様のことをよろしく頼む」

「はい!」


 私は、キースのことを考えながら笑顔でカインに返事をしたのだった__。


           ☆


 サラが帰り、一人になった部屋でキースは窓の外を見つめていた。

サラがこの国に来る前に住んでいたという場所での生活や仕事の話。

自分は本が好きで、それなりに幅広い知識があるにも関わらず、サラの話は初めて聞くことばかりだった。

また話を聞きたい。

自然とそんな気持ちになっていた。


 (俺がこんな感情を抱くなんてな)


 そんな自分に、思わず笑みがこぼれる。

窓の外では、そんなキースを祝福するように満天の星たちが輝いていた__。


           ☆


 次の日の厨房で、私は大量のご飯を炊き、大量のお味噌汁を作っていた。

噂を聞きつけた騎士たちが次々とそれを平らげていく。

食堂が閉まる時間まで、私は忙しなく動き回っていた。


「やっと終わった〜! もうダメ……」


 グ〜〜〜


 身体は疲れているのに、私のお腹の音は相変わらず元気だ。


「サラさんお疲れ様。これ、昼食。残り物だけど食べて!」


 エリックが、残り物の料理を綺麗に盛り付けて運んでくれた。


「ありがとうございます! うわぁ、今日はデザートまでつけてくれて嬉しい!」


 (苺ムースのチーズケーキ! 美味しいんだよなぁ、これ)


「ゆっくり食べてってね! じゃあ俺は部屋に戻るね」


 エリックはそう言うと、手を振って自分の部屋に戻っていった。


「いただきます!」


 手を合わせて、美味しい昼食を味わって食べる。


「あ〜幸せ〜!」


 美味しい料理を食べて幸せを実感する。

でも、これが当たり前ではない人もいる。


 (少しずつでも、キース様に食べることの幸せを感じてもらえたら……)


 ふと浮かんだ顔に思いを馳せる。


 (そうだ! 今日の夕食は私の好きな料理を持っていこう! 食べてくれるかはわからないけど、私のことももっと知ってほしい)


 そんなことを思いついて心がうきうきしてくる。


 (早くキース様に会いたい!)


 キースとの夕食の時間が待ち遠しくて、その後何度も何度も時計を見てしまう私なのであった__。


読んでいただきありがとうございます。

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