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第六話 心のやすらぎ

 今日は食堂のアルバイトがお休みの日。

この国に来てから、初めて丸一日自由に自分の時間が使える。

私は朝からウキウキしていた。


「今日は街に行って、美味しそうなランチがあるお店を見つけたいし、それから本屋に行ってこの国ことを学べる本を買いたいし、それから……」


 数えたらきりがなく、とても一日だけでは足りないくらいだ。

とりあえず、あまり考えすぎずに街を探索しようと思う。

お城の外は青空が広がっているがまだ人通りも少ない。

私ははやる気持ちを落ち着かせて、ゆっくりと街まで歩くことにした__。


          ☆


 サラが街中でランチのお店を探している頃、昼食時の食堂ではいかつい騎士たちが料理人に質問をしていた。


「執事見習いのレンから聞いたんだが、なんでもサラさんが作ってくれたまかない飯がすごく美味だったとか。俺たちにもそれを食わせてもらえないか?」


 質問されたエリックは何のことかわからず、四苦八苦していた。


「今日はサラさんお休みなんですよ。明日来たら聞いてみますね」


 エリックの言葉に騎士たちは残念そうにその場から去っていく。

それを作業をしながら見ていたソフィアは少し考え、エリックのところへやってきた。


「明日サラが来たら、さっきアイツらが言ってたまかない飯を作らせな」

「えっ? は、はい。わかりました」


 (ソフィアさんまた何か考えてるのかなぁ)


 エリックは肩をすくめると、気を取り直して厨房に戻るのだった。


          ☆


 ゆっくり街を探索した私は、また花屋の前に来ていた。


「こんにちは〜」


 挨拶をして中に入る。

店内は相変わらず綺麗な花で溢れていた。


「いらっしゃい。また来てくれて嬉しいよ」


 ステラは、そう言って笑顔で私を迎えてくれた。


「黄色いバラを贈った相手とはどうだい? 仲良くなれたかな?」

「まだ仲良くとまではいかないんですけど、黄色いバラは気に入ってくれたみたいで嬉しかったです」


 私はあの時のキースを思い出す。

そんな私を見て、ステラは嬉しそうに微笑んだ。


「良かった。君の嬉しそうな顔が見れて」

「ありがとうございます。今日は新しい花を買おうかなって来てみました」


 私は周りにある色とりどりの花を見回す。


「それならペチュニアはどうかな?」


 そう言ってステラは、ピンク色や紫色、白色の小さな花がたくさん咲いている花の鉢植えを見せてくれる。


「ペチュニアの花言葉は『心のやすらぎ』だよ。花を贈った相手も君も、心がやすらぐように。どうかな?」

「素敵ですね! ぜひ買わせてください」


 ステラはうなづくと、ペチュニアの花を何本か取り、それをブーケにしてくれた。

私はそれを買うと、ステラにお礼を言ってお城に戻るのだった。


          ☆


 カインはキースの元に向かっていた。

今日仕事を休んだサラの代わりに、キースに夕食を届けるためだ。


「キース様。夕食を届けに参りました」

「入れ」


 キースの言葉に従い、カインは部屋の中に入った。

すると、カインの口調が変わった。

今は王子と騎士という関係だが、実は二人は幼馴染なのである。


「キース。また本を読んでいるのか?」

「読みたい本がたくさんあるんだ。ところで何でお前が夕食を持ってくるんだ? あの娘はどうした」


 キースは、サラがいないことをカインに尋ねる。

カインは少し驚きながら、料理の皿をテーブルに置いていく。


「お前が他人のことを俺に聞くなんて初めてだな。サラに興味があるのか?」

「そんなことは思っていない。いなかったことが気になっただけだ」


 そう言ってまた再び本へ目をやったキースを見ながら、カインはテーブルにある黄色いバラの一輪挿しを手に取った。


「黄色いバラ? お前が飾ったのか?」

「あの娘だ。捨てるのもどうかと思ってそのままにしてある」

「ふ〜ん」


 カインは面白そうに笑って、それをまたテーブルに戻した。


「それよりカインも一緒に食べないか? 久しぶりにお前の話が聞きたい」


 キースはそう言って、カインに椅子に座るよう促す。

そんなキースを見てカインが笑う。


「そうだな。久しぶりに語り合うか」


 いつもは静まり返っているキースの部屋から、楽しそうに笑い合う幼馴染たちの声が夜の廊下にいつまでも響いていたのだった__。


読んでいただきありがとうございます。

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