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第三話 キース王子の秘密

「失礼いたします」


 私は緊張しながらも粗相のないようにキースの部屋の中へ入った。

厨房の料理人たちから預かった、ワゴンに乗せられた料理をテーブルに並べていく。

その間、キースは料理に全く興味がないという素振りで窓の外を頬杖をつきながら眺めていた。


 (よし。教えられた通りに並べられたよね)


 料理を全て並べることが出来て安心しているとキースが私に声をかけた。


「お前初めて見る顔だな。新入りか?」

「あ、はい! よろしくお願いいたします」


 深々とお辞儀をした後にキースの顔を初めてちゃんと見ることが出来た。


 (うわぁ、すごいイケメン。これぞ王子様って感じ……)


 私がキースに見惚れていると、またかという顔をされ横を向かれる。


「1時間後に片付けに来い」


 キースは料理には手をつけず、本棚から本を取り出して読み始める。


「かしこまりました」


 私は少し不思議に思ったものの、そのままキースの部屋を後にしたのだった。


 そろそろお皿を下げる時間になり、私は再びキースの部屋に向かった。


 コンコン


「キース様、サラでございます。お皿を下げに参りました」

「入れ」


 先程と同じ低い声が聞こえる。


「失礼いたします」


 一歩足を踏み入れたところでテーブルの料理が目に入った。


 (嘘! ほとんど食べてない……)


 何種類もある料理の中でステーキだけが綺麗に食べられているだけ。

添えてある野菜は全てよけられている。


 (ひどい! せっかく厨房の料理人たちが手間ひまかけて作ってくれたのに)


「あの」


 私は咄嗟にキースに声をかける。


「ん? なんだ」


 読書をしていたキースが本から目を離して私のほうを見る。


「お肉しか食べてないので気になって」

「は? それで充分だろ。何か問題でもあるのか?」


 何も考えず料理を残すキースにイラッときた私はさらにキースへ思ったことを口にする。


「厨房の料理人たちが毎日キース様のために一生懸命料理を作っています。それに、そもそも食べ物を残すなんて……」


 ガタン


 椅子から立ち上がったキースが私に近づき、私の顎を指でグイッと持ち上げた。


「お前、誰に対して物を言っているのかわかっていないようだな」


 綺麗な顔を怒りで歪ませて迫るキースに私は何も言えなくなる。

そんな私を見てキースが手を離した。


「早く片付けて出て行け」


 氷のように冷たい言い方に心に何かが突き刺さったように痛くなる。

私はほとんど手をつけられていない料理を無心で片付け、足早にキースの部屋から立ち去ったのだった__。


「はぁ……」


 キースの部屋から食堂に帰ってきた私は深いため息をついた。


 (何なのよ、あの王子。あんなに美味しそうな料理を食べないなんて)

 (ご飯の一粒でも残しちゃいけないって、教わってないの?)


 料理のことと、冷たいキースの態度に思考がぐちゃぐちゃになる。


 グ〜〜〜


 いつもながらお腹の音だけが元気に空腹をアピールしてくる。


「そういえば、自分の夕飯まだ食べてなかった。どうしよう」


 私が独り言を呟いていると、厨房から1人の料理人が出てきた。

料理人の中で1番若いエリックだ。


「あ、新人のサラさんだよね。お疲れ様。

まかないのご飯があるから食べない?」

「え! いいんですか? 嬉しい!」

「今持ってくるから、そこのテーブルの椅子に座って待ってて」


 エリックはそう言うと、厨房から美味しそうな料理を運んできてくれた。


「グラタンとスープだけど、良かったらどうぞ。熱々だから気をつけてね」


 エリックはそう言って私に笑いかけた。


「ありがとうございます! いただきます」


 (美味しい……)


 弱った心にグラタンの程よい熱さが心地いい。

そんなことを考えながら嬉しそうにまかないのご飯を食べている私にエリックが声をかけた。


「何かさっき悩んでたみたいだけど、どうかしたの? 俺でよかったら話聞くよ?」


 そう言って優しく微笑んでくれるエリックに、私はさっきあった出来事を全て話したのだった。


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