表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

第二十話 永遠の愛

 キャサリンが逃げるようにその場を去り、辺りはすっかり静かになった。

私は、キャサリンの悪事を暴いてくれたレンとソフィアにお礼を言う。


「おふたりともありがとうございました。レンさんとソフィアさんがいなかったらキャサリン姫のやったことがわかりませんでした」

「あの姫、最初会った時から不審な行動してたんだよ。見張ってて良かったぜ」


 レンが鼻を擦りながらニコッと笑った。


「証拠を残すなんて、馬鹿な姫だよ。今回のことはいい薬になったんじゃないのかい?」


 ソフィアが、そう言って面白そうに笑う。


「それに……」


 ソフィアは、小声で私だけに聞こえるように耳元でささやいた。


「実は、私も若い時に先先代の国王に恋をしてねえ。その恋は叶わなかったんだが、あんたにはキース様とうまくいってほしいんだよ」

「えっ?」

「キース様のことが好きなんだろう? それくらいお見通しさ。逃すんじゃないよ!」

「は、はい……」


 (まだ返事も聞けてないのに……)


 私は、レンと話をしているキースをそっと見つめた。


 (落ち着いたらもう一度自分の気持ちを伝えよう)


 そう思いながら、あることを思い出した。


「そういえば、レンさん、キース様に何か用事があるんじゃないんですか?」

「は?」

「この前、街からの帰り道にキース様のことを私に聞きましたよね?」


私がそう言うと、レンは首を振る。


「もういいんだ」

「はい?」

「今回のことで俺、目が覚めたわ。自分の力でなんとかする」


 そう言って、レンは拳を握りしめる。


「よくわからないですけど、頑張ってください!」

「おう!」


 照れを隠すレンをソフィアが冷やかす様子を、私とキースはお互いに顔を見合わせて笑いながら見ていたのだった__。


           ☆


 夕日がサザーランドの海に沈んでいく。

綺麗なオレンジ色の景色の中を、私はキースと歩いていた。

今日は、キースと一緒にステラの花屋を訪れたのだ。

先日の騒動で、飾ってあったピンクのマーガレットも被害に遭い、再び買い直してきたのだった。

海から流れてくる風が私の髪を撫でていく。


「少し風が出てきましたね。お城まで急ぎましょうか」


 私はそう言って、キースのほうを振り向いた。

目が合うと、キースは風でなびいてしまった私の髪を耳にかけてくれた。


「ありがとうございま……」


 私がキースにお礼を言い終わる前に、言葉を奪われた。

それは不意打ちのキス……。


「これが俺の返事だ」


 顔を離すとキースはそうつぶやき、そして私の前に跪いた。


「サラ、俺と結婚してほしい。一生そばにいてくれ」


 私の手を取りながら、キースは私を見つめた。


「はい……」


 涙がこぼれそうで、それだけ言うのが精一杯な私をキースは優しく抱きしめてくれる。


「愛してる」


 キースはそう言って、もう一度私にキスをした。

夕日を背にした二人の影は、いつまでも離れることはなかった__。


           ☆


 海辺のチャペルから可愛らしいベルの音が鳴り響いている。

今日は、私とキースの結婚式。

よく晴れた空の下には、街から大勢の国民が押し寄せ、歓声をあげている。


「キース様! サラ様! ばんざーい!!!」


 私がいる控え室にも、その歓声がよく聞こえる。


 (今でも自分がキース様と結婚するなんて信じられないな)


 白いウェディングドレスを身にまとった自分を鏡で見ながらそう思う。

その時、部屋をノックする音がした。


 トントン


「こんにちは、サラさん、いや、サラ姫」


 部屋に入ってきたのはステラだった。


「ステラさん! 来てくれてありがとうございます!」

「とても綺麗だ。それにお礼を言いたいのはこちらのほうだよ。僕に結婚式の花を任せてくれてありがとう。すごく光栄だよ」


 ステラは、キースの希望で結婚式全ての花のコーディネートを任されたのだった。


「チャペルの中や、パーティー会場を先に見せてもらいました。可愛くコーディネートしてくれて、すごく嬉しいです。ありがとうございます」

「喜んでくれてよかった。僕からサラ姫へ贈る花だよ。マリーゴールド、花言葉は『変わらぬ愛』」

「『変わらぬ愛』」

「そう。いつまでもキース様とお幸せに! 僕からの願いです」


 ステラは手を胸に当てて、かしこまって私にお辞儀をした。



 しばらくステラと話をしていると、カインが部屋に入ってきた。


「サラ、どうだ、支度出来たか?」


 カインは、私の花嫁姿を見ると驚いたような顔をした。


「すごく綺麗だぞ、サラ。キースより先に見てしまってすまない」


 申し訳なさそうに下を向くカインに私が声をかけようとすると、部屋の入り口にキースが現れた。


「俺の花嫁に惚れるなよ、カイン」


 キースは笑いながらカインに言い、私のほうを見る。

そして私に近づくと、耳元でささやいた。


「本当は誰にも見せたくないくらい綺麗だ」

「キース様!」


 恥ずかしがる私を笑いながら、キースは私にブーケを渡した。


「かすみ草のブーケだ。『永遠の愛』を誓いにいこう」


 差し出されたキースの腕に手を絡める。

気持ちを確かめ合うようにお互いを見つめ合うと、キースが微笑んでくれる。


 (私、絶対キース様を幸せにしますね!)


 私は心の中でそう誓うと、キースと一緒にチャペルに向かって歩き出すのだった__。    完


最後まで読んでいただきありがとうございました!

感想やコメントをいただけるととても嬉しいです!

ブックマークもよろしくお願いいたします!

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ