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第十六話 ピンクのマーガレット

 特別な来賓客しか入れない部屋が大広間の横にある。

サザーランド国王とキースはその部屋に入った。

部屋には、イーストン国王とキャサリンが肩を並べて座っている。

「待たせて申し訳ない。これが第三王子のキースです」


 サザーランド国王がイーストン国王とキャサリンにキースを紹介した。


「キースと申します」


 キースは、内心早くこの場を去りたいと思っていたが仕方なく二人にお辞儀をした。


「初めまして! 私、キャサリンと申します。

今日はキース様に会えて光栄ですわ」


 イーストン国王が話す前に、キャサリンがキースに挨拶をする。


「これ、キャサリン。少し落ち着きなさい」


 イーストン国王がキャサリンをたしなめると、サザーランド国王が笑いながらイーストン国王に声をかけた。


「我々がいるよりも若い二人で話したほうが良さそうですな」

「それもそうですね。では、我々は大広間に戻りましょうか」


 イーストン国王もそう言って席を離れてしまう。

部屋には、キースとキャサリンの二人だけになってしまった。


 (やっと二人きりになれたわ。絶対にキース様と仲良くならなきゃ)


 キャサリンは、ニコニコしながらキースに話しかけた。


「キース様。私、キース様のことをたくさん教えてほしいですわ。将来は、その、結婚するんですもの、私たち」


 お見合いという名の政略結婚だということはキャサリンもよくわかっていた。

それに自分の美貌に振り向かない男は今までいなかった。

当然キースもそう思ってくれるだろう、とキャサリンは思っていた。


「申し訳ありません」


 一方的に話しているキャサリンを静かに見ていたキースが言葉を発した。


「え? 今なんて?」


 キャサリンは自分の耳を疑い、尋ねる。

キースは、キャサリンの目をしっかり見て再び言った。


「申し訳ありません。私は結婚する気はありません」


 (は? なんですって?)


「用がありますのでこれで失礼いたします」


 キースはそう言うと、キャサリンを一人残して席を立ってしまった。


 (私にこんな雑な扱いを! 許さないわ! 絶対に私のものにしてみせる!)


 キャサリンは、誰もいなくなった部屋で一人闘志を燃やすのだった__。


           ☆


 カインは、サラの部屋の前に来ていた。


 トントン


 返事がない。


 (こんな時間にどこに行ったんだ? まさか、キースのお見合いのことを……)


 カインは、城のあちこちを探したがサラの姿はどこにもなかった。

その時、前から歩いてくるレンを見かけた。


「おい、レン」

「うおっ、な、なんだよ、カイン」


 レンは突然声をかけられ、びっくりして立ち止まった。


「サラを見なかったか?」

「見てねーよ」

「頼みがあるんだが、サラを探してきてくれないか? 城の外にいるかもしれないんだ」

「はぁ? なんで俺が……」


 (待てよ。ここで恩を売っておけば、サラにもキース様のことを頼みやすくなる!)


「俺は城の警備で外に出られないんだ」


 カインがレンにそう言うと、レンは迷惑そうなふりをして答えた。


「わかったよ。城の外を見てくる」


 レンは、しめしめという気持ちで城の外に向かって歩き出した__。


           ☆


 私は、ステラと一緒に夕食を食べていた。


「どうかな? サラさんの口に合うかな?」

「とっても美味しいです! ステラさん料理上手なんですね!」


 私は、デザートのプリンを食べながら笑顔で答えた。


「それなら良かった。ところで、今日は何か用事があってきたんでしょう?」


 私はキースのことを思い出し、食べる手を止めた。


「言いたくなければ言わなくてもいいよ」


 ステラは優しく私を見つめる。

私は食べかけのプリンを見ながら、ポツポツとステラに話し出した。


「キース様、お見合いするらしいんです。

それで、私……」

「そうか。キース様が。でも本人に直接聞いてみたのかい?」

「いえ、まだキース様には会えなくて」

「それならこれを持っていって」


 ステラは店内に行くと、手に花を持って戻ってきた。


「ピンクのマーガレットだよ。先日、キース様は白いマーガレットを選んだ。白は『誠実・心に秘めた愛』だったね。このピンクのマーガレットは『真実の愛』なんだ」

「『真実の愛』」


 私は、ピンクのマーガレットをステラから受け取る。


「せっかくキース様と絆が深まったんだ。自分の気持ちに素直に、ねっ?」


 ステラが私にウインクをする。


 (自分の気持ちに素直になって、キース様とお話してみよう)


 私は、暖かい気持ちでピンクのマーガレットを見つめたのだった__。



読んでいただきありがとうございます。

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