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第十話 前進する未来

 (なんていいタイミングなんだ!)


 レンはサラの話を聞き、そう思っていた。

キースの部屋に花を持っていく時に、さりげなく自分のことを伝えてもらいたい。

キースと話す機会を作ってもらえたら……。

そんなことを考えてソワソワしてしまう。


「レンさん? どうかしましたか?」


 サラが心配して尋ねる。


「あ、あのさぁ。サラはキース様とは仲がいいのか? 話をするんだろ?」

「やっと最近お話させていただくようになったんです。仲がいいだなんて、そんな図々しいこと言えないです」

「そ、そっか。あはは。そうだよな、あっちは王子だし……」


 (なんだよ、仲がいいってわけじゃねーのかよ。でもサラしか頼みの綱はないし、もう少し様子見るか……)


「それがどうかしたんですか?」


 レンがブツブツとつぶやいていると、サラが不思議そうに質問をしてくる。


「い、いや。こないだ仕事が終わって自分の部屋に戻る時にさ、キース様の部屋から出てくるサラを見かけたんだよ。だから……」

「だから?」


 サラは純粋な目でレンを見る。


 (そんな目で見るな! 余計言えなくなるだろ。キース様と会わせてほしい、なんて!)


 自分の昇進のためにキースを利用しようとしていることは絶対に言えない。


「レンさん?」


 見つめられて、固まってしまったレンにサラが声をかける。

レンが、この場をどうしたものかとあれこれ考えていると後ろから声がした。


「お前たち、何をしているんだ?」


 (ゲッ! この声はカイン!!!)


 サラが後ろを振り向くと、そこには剣の鍛錬が終わり城に戻る途中のカインの姿があった。


「サラじゃないか。買い物の帰りか?」


 カインは、サラの手元にあるガーベラの花束を見ながら言った。


「そうなんです」


 そうか、とカインは言うと、後ろを向いているもう一人に声をかけた。


「お前は……」


 カインが前に回ってその人物の顔を見た。


「レンじゃないか! お前またこんなところでサボっているのか?」

「違うって! 俺も街に用事があったんだよ! その帰りにサラに会ったの!」


 レンが慌てながらカインに説明をする。


「じゃ、じゃあ俺もう行くわ! じゃあなサラ!」


 そう言って、レンは逃げるようにその場を走り去った。


「レンに何か言われたのか?」


 カインはサラを心配して尋ねる。


「あ、いえ、何も。でも、キース様と仲がいいのか? とは聞かれました」


 サラから話を聞いたカインは、少し考えながらレンが去っていった方向を見る。


 (あいつ、何か企んでるんじゃないだろうな)


 騎士の勘のようなものを感じ、レンの行動に注意しなければと思うカインなのであった__。


           ☆


 ガーベラの花束を、ペチュニアの花と入れ替えてテーブルの真ん中に置く。

いつものようにキースと夕食を食べながら会話をしていた。


「新しい花か。この花も綺麗に咲いているな」

「ガーベラです。『希望・常に前進』という意味があるんですよ」

「前向きな花言葉だな」


 キースは色とりどりのガーベラに優しく触れ、そのあと私を見つめた。


「俺もその花屋に興味がある。今度連れていってくれないか?」


 (えっ、勝手に外出してもいいのかな?)


「ダメか?」

「あ、いえ! ぜひ!」


 私は、少し戸惑いながらもキースが花に興味を持ってくれたことが嬉しくて笑顔でうなづいた__。


           ☆

 

 次の日。

昼食の提供が終わった食堂で、エリックはなにやら考え事をしているようだった。


「うーん。どうしようかなぁ」

「エリックさん、何か悩みごとですか?」

「実はね、一ヶ月後に隣国の王様とその娘であるお姫様がここサザーランド王国を訪問するんだ」

「隣国ですか?」


 私は、興味津々にエリックを見た。


「そう。それで、訪問された時に振る舞う料理を考えてるんだ」

「そうなんですね!」

「ソフィアさん、僕に献立を任せるって。

あー、どんなものを出せばいいんだ」


 そう言ってエリックはテーブルに両肘をつき、頭を抱えた。


「サラさんの意見も聞かせてよ! なんでもいいから!」


 私の両手を掴んで懇願するエリックを放っておけず、私はエリックと一緒にしばらくその場で献立を考えるのだった__。


読んでいただきありがとうございます。

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