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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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フィーネから語られるストーリーを聞かされた二人は

 フィーネから語られるストーリーを聞かされた二人は、驚きというよりも呆れが出た。

 クラリスが政略結婚により家を追い出された事。嫁ぎ先に向かう途中で山賊に襲われ、『緑の刃』に助けられたこと。

 そして、そのままでは政略結婚が続くことを。

 だからフィーネは一芝居を打ったのだ。

 まずは着ていたクラリスのドレスをもって山賊がいた洞窟に行き、転がっていた山賊の死骸に着せる。

 そしておびき寄せた魔物に体の一部を食べさせ、それをクラリスの遺体と偽装した。

 クラリスの髪は山賊のかしらに切られた物が残されており、これを利用。

 金の指輪は事前にクラリスから貰い、すべて揃えてアーライに帰還。

 

 「——あとは二人とも知っているわね?ああ、安心して。山賊の遺体を食べた魔物は排除したし、残っていた遺体もすべてエルが焼いてきたわ」

 「めっちゃ大変だったんだからねー。無駄に多いし腐りかけで臭いし魔物をおびき寄せてるし」

 

 誇らしげに語る二人とは対照に、向かいに座るクラリスは肩を竦めて苦笑いだ。

 

 「この度は私の我儘で、マーレさんとネルさんを悲しませて申し訳ありませんでした。けど、こうまでしないと私は自由になれないと言われまして」

 「——吹き込んだのはフィーネね?」

 「え、あ、はい。流石はマーレさんですね。フィーネさんも『計画がバレるとしたらマーレが真っ先に気付くだろうから』と、集中力が途切れる夜遅くに決行しようと」

 「……やってくれたわね」

 

 思い返せばあの日は朝からバルの怪我にサイクロプス襲来と大忙しったのだ。疲れ切っていたところにこんな話を持ってこられたのでは疑う余裕もない。

 

 「エルさんの演技も見事でした。今思い返せばエルさんがギルドに来たタイミングが良すぎるとは思いますが、髪に葉っぱまで乗せてこられたんじゃ、信じちゃいますね」

 「へっへーん。私の演技もなかなかでしょ。もっと褒めてもらっていいのよ」

 「褒めるどころかマイナスよ、エル。慌ててたからといって頭に葉っぱを乗っけてくる冒険者がどこにいるのよ」

 「あ、もしかしてあの時手で顔を覆ったのって、これだったんですね」

 

 ネルがあの時のフィーネの仕草を覚えていたのか、ぽんっと手を打つ。

 

 「——まぁ事情は把握しました。それでクラリスさん。貴女はこれからどうするんですか?」

 

 マーレの問いに、クラリスは真っすぐマーレを見つめる。

 そう、肝心なのはこれからなのだ。

 今までは過去のくさにから抜け出すためのもの。それが成された今、クラリスはこれからの事を考えなければならない。

 

 「——私、冒険者になりたいと思っています」

 「冒険者、ですか。けれどご職業はまだ選ばれていないんですよね?」

 「はい。でも職業については検討を付けました。私、鑑定士になろうと思います」

 「鑑定士、ですか?」

 

 クラリスの唐突な宣言に、皆が目を丸くした。

 そもそも鑑定士とは何か。

 いわゆるメジャーな職業ではないことは確かだ。。

 一般的に無難と呼ばれる職業は農家、商人、経理、兵士といった、汎用的に解釈できる職業である。

 この辺りで有れば女神リーサからの宣託がどうあれ、そこそこ広い解釈をもって自分の能力を生かすことが出来るだろう。

 逆にマイナーな職業を選ぶ人は、女神リーサからの宣託で能力がはっきりとしており、特化させたいと願う者が多い。

 クラリスの『真実を見通し、秘匿されし能力を表現する』という宣託で有れば、確かにマイナーな職業を選んだとしても異論はないだろう。

 宣託に立ち会った神父からも、ここまではっきりした宣託は珍しいと言われていたのもある。

 とはいえクラリスから自らの考えを聞かされた四人は、皆が複雑そうな顔をする。

 なにせ鑑定士というのはマイナーの中でもあまり聞かない職業だ。

 

 「クラリス、たとえば鑑定士じゃなくて調査員というのもあるわ。調査員なら貴女の宣託を生かすことも出来るだろうし、すこしは身を護るために必要なスキルも覚える事ができるわよ」

 

 フィーネの言う事も一理ある。

 これから冒険者を目指そうというのに、攻撃系や護身のスキルを一切身につけない鑑定士では、冒険者としてやっていけるのか。

 たしかに優秀な者であれば護衛を付けて遺跡調査やダンジョン調査などが行われることがあるが、それなら調査員や学者といった職業だろう。

 

 「調査員も検討しました。けど、正直いって調査員の覚えるスキルは私には合わないと言いますか……。これでもアルマーク家の者として幼少のころから武術はみっちり鍛えられましたから。そうなるとスキルで戦うよりも、自分の能力をひたすらに特化させていくのが良いのかなと考えました」

 「たしかにドラグニア帝国において、武芸においてアルマーク家を差し置いて右に出る者なんて早々いないわ。けどそれは純粋な力量を比べた時の話。スキルを使える者と使えないものでは、戦場においては絶対的な差が出てくるわ。——その覚悟はできていて?」

 

 念押しの意味を込めて、フィーネが問うてくる。

 もとより覚悟の上だ。

 スキルを持たない者は己の技術のみで戦う事になる。

 戦士が持つような身体強化も出来ないし、槍術士が持つような軽やかな身のこなしスキルもない。

 それでも、この道を選びたいと思ったのには訳がある。

 クラリスはこの一週間、ひたすらにどんな職業が良いか悩み、悩みぬいてあることを思い出した。

 それは聖リーサリティ学園に飾られている数々の武具だ。

 歴代の学長が使用していたものから曰く付きといったものまで、数多くの武具が学園には飾られている。

 クラリスはその武具を見ると何とも言えない圧力に圧倒されたりしていたものだが、教師いわく、あれらの武具には解明されていない特殊な能力が武器そのものに宿っているのだという。

 これまで多くの学者や研究者が調べてきたのだが、まだすべての能力は解明されておらず、そしてどうして特殊な能力が付与されたかもはっきりしていない。

 そんな武具に対して、鑑定士ならそう言ったものが分かるのではないかと、浪漫に後押しされてクラリスは鑑定士を選んだ。

 

 (……そんなことを言ったら怒られるかしら)

 

 職業を憧れで選ぶとその先に待つのは地獄である。

 親からも教師からも口酸っぱく言われ、実際に地獄を見ている人たちを目撃していれば、誰もが無難な職業を選ぶだろう。

 

 「……わかったわ。クラリスが決めたのなら私がいつまでも口を挟むのはお門違いね」

 「心配していただきありがとうございます、フィーネさん」

 「別に心配なんかしていないわ。たった一人で山賊と交渉した気概を持っているんですもの」

 「フィーネがそう言うなら私は何もないかな。あ、でもやっぱり訓練と実践は違うから、冒険者になったらそこんところみっちり鍛えてあげる。スキルもないなら尚更ね」

 「……エル、貴女弓以外はからっきしじゃない」

 「ゆっ、弓を教えてあげるもん!」

 「——Bランクパーティである『緑の刃』のお二人がそういうなら、私たちから言える事はありませんね」

 「そうだねマーレ姉。まぁ冒険者ってのは生き方みたいなものだから、気楽にやったらいいと思うよ。大きな町に行けば冒険者は半分便利屋みたいなものだから、町の中だけでも仕事があったりするし」

 「そうと決まれば、今日は早めに寝ましょうか。明日は教会に行ってクラリスの職業選択をして、ギルドに行って冒険者登録。その足で、まずは簡単な依頼を受けてみましょう」


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