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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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ライダル国を一言で表せば、森の国である

 ライダル国を一言で表せば、森の国である。北にニア国、西にラス連邦が接し、国土には多くの森が広がっている。

 東には拒絶山脈ほどではないにしろ険しい山々が聳え立ち、山頂には竜が住まうという話だ。

 ライダル国は大昔ドラゴニア帝国の迫害から逃れた竜人と、彼らを支援した人族で構成された国家であり、特色はなんといってもドラゴンを使役する軍事力だ。

 さらにはリュクロスの森に来たような野良のドラゴンが多く住み着いており、その希少な素材はライダル国の貴重な交易品にもなっている。

 宿の一室、入手した簡素な地図を見ながらコレットは素朴な疑問をぶつける。

 

 「不思議ですね。竜人が人と手を組んでドラゴンを退治しているわけですよね?それって同族殺しじゃないのでしょうか」

 「それについてはかつてライダル国王と山に住まう竜が話し合い、竜はライダル国の野に降った者については同族扱いしないという契約をしたそうよ。その代わり、険しい山々に立ち入る人は何人たりとも殺されても文句なし。つまり明確に人と竜とが住まう場所を分けたのね」

 「それだと竜にとってはかなり不利な条件ではないのでしょうか。山脈とライダル国全土じゃ広さも釣り合いが全く取れないですよね」

 「そこまではわからないけど、でも実際はライダル国の森にいる魔物は強すぎることで有名で、正直ライダル国の騎士でさえも手を焼くほどらしいわ。だからドラゴンにしてみればライダル国の森は誰にも襲われない楽園、ってところじゃないかしら」

 

 そう、ライダル国は森の国といったが、その多くの森は非常に強力な魔物が住み着いていることでも有名だ。

 特に国土の東南に位置する森はどれくらい広いのかなどの調査も碌に行えない程で、聖リーサリティ学園にいたライダル国出身の者たちは自分こそが森を踏破するのだと、常に武力を磨いていたのを思い出す。

 彼らの多くがライダル国の主だった町の出身者で、王都ドリシャからもちろんのこと、ラス連邦とニア国どちらにもいける貿易都市トーマ、かつての対戦時に前線を支えた防衛都市ダンスリン、そして未踏破の森にほど近い冒険者の町ドゥなどから多くの子息が学園に来ていた。

 つい秘密を共有できるコレットができたことで、懐かしそうに話してしまう。

 

 「お嬢様には目的の町がありますか?」

 「そうねぇ……正直ライダル国の人はドラゴニア帝国の人々をあまりよく思っていないわ。まぁ建国神話にすらドラゴニア帝国から迫害された竜人がこの地に住まう人族によって助けられ、作り上げたと書かれるほどですもの。だから——」

 

 指差す先、国境の町からそれほど離れていない町。

 

 「貿易都市トーマ。ここはさまざまな人種が入り混じる場所。ここならドラゴニア帝国人だとバレてもそこまで嫌われることもないと思うの」

 「見つかるリスクもそこそこに高そうですね」

 「それでもドラゴニア帝国の騎士が堂々とするにはだいぶ窮屈な国よ。それに情報がたくさん入ってくる場所でもあるわ」

 

 今はただ追われる立場だが、情報も何もなければ手の打ちようもない。対抗するためにはやはり情報が必要だ。

 

 「トーマへの馬車ならそこそこ出ていると思うから、明日はそれを探しましょ」

 「今の馬はどうするんです?」

 「馬車で一緒に連れて行ってもらえるか聞いて、ダメなら私が後ろから追いかけるわ。もしくはどこかの商団に入れてもらおうかしら」

 「それなら商団のほうが良さそうですね。父様もよく商団を利用したと言っていました。馬車は足がつくけど、商団は乗せた人の秘密を守ると」

 「——経験者は違うわねぇ」

 

 * * *

 

 コレットを寝かしつけた夜、蝋燭の明かりを頼りに私は荷物から色々な物を出していく。

 簡易鑑定を毎日欠かさず使い続けたおかげで、最近では一日に三○回ほどまで使えるようになったが、まだまだ無詠唱で発動できるまでには至らない。

 コレットはまだウルフに襲われた時の恐怖が拭えないのか、暗くなると手が震え出すので一緒に旅を始めた時から夜はなるべく近くにいるようにしている。そのため心置きなく鑑定スキルを使うのはコレットが寝静まったあとの日課になりつつあった。

 

 「簡易鑑定」

 

 『鑑定結果

 種別:ナイフ

 状態:中古

 どこにでもある普通のナイフ。これを使って薬草を採ると、薬草の鮮度が通常よりも一日長持ちする』

 

 『鑑定結果

 種別:長剣

 状態:中古

 クラス:伝説級レジェンダリー

 どこにでもある普通の長剣だったが、オレンジスライムの中で錬成されたことにより進化した状態。持っていると幸運が訪れる』

 

 『鑑定結果

  品名:薬草

  品質:低 (乾燥)

  ユビク大陸全土に分布。低級回復ポーションの作成に使用される。乾燥している』

 

 『鑑定結果

  品名:魔法職のローブ

  品質:低

  一般的なローブ。わずかに魔法に対して耐性がある』

 

 『鑑定結果

  品名:魔法職の帽子

  品質:低

  一般的な帽子。わずかに攻撃魔法を強化する効果がある』

 

 どれもいつもと同じだ。

 けれど使えば使うほどスキルは成長すると信じ(実際に使える回数は増えている)、鑑定を繰り返していく。

 

 「簡易かんて——」

 

 何回目だろうか。とりあえず使えなくなるまで鑑定を繰り返していた時だ。

 淡く全身が光るのを見た。

 同時に不思議な、けれど懐かしい声が響いてくる。

 

 『——に新たなる能力ちからを』

 

 全身を駆け巡る何か。それが新たなスキルを覚えたのだと分かるまでに時間は掛からなかった。

 怖いほどに、何故か頭の中に新しいスキルが浮かんでくるのだ。

 女神リーサから新たなスキルを授かるというのはこんな感じなのか、と心が震える。

 まるで新しいおもちゃを目の前にした幼児のように、ワクワクとドキドキが止まらないのだ。

 しかも、私の頭に浮かぶスキルは二つある。

 一つは活用鑑定。

 その物体がどのように使われるのか、またどのような効能を引き出すことができるかを調べることができる鑑定だ。

 しかも活用方法は多種にわたり、鑑定する物毎に変わる。つまり、用途別に詳細に鑑定ができるようになったのだ。

 二つ目は再鑑定。

 鑑定によって得られた能力を変更するスキル。

 三日に一度しか使えないという制約はあるが、これを習得したということからわかることがある。

 私が持っている薬草採取のナイフや、伝説級レジェンダリーとなった長剣はやはり後天的に能力が付与されたということだ。つまり、その能力を書き換えることができる。

 

 (……もしかして、なんの能力もない物も書き換えられるのかしら)

 

 もしそうだとしたら臨む能力を得られるまで再鑑定を繰り返していけば、どんなものが出来上がるのか。

 はやる気持ちを抑え、まずは活用鑑定から使おう。

 しかし何を鑑定すればいいのか。薬草採取用のナイフ?活用の仕方がわかったところでどうするのだ。ならば——

 

 「活用鑑定、使用方法」

 

 『鑑定結果

  品名:薬草

  活用方法:使用法

  揉み込んで裂傷や打撲の患部に当てると鎮痛、殺菌、治癒増進の効果がある。乾燥させ煎じて飲めば滋養強壮の効能あり。採取した時の品質を保ったまま一日水につけ、その後煮詰めれば極低級〜低級ポーションとなる。品質がわるい薬草ではポーションとしての効能は発揮できない』

 

 「か、活用鑑定、保存方法」

 

 『鑑定結果

  品名:薬草

  活用方法:保存方法

  採取後すぐに氷水につけることで鮮度を最大二日保つことができる』

 

 (と、とんでもないものを知ってしまいましたわ……!)

 

 ポーションを作れるのは知られている限り調合師や薬剤師、それに練金系の職業についている人が、スキルを使って作れるものだ。

 しかし、もし今見た活用鑑定が正しいのであれば、ポーションは誰にでも作れるということになる。

 いやそんな事はない、というのもわかる。そもそも保存方法にあった「採取後すぐに氷水につける」というのがどれだけ難しいことか。

 しかし一部の魔法職であれば氷を出す魔法もないわけではないはずだ。

 

 (いえ、だとしても労力に見合わないかしら)

 

 一日水につけ、その後煮詰めるという作業。

 これらを勘案すればスキルで簡単に作れる職のほうが遥かに楽だろう。

 しかし低級ポーションすら駆け出し冒険者にとっては多額の出費となり、おいそれと買えないのだ。需要と供給が合っていないのであれば、お金にはなる。

 

 (とにかく検証が必要ね。——ふふっ、フィーネさんがいたら飛び跳ねて「検証よ!」なんて言うのが目に浮かぶわ)

 

 * * *

 

 「くしゅん!」

 「おいおいフィーネ大丈夫か?最近変な病が流行っているらしいから気をつけろよ」

 「別にそんなんじゃないわ」

 

 なんで断言できるんだとバルが首を捻る。

 

 「だって風の精霊が喜んでいるんですもの。きっとクラリスが私の噂話でもしたのよ」

 

 * * *

 

 「再鑑定」

 

 『鑑定結果

  品名:魔法職のローブ

  品質:中

  一般的なローブ。すこし魔法に対して耐性があるが、火属性の魔法には弱い』

 

 (変わったわ……!)

 

 再鑑定前から「低」が「中」に、そして鑑定した文言も変わった。

 魔法への耐性は若干上がったようだが、その代わりに火属性の魔法には弱いと出ている。

 

 (総合的にみれば能力が上がったのかどうかわからないわね)

 

 しかしわかったこともある。ローブはそれなりに魔法耐性がある状態で作られていたと判断できるが、鑑定によってその能力が固定したこと。そして再鑑定ではその能力の付け替えが行われること。

 そして検証しなければいけないのは、防具の場合は身につける者が私以外でも効果を発揮するのかどうか。薬草採取のナイフは私以外だと効果を発揮しなかったし、神杖ミディオライは鑑定文に「何人なんぴとであろうとも奇跡を使えるだろう」との文言があった。

 

 (結局ミディオライを使ったのも私だったけど、昔は誰もが奇跡を成せる杖だったことを考えれば、「誰でも使える」という文言がなければ使えなさそうね)

 

 そのほうが安心はできる。なんでもバターのように切れる長剣をもし奪われたりしたら、バターのように切られるのは私だからだ。

 そろそろこの辺りをしっかり検証する必要がある。

 けれどもライダル国に入ったとは言えいつまでも国境の町にいるのもリスキーだ。

 

 「コレットには悪いけど、馬車も商団もやめて馬での移動にしようかしら」

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