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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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部屋に戻されたクラリスは、しばらくして外の異変に気付いた

 部屋に戻されたクラリスは、しばらくして外の異変に気付いた。

 髪をバッサリと切られ、変わり果てた姿にメイドたちは驚愕したが、クラリスもあくまで髪を切られただけで襲われていない事と、売られるまで大人しくしていれば襲われない事に安堵した。

 そして山賊のお頭の話をメイドたちにしたところ、正直敵対する商家が多すぎてどこか分からないというのが答えだった。

 首謀者が分かれば手の打ちようがあるかもしれないと考えていたのだが、どうやらそれは無理そうだ。

 数人のメイドが手持ちの櫛と化粧はさみでクラリスの酷く乱れた髪を整えようとしてくれたのだが、こんな状況下でそんなことをさせのはと断ったところ、「たった数日過ごした私たちの為に、大切な御髪を犠牲にさせてしまったのだから、どうかこれだけでも」と押し切られてしまう。

 メイドという仕事柄、世話焼きになってしまうのかと苦笑してしまった。そんなことをしていたらいつの間にか部屋に蔓延っていた絶望は失せ、ほんの少しだが明るい雰囲気となった。

 その時だ。クラリスが異変に気付いたのは。

 

 「みんな静かに。——ねぇ、さっきまでのバカ騒ぎが消えていると思わないかしら」

 

 確かに、と顔を見合わせるメイドたち。

 つい先ほどまで、この部屋にまで聞こえていた山賊たちのバカ騒ぎが、まったく聞こえなくなっていた。

 まさか全員寝たということもないだろうし、それともみんなしてどこかに行ったのだろうか。

 直後、ガチャリと鉄扉の鍵が開いた。

 思わず近くにいたメイドが後ずさり、誰もが鉄扉に視線を寄せる。

 まさか襲わないと言って安心させておいて、実はそれすらも彼らの策略の一つなのではないか。

 クラリスの思考が高速で駆け巡り、どうすればいいと答えを探して求めていく。

 しかし扉はそんな猶予を与えてくれなかった。

 錆びた音を立て、ゆっくりと鉄扉が開いていく。

 ひっ、と悲鳴をあげてメイドが後ずさり、一人の男が入ってきた。

 

 「——あれ、もしかして君達、人質?」

 

 軽い声で入ってきたのは山賊とはかなり雰囲気の違う青年。しかし手に持つ長剣からはポタポタと鮮血が滴っており、、返り血が鈍色に輝くプレートにこびりついている。

 

 「ちょっとバル何やって……って、あら?」

 

 続いて入ってきたのはエルフの女性だった。

 弓を背負い、短刀を逆手にもつ彼女はクラリスたちを見回す。

 

 「——これは聞いてないわよ、バル」

 「僕だって知らないよエル。けどここに放置も出来ないよ」

 「はぁ……わかったわ。残党はフィーネに任せて、私たちは彼女たちを町に連れていきましょう」

 「そうだね。皆さん、まずはここから逃げましょう!」

 

 想定外の闖入者ちんにゅうしゃに皆が呆然とする中、クラリスはいち早く立ち直った。

 

 「状況が理解出来ていないのですが、貴方たちは冒険者の方でしょうか」

 「君がまとめ役かい?僕たちはBクラスパーティ『風の刃』。今回は山賊討伐の依頼を受けて来たんだけど」

 「……っバル!話している暇はなさそうよ!」

 

 部屋の外、エルと呼ばれた女性が即座に弓を構え、矢を射る。

 カエルの鳴き声のような悲鳴が響く。

 

 「皆さん、あまり時間がありません。まずはここを出て近くの町まで避難しましょう」

 「わかりましたわ」

 

 エルが次々に矢を番え、暗闇に向って放つ中、クラリスはメイド達一人一人を起こしては部屋の外へと誘導する。

 

 「部屋を出たら右へ。真っすぐ行くと突き当りがあります。そうしたら左へいきますよ」

 

 足元も覚束ない洞窟の中をバルを先頭に十名が続く。クラリスが最後尾で、エルはまだ部屋の前で暗闇に矢を放っている。

 

 「彼女はいいのですか!」

 「大丈夫。エルは強いから。それよりもまずは逃げる事を優先してください」

 

 ある程度部屋から離れたところでチラリと振り返ると、エルが新たに矢を放つところだった。

 

 「フレイムアロー!」

 

 放たれた瞬間、矢に炎が宿り暗い洞窟内を照らし焼き尽くしながら飛んでいく。

 幾重にも悲鳴が木霊し、思わず耳を塞いでしまうほどだ。

 あれが山賊たちの断末魔なのだろうか。

 先ほどまで言葉を交わしていた彼らが、彼らの命が消えていく。

 あまりの呆気なさになんとも言えぬ感情を抱きながら、それでも自分が生きのこる為に、クラリスはバルの背を追いかけるのであった。


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