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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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ジュリアによれば街道沿いに五日程いき

 ジュリアによれば街道沿いに五日程いき、そこから少し西へと進むとミーワ村があるという。

 とはいえ副団長のジュリアがいつまでもクラリスと行動を共にすることも出来ず、ジュリアとは途中の村までの案内という事になっている。

 

 「急ぐ旅でもあるまいクラリス。ちょっと休憩していかないか?」

 

 どこまでも続くのどかな草原。

 街道を少し外れ、木々に馬をつなげて二人は腰を下ろす。

 リュクロスを出て既に二日。今日の夕方には街道沿いの村に着く予定だ。

 

 「あ、薬草ですわ」

 

 クラリスはつい癖となっている薬草採取を始めてしまう。

 そんな様子に苦笑しつつ、ジュリアもつい手伝ってしまう。

 両手いっぱいに集めたら馬に乗せている荷に括り付けて乾燥させる。効能は落ちるが乾燥させれば長旅には心強い薬となる。

 

 「そういえば、どうしてクラリスはライダル国へ?冒険者ならどちらかというと、ダンジョンがあるラス連邦を目指してもおかしくないんだけど」

 

 どこから話したものか。

 クラリスはジュリアの隣りに腰を下ろす。

 風が草原を抜け、草が波のようになびく。

 丘を越え、そのずっと向こうはもうライダル国だ。国境と言ってもラス連邦とライダル国との間には何もない。

 ただ国境を越えた手続きをしない者はどちらの国に行ったとしても密入国者として扱われる。そのためクラリスは国境の町を目指しているのだ。

 

 「実は私、貴族ですの」

 「……ああ、うん。見れば分かる」

 「驚きませんの?」

 

 驚くもなにも、とジュリアは笑う。

 

 「普通の冒険者はお父様——領主に会ったからってカーテシーなんてしないさ。そんな礼儀を弁えているのは貴族か貴族付きの従者しかいないさ。というか言った通り、見れば分かる。君の所作からは貴族の何たるかがにじみ出ているし。——それにその太刀筋を見れば君がドラゴニア帝国から来たのも分かる」

 「そこまで分かっているのであれば、聞きたい事なんてそんなにありませんのでは?」

 「いやいやそんなことは無いよ。どうして貴族であることを隠して行動しているのかとか、貴族でしかも女性である君がどうしてそんなに強いのかとか」

 「……難しい問いですわね」

 

 ジュリアにどこまでを話していいものか。

 身の上話などお涙頂戴の同情でも引くか、政治の駆け引きに使われるだけであるというのは良く知っている。

 そして情報は時に価値を生む。

 けれどここまでジュリアにバレているのであれば、遠くないうちにクラリスがアルマーク家の者であると判明するだろう。

 

 「——別に大した話じゃありませんわ。聖リーサリティ学園で失態を犯し、お父様に勘当されて、政治の道具になるところで逃げて来ただけですの」

 「アルマーク家は情に篤いと聞くけど?」

 

 そこまで分かっているのか、と苦笑する。

 

 「それは力が全てのドラゴニア帝国において、アルマーク家が絶対の武力を保持しているからですわ。だからこそ些事は水に流し、ただひたすらに国力を高めていく。言い換えれば国力を高めるためならなんだってする、それがアルマーク家です」

 「けれどそれなら別にラス連邦でもいいんじゃないか?どうしてライダル国に?」

 「そうですね……きっと私は怖いのです。追手に捕まり、再びお父様の駒として使われるのが。……いいえ、その前に役目を放り投げてきたんですもの、その報復すら怖いのです」

 

 実際は死んだことになっているクラリス。それでも妹が差し向けた執事が中継都市アーロイに来るほどだ。アルマーク家としても本当にクラリスが死んだかどうかを怪しんでいる節もある。

 それにラス連邦は冒険者の出入りが激しい。

 クラリスの情報が誰から漏れるか、いやそれよりも冒険者と偽ってアルマーク家の者が近付いて来ることだってあり得る。

 

 「今回の事でお父様の耳にも私が生きている事が伝わるでしょう」

 「……まぁあれは仕方ないよ」

 

 なんせ新杖ミディオライによる奇跡の技と言われる魔法を使ったのだ。各国の耳に入らない方がおかしい。

 

 「——長話してしまいましたね。そろそろ行きましょうか」

 

 

 * * *

 

 

 村に着いた翌日。

 遠ざかっていくジュリアを見送るクラリス。

 ここからは一人旅。

 いつかは一人で旅をすることもあるとは思っていたけれど、考えていたよりも早くそれは訪れた。

 

 「ブルルルッ」

 「——ふふ、そうね。貴女がいるわね」

 

 すっかり懐いた馬をクラリスは優しく撫でる。

 まずは買い出しだ。

 消費した保存食を買い込み、ミーワ村までの道を尋ねる。

 途中には綺麗な沢があるとのことで水には困らなさそうだ。

 

 「お嬢ちゃん冒険者かい?だったらウルフには気を付けな。最近になってよく見かけるんだ。特に馬を連れているなら夜は絶対に火を絶やしちゃいかんよ」

 

 人当たり良さそうな猫族のおじさんが教えてくれた。

 なんでも数か月前からこの辺りでは見かけなかったウルフが出るらしい。これもリュクロスの森にドラゴンが来た影響だろうか。

 この辺りには背丈の高い草はないので、昼間なら近付いてきてもすぐわかるというが夜だと気づくのが遅れるという。

 手持ちの薪も少なく、草原が続くので少し買い足しておく。

 フィーネから教えてもらった魔よけの香も購入し、準備を整えていく。

 魔よけの香を多めに買うと手持ちが心もとなくなってくるが、国境の町まで行ければギルドに預けているお金を引き出せるので、買い渋ることはない。なにせリュクロスを救ったという名目で金貨百枚を報償としてもらっている。

 安全に旅をすることがまずは最優先だ。

 宿のおばちゃんからお昼を受け取ったら出発だ。

 一人旅なので急げば一日半も走ればミーワ村へ着くが、荷物も増えたので無理はせず、早歩き程度で馬を進めていく。

 

 「長閑ね……」

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