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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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別れというのはいつでも寂しいものだ

 別れというのはいつでも寂しいものだ。学園と実家からは半ば無理やり追い出されてその感情をどこにぶつければいいのか彷徨っていたが、今回は違う。

 私が私として前に進むために、別れるのだ。

 国境についた私たちはまずは国境を越えた。すんなりと越えられた。

 国境は町となっており様々な人が行き来するが、明らかに偏った者達がいる。冒険者だ。

 ドラゴニア連邦側の町は冒険者が多く、反対にラス連邦側にはあまりいない。

 国境を超える時はすでに冒険者に現在のラス連邦の状況が説明されており、皆頷いて国境を越えてくる。

 

 「じゃあまずはラス連邦の冒険者ギルドに行こうか。国境を越えたらなるべく早く、ギルドに顔を出した方がいい」

 「私もですか?これからラス連邦を素通りしてライダル国へいきますけど」

 「それでも、だ。ギルドにいけば国内の情報は得られるし、盗賊や山賊なんかの情報も手に入る。それに冒険者の移動というのはトラブルが付き物でね。変に疑われないためにも、まずは冒険者ギルドで移動の挨拶をするのがいいのさ」

 

 そうしてラス連邦側の町にある冒険者ギルドで通過の報告と国内の情勢を聞いた後。

 別れは案外早くやってきた。

 ラス連邦からライダル国へ出る馬車があと一時間後には出るというのだ。これを逃すとこの国境から出る馬車は三週間後。

 もしくは別の町に行ってから乗り継ぎで行くことになる。

 

 「——うぅ……クラリスちゃんとこんなすぐ分かれることになるなんて」

 「おいエル。お前が寂しがってどうするんだ。クラリス君が困るだろう」

 「でもぉ!」

 「みっともないわよエル。仲間なら笑顔で見送ってあげないさい」

 「仲間、ですか?」

 

 フィーネからそんな言葉が出るのは意外だった。てっきり私は弟子とかそういうものかと思っていたのだが。

 

 「心外ね。弟子だったら連れて行くわ。他人だったらここまで面倒を見ないわ。なら、仲間しかないじゃない」

 「——そうだな。僕たちは仲間だ。だからまた会おう、クラリス君」

 「うわーん!絶対会いに来てねー!十年経っても来なかったら私からいくからねー!」

 「は、ははっ……。だそうですので、十年以内には会いに行きます」

 

 冒険者に「次は」という言葉は禁句だと聞いた。

 冒険者は常に魔物と戦う危険な仕事。今日が今生の別れかもしれないのだ。

 それでも私は『緑の刃』の皆と言葉を交わす。

 

 「また次会うときは、もっともっと立派な冒険者になっておきます」

 「ええ、期待して待っているわ」

 「ああ、クラリス君の腕前ならすぐに強くなる。がんばれ」

 「エルちゃん、次はクラリスちゃんについていくね!」

 

 それはそれで会いにけなくなってしまうのだけれどと苦笑しつつ、私はライダル国行への馬車に乗り込んだ。


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