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追放された令嬢は鑑定士となる  作者: えだまめのさや
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中継都市アーライの南は、なだらかな丘陵が続き

 中継都市アーライの南は、なだらかな丘陵きゅうりょうが続き、遥か先まで景色が一望できる。

 このまま南に下っていくと獣人が多いラス連邦へと繋がるが、内戦が絶えないラス連邦へ行く人は冒険者と商人を除いてあまりいない。

 なぜ冒険者はラス連邦に行くのかと言えば、ダンジョンと呼ばれる摩訶不思議な迷宮を求め、一獲千金を夢見て行くのだ。

 ダンジョンは聖リーサリティ学園があるニア国にも一つあるのだが、そこは国の管理下に置かれて誰もが入れるものではない。

 しかしラス連邦にある三つのダンジョンはすべてが解放され、故に冒険者がこぞって集まる理由になっている。

 

 「まずは薬草採取ね。薬草の特性はしっているかしら」

 「はい。そのあたりは学園で習いました。程よく日向と日陰になる場所に多く生えていると。例えば丘陵の北側だったり、森と草原の境目だったり」

 「ならクラリス、まずは一人で探してみましょうか」

 

 Bランクパーティの二人が付き添ってくれているということで非常に心強い。

 パーティとしての活動はバルの怪我が治らないと活動しにくく、またお金に困っているわけではないので、こうしてクラリスの護衛を引き受けてくれている。

 クラリスは周囲を見回し、まずは小高い丘の上を目指していく。

 丘の上には大きな一本の木がそびえ、良く目立つ。

 目印になっているのか、大木まで続く踏み固められた道があり、クラリスも辿るように進んでいく。

 

 「——あ、ありましたね」

 

 道端、種が飛んできたのか薬草が数本生えている。

 大きさとしては小さい。

 数と大きさを考えても、あまり採取には向かないと考えてクラリスは引き続き大木を目指す。

 到着。

 街中とは違い、丘の上は澄んだが風が抜けて汗ばんだ体に心地良い。

 

 「さて、と」

 

 あたりを見回してみたら、あるわあるわ。

 大木の北、日蔭になるようなところに薬草が群生している。

 カバン一杯に詰め込んだとしてもその何十倍はあるだろう。

 依頼されている量は多くはないので、是非とも良い物を取っていきたくなるというものだ。

 クラリスはまず近くに生えている薬草のもとへしゃがみ込み、手に取る。

 

 「——簡易鑑定」

 

 教会で職業を鑑定士と宣言してから半日。初めてスキルを使う。

 今までどうやったらスキルが使えるようになるのか不思議だったが、鑑定士という言葉を意識すると自然とスキル名が頭に浮かんでくるのだ。

 

 『鑑定結果

  品名:薬草

  品質:中

  ユビク大陸全土に分布。低級回復ポーションの作成に使用される』 

 ちなみにスキルには言葉に出して使うアクティブスキルと、常日頃効力を発揮するパッシブスキルとで大別される。

 

 「どう?クラリスちゃん。人生初のスキルは」

 「思っていたより——」

 「思っていたより?」

 

 立ち上がり、エルに向き直る。

 

 「——思っていたより、地味ですねこれ」

 

 そう、地味なのだ。

 物が鑑定できる。それも今薬草に使ってみて分かったことは、正直これの程度の事なら誰でも知っているし、別に知らなくても「あ、ふーん……で?」で終わるレベル。 

 

 (——ま、まぁ簡易鑑定ですし。きっと本来の鑑定スキルが使えるようになれば別の事が分かるかもしれませんから……)

 

 本来の鑑定スキルはまだ使えない。

 スキルが頭に浮かんでこず、「鑑定」と呟いても何も起きないのだ。

 

 「スキルって、どうやったら成長するんでしょうか」

 「そりゃあたくさん使うしかないかなぁ。私のファイアーアローだって今じゃ燃え盛る鳥の様なスキルだけど、最初はただの燃える矢だったんだから」

 「そういうものですか」

 

 そういうものよ、とエルが首を振る。

 考えてみれば十七歳になっただけの子供がいきなり強力なスキルを扱えたら、それはそれで問題しか起きないだろう。

 ちょっとずつ訓練していくしかない、とクラリスは諦めて普通に薬草を採取し始めた。


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