第二十三話 私の名前は
今回初投稿です!
楽しんでいただけると幸いです。
私は船尾の隅に座っていた。夕日も落ちて目の前には暗い大海原が広がっている。
この船はコルベット艦という種類で、ほかの艦より小さく、遠洋航行には適していないらしい。
そんなこの船であっても、乗り込んだ避難民は決して少なくない。が、私の周りにはぽっかりと誰もいない空間ができていた。
「まぁ、顔は血だらけ、片腕は無い、いろんなところが包帯でぐるぐる巻き。そんな人に近づきたくないよね」
私はそう呟きながら、まだジンジンと痛む左腕の付け根を見る。
そこには止血用の硬化ジェルが塗られているが、それでも血が染み出してきて包帯を赤く染めていた。
はぁ、とため息をつき、静かに空を見上げた。満点の星空。その光景は私の気を紛らわせてくれるだろうか。
明音が死んだ。その事実をこれ以上考えたくない。あの光景を思い出したくない。思い出すと泣いてしまいそうだから。
「明音とはずっと一緒だったなぁ。いつから一緒だったっけ……思い出せないなぁ」
そう声に出して、すぐにハッとしたように頭をブンブンと振る。考えちゃダメだと分かっているのに、考えてしまう。
そうやって頭を振ったりほっぺたをつねったりしていると、私を呼ぶ声がした。
「おーい。君!」
私が振り向くと、2度も私たちを助けた男、国井が何かを持ってこちらに小走りで向かってきていた。
「はいこれ、少しぬるくなったスープ」
そう言って私の横にスープの入った容器を置く。
「ありがとうございます。ぬるいんですか?」
私は国井の方を向いて言った。
「そうだよ。片手だし、内臓も弱ってるしね」
国井は私の横に"よっこいせ"と座りながら言った。
私は国井に感謝の言葉を伝えてゆっくりとスープを飲んだ。ぬるいとは言っても、私には十分温かかった。
「そういえば、国井さんのスープはないんですか?」
私は横に座っている国井に問う。
「この船に積める食料にも限界があるからね。それに、艦隊指揮官様にも頭を下げられちゃったしねぇ」
国井は笑って言った。
「そんな…国井さんたちも頑張ったじゃないですか。少しぐらい…」
私がいい終わる前に国井が私の言葉を遮る。
「まぁまぁ、子供が気にすることじゃないよ。それに俺たちは訓練してるからね。さぁ、飲んだ飲んだ」
そう言って国井は手をクイッと動かし、何かを飲むジェスチャーをする。
私は不満を顔に表しつつも残りのスープを一気に飲み干した。そしてすぐに国井に聞いた。
「千は無事ですか?」
その言葉を聞き、一瞬頭にハテナが浮かんだ国井だったが、すぐに理解する。
「うん?あぁ、君と一緒にいた子かい?」
「はい」
「あの子には今は眠ってもらってるよ。内出血が酷くてね。それに、少し暴れたんだ。『妹を返せって』まぁ、命に別状はないよ」
その言葉を聞き、私は安心した。千まで死んだら、私はきっと罪の意識に潰されてしまうだろうから。
「よかったです」
私のその言葉を聞いてすぐ、国井は立ち上がって言った。
「じゃあ、私はこの辺で戻るとするよ。人手が足らないからね」
そう言って国井は立ち去ろうとする。しかしすぐに立ち止まり、振り返る。
「そういえば君の名前は?」
その言葉に答えようと、国井の方を向き名前を言おうとした瞬間、周囲がざわついた。
「なんだあれは……」
「何が起こってんだよ!」
「おかぁさん何あれー?」
私が大海原へと振り返り直すと、空に大きな、大きな赤色の柱が聳え立っていた。
国井は私の方へと戻ってきて、船尾に取り付けられた柵の前へと立った。
その柱が現れて30秒ほどの後、大きな爆発が遠くで起こった。空が赤くなって、まるで太陽がそこにあるかのようだった。
その時、私はまるで衝撃波を感じたかのような感覚に襲われた。だけどそんなわけはない。
だって地平線のはるか彼方の爆発を、リアルタイムで感じることなどできないのだから。
その爆発の後、誰一人喋らない中、その光に向かって私は右手を伸ばしながら言った。
「私は"黒神アイ"(クロガミ アイ)。あなたたちを倒す者よ」
皆さん初めまして、ブルングです。今回で第1章は終了となり、これから第二章に移っていきます。現在第二章を製作中ですので、楽しみに待っていてください。
誤字脱字等ありましたら、コメントで指摘していただくと嬉しいです。(他にも、ここが読みにくい などのコメントもお待ちしています)
読んでくれてありがとう!!!




