第十八話 ステルスミッション
今回初投稿です!
楽しんでいただけると幸いです。
轟音が響いた。奴が私たちを探す音だ。奴は賢く、私たちがまだ近くにいることが分かっているようだった。片っ端から瓦礫を蹴り飛ばし、私たちが隠れられる場所を一つ、また一つと潰していく。
私たち三人は瓦礫の影に隠れて奴の動きを伺っていた。奴との距離は約300メートル。空母に向かうには奴を迂回するか、なんとか奴をやり過ごして進むしか無い。
まぁ、迂回をするにしても瓦礫で脇道は塞がっているし、片側には大海原が広がっている。つまりこの幅広い道に散乱している瓦礫を駆使し、奴から隠れて進んでいくしか無い。
「早く進まないと…隠れるものが無くなっちゃうよ…」
明音が私に耳打ちしてくる。声は最小限に、動きも最小限に。
「左の瓦礫に移ってコンビニに入ろう。ほら、あそこのホームマート」
私はホームマートと書かれているコンビニエンスストアを指差し言った。
「そういえば今日ご飯食べてないなぁ…ホームマートの "夏のおにぎり!チョコバナナ風味" 食べたかったなぁ……しくしく」
明音は手で泣く仕草をしながら言った。
なんだそのクソ不味そうなおにぎりは。そんなもの誰が買うのか。しかしホームマートをよく見てみると、チョコレートのかかった、黄色のおにぎりの絵が載ったのぼり旗が立てられている。どうやら私は最近の流行についていけていないらしい。
「ご飯と命どっちが大事?私が先に行くから、3秒後に千とあんたはついてきて」
明音は泣く仕草をしながら頷く。そして千も明音の後ろから顔を覗かせ頷いた。
少しの静寂の後、奴が瓦礫を壊すために機体を横に向けた瞬間、私は走り出した。なるべく体を屈め、足音を極力抑えながら。
しかし奴は私が渡り終えた瞬間にこちらを向いた。まずい。バレてしまったのか?私の頭の中は真っ白になった。やってしまった!いや、それよりも明音と千が今走り出せば確実にバレる。二人を止めなければ。
私は咄嗟に手鏡を取り出し、光を反射させる。反射した光は護岸に当たる。明音が見てくれればきっと気づいてくれるはずだ。
3秒後、明音と千は姿を見せなかった。良かった。伝わった。私は一人で瓦礫に寄りかかりながら静かにため息をついた。しかし何も状況は変えられていない。
奴が近づいてくる音がする。しかし走ってこないあたり確信はないのだろう。私は右手にフッ化水素の容器を握る。
"もし見つかったらこれで……差し違えるっっ!"
私はその覚悟を目に宿し、体を硬直させる。嫌な汗が出る。
静かな世界に音が響いた。
鳩が大量に飛び立っていった。人のいない静かな都市にとっては、羽ばたきの音でさえ大きく聞こえる。いろいろなところで起きている戦闘の音よりも、大きく、力強く。
奴は鳩が飛び立ってゆくのを不気味な機械音を鳴らしながら見守っていた。やがて鳩達の羽ばたきの音がなくなり、遠い戦いの音だけになると、奴は元の場所へと戻っていった。
それを見て明音と千がこちらに走ってくる。
「大丈夫でしたか?」
千が私に問いかける。それに私は汗を拭って頷く。
「それにしてもよく気づいたね、正直言ってもう終わったと思った」
私は明音と千に言う。私の言葉通り、正直に言ってもう終わったと思った。光の反射なんて普通は気にしないはずだ。まさに奇跡に思えた。
「えっへん!私のおかげだねッ」
明音が誇らしげに鼻を擦り、イタズラに笑う。
「光を見つけたのは僕だよっ!意味までは分からなかったけど…」
千が明音に向かって反論した。やっぱり明音には光は見つけられなかったらしい、意味は通じたようだが…。
「ありがとう。千。君のおかげだね」
私は千に笑って言った。その様子を見て明音は頬を膨らませ、抗議の目線を送っている。"私も頑張ったんですけど"と言いたそうな顔を見て、私は言った。
「ホームマートで何か買ってあげるから機嫌なおして」
私のその言葉を聞くと、くるっと明音はホームマートの方に進みだす。私たちはそれについていく。途中途中にある障害物に身を隠しながら進んでいく。その最中、明音はこちらを振り返って言った。
「残高を確認しておきなさい!たくさん買ってもらうからねっ!」
そう言ってまたくるっと回転して進み出す。ルンルン気分であることが背中から伝わってきた。しかし彼女はまだ知らないのである。
"そもそも決済システムや店内の防犯システムが動いていないのだから、商品は取り放題である"
という事実に。
この事実は私の中に留めておこう。その方が面白そうだ。私は明音が悔しがる姿を想像して、ふふっと静かに笑ったのだった。
私たちは奴に気づかれぬようにゆっくりとホームマート店内に入る。電気が来ていないため自動ドアは勝手には開いてくれなかった。そのため私たちは力づくでこじ開けたのだった。設計者にはもう少し開けやすいように改良して欲しいものだ。
店内は商品棚が並んでおり、外から私たちの姿が見えることはないだろう。私たち三人は物色を始めた。
物色といっても、商品棚に残っている商品は少ない。おそらく買い占められたか、火事場泥棒が全て持っていったのだろう。
私たちは残っているパンや水を集めていく。一通り集めたあと、店の奥に集まって戦利品の確認をする。
「私が見つけられたのはコレだけ」
そう言って私は1缶のコーヒーを床に置く。大きさは手のひらに乗るくらいの小さいやつだ。
「僕はこれを見つけたよ!」
千が勢いよく床に戦利品を出す。1袋のスナック菓子とチューイングガムだった。どちらも不味いと評判のお菓子だった。
「私はねぇ〜...コレだけかなっ」
明音が"ばんっ"と私たちの前に出したのは1冊のグラビア写真集だった。女の私から見てもいろいろとおっきくてセクシーな………いやいや何を考えているんだ私はっ!こんな物役に立つわけないだろう。
「それは要らないから戻してこい」
私は明音そう言いながらチョップをする。
「えーー?でも勿体無いしなぁ。そうだ……千にあげるよ!」
明音がニヤニヤしながら千に手渡す。
「いやっ!ぼ…僕は……えっと………」
千は写真集から目を逸らし、手で遮るようにする。明音はその反応を見てニヤニヤしている。
私はため息をついたあと、すぐに明音から写真集を取り棚に戻した。
「ちぇっ…いいの見つけたのに……」
明音は頬を膨らませこちらを見る。私はそれを慣れた手つきでスルーして言う。
「それにしてもコーヒーとお菓子だけかぁ」
「そうだねぇ」
明音はそう言って、私と共に肩を落とした。もう少し何かあると思っていたのだが、誤算だ。しかし荷物はあまり多くない方がいい。ここは嵩張らなくて済んだと考えるようにしよう。何事もポジティブシンキングが大事だ。
私と明音はついでに荷物整理もすることにした。明音の持っていたバッグに地図と食料を入れ、私のカバンにはタオルや包帯といったものを入れた。千にはこれから使うかも分からないが、お金を預けた。お金と言っても電子通貨を使うためのデバイスだ。もう壊れてしまって使えなくなっているかもしれない。
壊れた電子機器類はその場に捨ててしまった。使えないデジタルより使えるアナログだ。まぁそう考えていても捨てるのにかなりの心理的抵抗があったのだが。
皆さん初めまして、ブルングです。今回初投稿ですので、もしかしたら読みにくかったりするかもしれません。
誤字脱字等ありましたら、コメントで指摘していただくと嬉しいです。(他にも、ここが読みにくい などのコメントもお待ちしています)
読んでくれてありがとう!!!




