第十一話 男の子
今回初投稿です!
楽しんでいただけると幸いです。
目的地まであと15分と言ったとき、少しの騒ぎがあったかと思いきや、一人の男の子が乗り込んできた。10歳ほどに見える。両親の姿は見えない。目には涙が浮かんでいた。
その子は何かを抱き抱えているようだった。男の子はそれをじっと見つめたまま言葉を発さない。よほど大事なものなのだろう。
男の子は私の視線に気づくと、決してとられまいとするように体でそれを隠した。そして私に言う。
「なんですか、あなたも取ろうとするんですか?」
男の子は私を睨みつけてくる。正直に言って私はこういう状況が苦手だ。それは私の身長が175センチもあることに起因している。子どもに会えば、泣かれる。逃げられる。睨まれる。私が何をしたというのだ。
「あ…えっと…取らないから……ね?」
私はなるべく優しく言うように心がけた。しかし逆効果だったようで、男の子はさらに警戒する。
「詐欺師はみんなそう言うんだ!!この悪魔!!!この女装女!!!」
なかなかひどいことを言ってくれる。詐欺師、悪魔とは心外だ。というか女装女ってなんだよ、そんなに男に見えるのか。たしかに誇れるほど大きくはないがちゃんとあるし、自分で言うのもなんだが顔もいい方だ。しかし相手は子ども、ムキになるほどのものでもない。一旦忘れよう。深呼吸だ。
私が返答に困っていると、明音が間に割って入る。
「ごめんね〜。このお姉さんたしかに身長高くて怖いけど、根は優しいから!」
明音はしゃがみ込んで男の子と同じ目線で話す。そういえば明音には8歳の妹がいる。だから子どもの扱いは異常にうまい。
「でも…血だらけだし………」
男の子が私を指差して言う。そういえばそうだった。電車の中で応急処置はしたが、服を取り替えたりはしていなかった。朝真っ白だった私の服は、ところどころ真っ赤に染まっている。だからこの子は私を"悪魔"と称したのだ。
それを聞いて明音が言う。
「それは……あれだよアレ、心優しいけど見た目が恐ろしい哀しき怪物みたいな!!」
こいつは後でしっかり締めておこう。そう思った。
少し話すと明音の明るい性格もあってか、男の子は少し元気になったようだ。しかし笑みは漏れない。笑うかと思うと、すぐに悲しそうな顔を浮かべるだけ。
私はタイミングを見計らって男の子に質問する。
「そういえば、君の名前は?」
男の子は答える。
「宇嗣 千 (ウツク セン)だよ。漢字は宇宙の宇に、嗣ぐの嗣だよ」
「二文字目は難しくてよく分かんないけど」
うつく、かなり珍しい苗字だ。今まで聞いたこともない。
「珍しい苗字だね〜。私は一文字目が分かんないけど」
明音が微笑んで言う。私はそんな彼女を見て驚愕したことは言うまでもない。
「ねぇ、、、漢字、そっちは分かってくれると思ったんだけどな」
千が困った顔をして言う。小学生に心配される高校生とは……心配になってくる。機械に頼るのもほどほどにするべきだと私は思った。
「えっへへへ、いやぁ漢字は苦手でして……」
明音は恥ずかしそうに言った。
「漢字だけじゃなくて勉強全体でしょ?」
「うげっっっ!?」
明音は痛いところをつかれたと言わんばかりに、心臓の位置を両手で押さえる仕草をする。左ではなく右だが。
一通り話をして、千とは仲良くなれた。そして彼のことを知ることもできた。歳は9歳で、明音の妹とほぼ変わらないこと。最近妹が産まれたということ。大事そうに抱えているそれが、その妹であるということ。彼の話し方は、その歳にしてはかなり大人びているように感じた。
「君は………大人びてるね」
私は言う。
「だってお兄ちゃんだもん。それに、お父さんに言われたから。妹のことは頼んだぞって」
そう言って千は妹の方を優しい眼差しで見る。それはまさに兄のそれであった。
ただ一つ、その妹が死んでいることを除いては。
皆さん初めまして、ブルングです。今回初投稿ですので、もしかしたら読みにくかったりするかもしれません。
誤字脱字等ありましたら、コメントで指摘していただくと嬉しいです。(他にも、ここが読みにくい などのコメントもお待ちしています)
読んでくれてありがとう!!!




