第3語り さみしがりやの虫メガネ【虫メガネ】
【ゴム】→【虫メガネ】
ヘイ!
きょうは、虫メガネのおはなしだよっ。
ちっちゃなものを見るときに便利な虫メガネ。
だけど、あいつにもちょっとした悩みがあったんだよね。
ほら見て、ふつうのメガネ。
右と左。
ふたつのレンズが仲良くならんで、いつもいっしょ。
虫メガネはレンズがひとつしかなくて。この虫メガネは、じぶんはいつもひとりぼっちだって、ふつうのメガネがうらやましかったんだ。
そんでもって。
ある日、この虫メガネは、ほかの虫メガネをみつけて。
ぼくたち、ふたりで。
ふつうのメガネみたいにくっついちゃおうって、提案したんだ。
その虫メガネも、おんなじようにさみしがってたみたいで。
ふたつの虫メガネは、くっついて。
右と左。
ふたつのレンズが仲良くならぶ、虫メガネになったの。
やった! これでさみしくないや。
虫メガネたちは、よろこんだみたい。
よかったね。
よかったん……だよね。
あたしには、わからない。
だって、その日から。
くっついた虫メガネは、使ってもらえなくなっちゃったんだもん。
だって、くっついた虫メガネには、レンズがふたつと、もつところもふたつ。
これだと使うのに、両手がふさがっちゃう。
レンズがひとつだけのときは、片手でもてたから。
もう片手で、メモをとったり、見るのが本ならページをめくったり、いろいろできたのに。
両手ふさがっちゃえば、それができなくなる。
ふつうのメガネなら、耳にかけちゃえばいいんだけど、きみたちは、虫メガネだもん。
さみしくなくなったのは、よかったのにね。
虫メガネとしての役目を果たせなくなっちゃって、ほんとによかったのか。
やっぱり、あたしにはわかんないや。
ひとりぼっちな生きかたのほうが、そのひとのやるべきことができることもあるんだよって、そんなおはなし。
あたしは、さみしがりだから、だれかといたいけど。
それで、だめになっちゃうのは、やっぱりやだなぁ。
なんか、せちがらい。
つぎは「ね」!