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テンプレ悪役令嬢に転生した私、前世はなんJ民でした  作者: 鈴木叶緒
悪役令嬢に転生したンゴwww
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「貴様ら、よくも!」


 ひとり取り残されてしまった第二王子。大声で怨嗟を吐く姿は、もはや虚勢を張っているようにしか見えない。


「私の忠実な臣下である彼らだけでなく、ジニーまで捕縛しおって!」


「取り調べのためだ。ジャイネス嬢に関しては現行犯だし、お前も見ていただろう。」


「許さん、許さんぞ! 兄上といえども容赦はせぬ! 忠義に報いてくれた彼らのためにも、私は!」


「お前は普通に謹慎だ、ハンフリー。」


 聞き分けのない弟に疲れてきたのか、王太子はさも面倒だと言わんばかりに告げる。


「お前の起こした醜聞の件で、父上達がお呼びだと言っただろう。父上は、お前とクララ令嬢との婚約を見直すおつもりだった。」


「なん……だと……?」


 第二王子だけでなく、それは当事者であるクララにとっても初耳だった。さもありなん、醜聞について話し合う機会を潰したのは、他でもない第二王子だったからだ。


「王族とはいえ、お前は私よりもいくらか責任は少ない。私の婚姻について他国と進めていた縁談も最近なくなったばかりだし、お前の結婚についてもすぐに事を進める必要はないとな。」


「えぇ……。」


「醜聞も相手の子爵令嬢についても対処のしようはあった。国教会の信徒でそれなりの育ちであれば、我が国は問題視しない。それを勝手に暴走しおって。我々は仕事として不正を調べていたが、お前の友人達はあくまで私的に動いただけだろう。臣下だか悪友だか分からぬが、他人を巻き込むな。」


「ハイ……。」


「だが、調査の詰めが甘かったのが幸いしたな。ジャイネス嬢と親しくしていたから取り調べは受けてもらうが、横領に関与していない限り今回の事で特に何らかの罪に問われる事はないだろう。物的証拠を捏造していなければ虚偽申告での公務執行妨害にも問えぬ。厳重注意と謹慎くらいにはなろうが。」


「本当に……?」


「しかし、クララ令嬢を始めテンス家とこの場に集まった臣下達に多大な迷惑をかけたのは事実だ。王家の失態を晒した事もな。イーグル公爵には後日改めて謝罪に向かえ。お前のしでかした事の責任は自分で取るのだぞ。」


「はい……ごめんなさい……。」


「謝るのは私ではないだろう。」


 幼子を諭すようにひとつひとつ言い聞かせる王太子に、すっかり縮こまって従う第二王子。そもそも仲違いしていた訳でもなく、むしろ幼い頃は傍目から見ても仲の良い兄弟だったなと、ゲームでも掲示板でもない今生の記憶を思い出した。


(だとしてもワイ関係ないやろ!)


 しかしそれ以上第二王子との思い出が出て来ず、場が落ち着いた事でようやく自身の状況を振り返ったクララは再び猛虎弁に戻る。婚約とかはもはやどうでもいいが、怒りには満たないものの彼らによって受けた心労は計り知れない。

 そんな様子を察したのか、それとも反省からかハンフリーがこわごわと近付いてくる。


「その、クララ令嬢。今回は、本当に……申し訳なかった。」


 本来なら王族が軽々しく臣下に頭を下げるべきではないのだが、今日の件では謝罪されて当然だとクララは判断した。


「……謝罪はお受けします。どうぞ、御顔をお上げくださいまし。」


(オッ、意外と普通に喋れるやんけ!)


 貴族子女としての教育は受けているし、当たり前だが声は出るので、猛虎弁が顔を出さないよう気を付けながら話す。


「私からも詫びよう。今日の顛末に関して先ほど公爵に使いは出した。後日改めて正式な謝罪と、今後の話し合いをしたいと思う。」


「もったいないお言葉と、お心遣いに感謝いたひます。」


 噛んだ。猛虎弁に気を取られすぎたせいだ。儀礼的な返事なのは分かりきっているのだろう、特に反応もせず、王太子は群衆に向けて高らかに声を上げた。


「今日この場に集まってくれた諸君らにも、大変な迷惑をかけた。舞踏会(give)(a)開いた(ball)つもりが、すっかり混乱させ(ball up)てしまったようだな。」


 王太子のくだけた駄洒落に、緊張が解けてきたのか群衆も笑い合っている。


「国王夫妻にはすでに話を通してある。入場は少し遅れるゆえ、先に舞踏会を始めよとのお達しだ。皆、大いに(have)(a )しんで(ball)くれたまえ!」


 三段仕込みのジョークを交えた開会宣言に歓声が上がった。それを合図に舞踏曲が流れ始め、示し合わせたかのように人々は距離を取り踊り始める。いま楽しめればそれでいい。貴族達は刹那的な享楽に、今宵も優雅に身を委ねるのだ。

 その途中で第二王子は人知れず広間を抜けていった。拘束されてはいないが、両脇に兵士を連れて。

 この騒ぎに乗じて自分も抜け出そう。どのみちパートナーである第二王子がいなければ特に目的もない。醜聞や噂好きのお喋りな御婦人方に目を付けられる前に、クララはこっそりと歩きだした。


「君はこっちだ。」


 背後から自分の腕を取る人影に気付かずに。


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