表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレ悪役令嬢に転生した私、前世はなんJ民でした  作者: 鈴木叶緒
悪役令嬢に転生したンゴwww
6/16

 ダイの暴言にも近い言葉にショックを受ける面々を無視して、マンリー侯爵が続ける。


「子爵家に関しては横領の疑いもあります。子爵家以外の人間の関与が見受けられるので、目下調査中ですが。」


 貴族子女が領地経営に関わる事がほとんどないとはいえ、この事実はジャイネスにとって寝耳に水だったらしい。


「まだ全員の証言が取れている訳ではありませんが、皆ジャイネス嬢に支援を申し出た者達です。そうではない者もいたとはいえ、領地を食い物にされるとは。ここにいる者も含め、人を見る目はなかったという事ですね。」


「所詮、同じ程度の人間しか集まらんという事だな。他人を騙しておいて自分が騙される可能性を考えていないとは、どこまでおめでたい脳味噌をしているのか。」


 暗に第二王子達を示唆しているのだが、政治家や銀行の関係者がそこまで言っていいのかさすがに心配になる。


「そうそう、もちろんイーグル公爵はこの件に関与していませんよ。テンス家の資産を鑑みれば横領に加担する必要性を全く感じませんし、たかだか子爵子女などに興味も抱かないでしょう。実際、先ほどの招待客名簿にミュリー子爵の名前はありませんでした。」


 当主である親に交流がないのだ、その家の子女を自分が知るはずもない。やはり第二王子の婚約者というだけで目を付けられたのだろうが、当の第二王子の扱いもかなり雑だったり、貴族へ資産家へ手当たり次第に近付いたりと、彼女がいったい何をしたかったのか分からない。


「という事は、子爵領の財政危機に公爵並びにクララ令嬢が関与しているという報告は虚偽の告発に当たるな。」


 先ほど子爵領の税収に言及していたベスター外交官があからさまに目を逸らす。


「虚偽の申告や告発は、それを調査する国や司法の公務を妨害する事と同義だ。しかも報告した先は王族。忠実な臣下と言ったが、やっている事は国家に反する逆賊と変わりないな。」


「そ、そんなつもりはありません! 我々はジャイネス嬢から相談を受け、独自に調査していただけで!」


「中途半端な調査で裏も取らずに見切り発車で報告するからだ、馬鹿共。貴様ら情に訴えれば融資を受けられるとでも思っているクチか? 銀行が国民から預かっているのは資産だけではない、信用も同じだ。困窮している者だけのために、他方の信頼を裏切る訳にはいかんのだ。貴様らはいったい誰の何を信じて行動しているのか、頭を割って中を見てみたいものだな。」


(ヒエ〜ッwww熱い死体蹴りwww)


「いずれにせよ取り調べは行う。同じ轍を踏まないためにもな。連れて行け。」


 第二王子が命じてクララを取り押さえようとした者達とは違う、これまた屈強な兵士達が次々と取り巻き達を連行する。絶望した表情、すっかり意気消沈した者、抗う素振りを見せる者もいたが、次第に大人しく歩き出す。


「待ってください!」


 兵士の手が及んだ時、にわかにジャイネスが叫んだ。会場の視線は一気に彼女へと向く。


「発言を許した覚えはないが。」


「ど、どうか聞いてください! 私、私は……。」


 冷たく言い放つ王太子を物ともせず、もしくは話を聞いていない可能性もあるが、彼女は話し続けた。その瞳からまた涙が溢れてくる。


「この私こそ、ハンフリー様達に騙されていたんです!」


(な、なんだってー!!)


 突然の告白に、その場にいる全員が驚きを隠せない。


「確かにハンフリー様は、我が家の苦境を話したら最初は相談に乗ってくれました。でも調査とか、周りの人達に命令するばかりで、皆様も、この有様で……。」


(言い方よ。)


 ところどころ本音が漏れ出ている気もするが、自分の弁護に必死な様子の彼女は気付いていないようだ。


「だから私、他の貴族や資産家の皆様にお願いするしかなかったんです! 我が家を助けるには、少しでも多くの方の協力が必要だったんです!」


「あなたは徹頭徹尾、他力本願ですね。」


「わ、私の力だけではどうしようもなかったんです!」


 ジャイネスの気迫にたじろいだのか、周りを囲む兵士の体が少しだけ引く。彼女はその一瞬を見逃さなかった。


「王太子様! どうかお願いです!」


 そう言うや否や、ジャイネスが王太子に向かってきた。伸びる兵士の腕を振り払い、僅かだが腰を落とし前方に重心を傾けながら爪先で床を蹴る動作は、さながら一塁を無心に目指すプロ野球選手のようだとクララも思わず感嘆する。

 そして一塁、ではなく王太子に届くだいぶ手前でファビアンの肉体をもって止められ、次の瞬間には気を失っていた。


(おそろしく速い手刀、私でなきゃ見逃しちゃうね。)


 何が起こったのか理解しきれていない者、王太子への襲撃とも取れるジャイネスの行動に怒号を飛ばす者。兵士達はジャイネスの警戒を怠った事を詫びながら、気絶した彼女を運んでいく。


「殿下、ご無事ですか。」


「いま彼が対処してくれた通りだ、大事ない。礼を申すぞ、ファビアン。後ほど褒章を授けよう。」


「もったいないお言葉、恐悦至極に存じます。御身に何事もなく本当にようございました。」


(あっ、ホモだ。)


 このゲームは女性向けだったはずだが、もしやそっちの意味での女性向けシーンもあったのだろうか。全く覚えていない。覚えていないが、前世かつ現世でも現在進行形の喪女からすれば、イケメン大集合の絵面は大歓迎だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] その目は優しかった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ