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テンプレ悪役令嬢に転生した私、前世はなんJ民でした  作者: 鈴木叶緒
ワイ嬢、悪役令嬢じゃなかった件
14/16

よく分かる前章のあらすじ

 ここは19世紀半ばの仮想英国。なぜ仮想と付くのかと言えば、前世の歴史で女王が統治していた時代に、男性の国王が君臨しているからだ。

 概ね同じ歴史を辿りながらも微妙に差異のあるこの世界にいるのは、遊ぶどころか買ったのも定かではないゲームの舞台に貴族令嬢として転生してしまったからだ。嬉しくない、全然嬉しくない。どうせなら悪役達がイケメン化して跳梁跋扈する学園モノに転生させてくれれば良かったのに。

 そんな記憶も思い入れもない世界で婚約破棄を告げられ冤罪をでっち上げられるもあれよあれよという間に助けられ断罪劇は終わり「あっこれ、そういうやつ?」と察した辺りで、突然脳内に直接大量の情報が流れてきて気絶した。


 自分のものでありながら、自分のものでない記憶。

 そう、攻略Wikiである。

 ジャケ買いしたゲームの正体は、恋愛シミュレーションと経営ストラテジーと野球を足して割らない、需要もへったくれもない開発の趣味をぶち込んだ謎ゲーだった。その節操のなさと無駄に高い完成度にコアなファンも続々と生まれたが、あいにく自分には刺さらなかった。ノーマルルート四周目の悪あがきとして攻略情報を探す内に、こちらもあらゆる人種の坩堝と化していたなんでも実況ジュピター板、通称なんJに定住するに至った。どうしてこうなった。

 しかしオフシーズンともなれば板の勢いは衰える。住人の暇つぶしで立てたスレでは野球以外の雑多な話題に混じって件のゲームも度々取り沙汰されていたため、積んだ上にもはや買ってすらいない続編の攻略Wikiまで興味本位で読み流していた。その記憶がこのタイミングで隅から隅まで蘇ったのだ。本当にいらない情報である。




 という訳で波乱万丈の夜も明けて健やかに目覚めたクララは、一応ゲームの世界という事もあり、転生者の嗜みであろうアレをやってみた。


「ステータス、オープン。」

 返事はない。

「……メニュー。」

 返事はない。クララは羞恥に悶絶した。基本的に、ネット弁慶というのは電脳世界でも現実でも打たれ弱い、悲しき獣である。

 そもそもメニュー画面はメニューアイコンをクリックするか、ショートカットとしてエスケープキーを押して開くものである。残念ながら視界にはそんなもの見えていない。自分が至って正常な人間だと認識すると同時に、現実を知った瞬間であった。


 一通りのたうち回ったクララは、思い出した情報を整理する事にした。そもそもゲームの世界に転生したとは露とも知らず、つい最近まで自分をタイムスリップしてきたか、前世の記憶があると信じ込んでいる隠れ狂人だと思っていたのだ。元現代人からすればテクノロジーはクソだが、この時代では上級国民として生まれたためそこそこ快適な令嬢ライフを送っており、正直ゲームの情報とかなくても特に不自由はしていない。スマホ依存症もスマホがなければ解決する事も判明した。

 しかし、気になる点はある。不可解にも世に出てしまった続編も併せて、ゲームが始まるのはクララが十八歳の年である。エンディングで円満に婚約を解消するのだが、現在クララは満年齢で十七歳。王家主催の舞踏会で衆目に晒されながらの婚約破棄は、決して円満とは言えない。

 そして、互いにほとんど接点のなかったはずの登場人物達が、一堂に会したあの夜。何よりも分からないのは。

(ヒロインがいないンゴ。)

 婚約破棄を告げた第二王子を始めとするイケメン達はさもありなん、婚約者を籠絡した子爵令嬢やクララですら、ゲームの中では攻略対象キャラクターとして登場していた。そう、クララは悪役令嬢ではなかった。あまりにもテンプレ通りだったため勘違いするのも仕方ない。せっかくなので片目を瞑って舌を出しつつこめかみを拳で軽く小突いてみた。とても虚しい。


(悪役令嬢モノのテンプレを踏襲し、撹乱を狙った? しかしそれを策略として成せるのは、私が自分を転生者と認識している事を知っている人間のみ。だとすれば他にも転生者がいる? あの騒動が収束した後に、ゲームの情報を思い出した理由は?)


 そしてクララは、考えるのを止めた。正直、どうでも良かったからだ。

 その時、ノックの音と共に使用人の声が聞こえてきた。


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