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プロローグ

つおい


「お前クビな」



 冒険者育成施設、通称『英雄学院』……最難関のテストを通過できたものに通学を許可される………この学校に入学できる時点で優秀だといえる………だが、どこにでも優劣というのは存在しており、スクールカースト最上位のギルドはSランクギルドと呼ばれる、俺はそのSランクギルド『焔光の鷹』に所属している………いや、正確には一年間の間、()()()()()()………と言うべきかもしれない。

 何故ならギルドマスターのアーロンはなんの脈絡もなく一方的な解雇通告を俺に告げた。



白髪黒目、中肉中背、何処か頼りなさそうな男………つまりは俺ことエクティス・ウォーカーはただ呆然と呟いた。


「はい?」


 一瞬頭が真っ白になった、否、理解することを拒んだ。


 しかし感情なんてものは時間が経てばたやすく冷やされ、冷静にさせられる。


 冷静になってしまえば必然、相手の言うことを論理的かつ合理的に受け止めれてしまう、それが人間というものだ。


 事実、俺はアーロンの言葉の意味を把握した。


「だからクビだって言ってんの」


 俺の都合などどうでもいいのだろう、容赦なく追い討ちをかけてくるアーロン、もちろん納得できるはずもなく猛抗議する。


「い、意味がわからない、なんでいきなり………」


 さも面倒そうに眉を寄せるアーロン。


「はぁ……お前雑魚すぎるんだよ、戦闘中何もやってないだろ?」


「何いってんだ?、俺は十二天将や十二宮、十二支、強力な式神をパーティーメンバーにつけて何倍にも能力を上げるバフを乗せてるだろ?」


「もうその与太話は聞き飽きた!!、ステータスには何も表記されてない!!、つまりお前は何もしてないって事なんだよ!!!」


俺は最強の陰陽師の最後にして最強の弟子、亡くなる寸前に最強の霊達、十二天将や十二宮、十二支を引き継いだ、別に世界に干渉できるよう具現化してもいいのだが、結構疲れるので、もっぱら仲間に憑依させ、サポートに徹してた方が効率が良い。


パーティー全員に十二天将、十二宮、十二支を複数憑依させて実力を底上げしていたのだが………。


ずっとそうしてきたが…………まさかそんなふうに思われていたとは…………アーロンの目を見る限り、俺が何をいったところでクビは確定的に明らか…………なら後々がめんどくさいし………一応念押ししとくか。


「あのさ、一応言っておくけど…………俺が辞めたら困るのはお前らの方だぞ?」


「ハッ、寝言ほざくな」


「本当に構わないんだな?、本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当にやめて?」


「とっととやめろ」


「言っとくが後でいくら泣きついてこようが知らんし遅いぞ?」


「くどい!!」


「………その言葉忘れるなよ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ダメだ、全く見つからん」


言われた通りギルドを辞めて、他のギルドに所属しようとするも、即断られる、まぁよく考えなくても『焰光の鷹』は有名だし、俺がそこの元所属というのは周知の事実だ、そんな俺が所属先を探しているということは焔光の鷹をやめさせられたのは嫌でも相手はわかるだろう。


それにもし俺に何の非もない不当な解雇、かつ有能な奴だったとしても取るギルドはいない、それはそうだ、万が一、いや億が一でもSランクギルドに目をつけられた場合、厄介どころの騒ぎではない、そんな厄介の種の俺をそう簡単に受け入れるわけがない。


「…………仕方ねぇ、()()()()()()()()()()()…………」


そうして十数分歩いて着いたのが閑古鳥が鳴く古ぼけた木造校舎が目の前に立っている、俺の目的地だ。


「邪魔するよ………」


「おや、うちにお客さんとは珍しい、ようこそ『ブレーメンズ』へ…………それで?何のようかなお兄さん?」


「…………『ブレーメンズ』に所属したいんだが………いいだろうか?」


「…………なるほど………()()()()()()………いいよ、適当にこの書類書いた後に私の机置いといて、テキトーに処理しとくからさ」


教室の扉を開けて、加入手続きをするため受付へと移動、いたのはボサボサの髪、ヨレヨレの服、締まりのない顔をした受付嬢が対応をしてくれる。


………顔とスタイルがいいだけに身なりの酷さが際立っている……………。


………彼女は気怠げに俺に質問してくる、単刀直入に用件を伝えると、ほぼ予想通りという風に呟くと、加入のための書類を乱雑に積み上げる。


…………所々が折れ曲がってるし、端も揃っていない、上から見ると八角形のような形に見える………どんだけやる気ないんだこのギルド…………。


…………このギルドなら俺でも入れる………なぜならこのギルドのメンバーは殆どが他のギルドの追放者を集めたギルドだからだ………どこにでも需要と供給というものは存在しており、行く所がここしかないためそうそう問題を起こせるわけもない上、学校としてもあぶれ者とはいえ大量の退学者が出たら沽券に関わるため、このようなギルドの存在を認められている、俺たちのような厄介者を雇うのがここ総合業務ギルド『ブレーメンズ』。


基本的にこの学校は依頼をこなし、定期試験を通過して単位を稼がなければ卒業ができないため、普通のギルドは人材派遣とか商業とかダンジョン探索などやる事を絞り、人材もそれに即した人間を採用する、しかしこのギルドは違う、雇う人材が多種多様を通り越して雑多なので手広くやっている………


そして適当にやっているためかこのギルドのランクは万年最低Fランク…………。



「………ま、こんぐらいハンデがあった方が良いか、よし見てろよアーロン、お前らの喉笛に噛み付いてやる」


ーーーーーーーーー


「ーーーすみません、うちのパーティーメンバーが負傷してしまい、空いてる回復担当いませんか?」


「ーーーあ、すいません、今、回復職は全員出払ってーーー」


「ーー俺じゃダメか?」


「「ーーーえ??」」


書類を適当に埋めて、提出した直後、誰かが教室に入ってくる、どうやらパーティー内に欠員が出てしまい、ブレーメンズに欠員を求めて来たらしい………今、間が悪いことに、全員で払ってるとのこと、ちょうど暇だった俺は名乗り出る。



「俺今暇だから、俺が受けるよその仕事」


「…………そりゃ依頼の取りっぱぐれがない方がギルドの売り上げは上がるからいいけど、それは問題なくこなせる場合の話、新人だからって甘い顔しないよ、仕事だからね…………仕事失敗したらキツいペナルティーが待ってるけど………そこんとこ理解してるかな?」


「わかってる」


「…………なら良いや………お客さん、運が良いね………この子が受けてくれるらしいよ」


「………大丈夫なのか?」


「………別に他所行ってもいいよ………でもそれで済むならそもそもこんなギルド来てないよね?、自身のお財布事情と相談して自己責任で判断をお願いします………」


「……わかったよ………できる限り足を引っ張らないでくれよ?」


「了解」


受付嬢は気怠げな顔から一転、神妙な顔つきで俺に忠告してくる、断るなら今のうちだと…………だが俺には立ち止まっている余裕なんてない、チャンスだってそうそう何度だってあるわけじゃない、この仕事が上手くいけば俺への個人指名もなんかも入ってくるだろう………。


俺と受付嬢のやりとりを見ていた青年は胡散臭そうな顔で俺を見ながら受付嬢に質問する、対して彼女は青年の足元をみて返答する、渋々肯定の意を示す青年、短く了承する俺。



つおい

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