復讐こそ我が喜び
私は全身に重度の火傷を負い、生死の境を何日も彷徨った。
手術を執刀した医師も奇跡に近いと言っていた。
私は本来生きているのが不思議だという事だ。
自分の強運に感謝すると共に、私をこんな目に遭わせた奴への憎悪が湧き上がった。
記憶は定かではない。
何者かに後頭部を殴られて昏倒している間に全身に灯油を掛けられて火を点けられたようだ。
警察の話では、犯人の目星はついておらず、私の意識が回復するのを待っていたのだと言う。
しかし私は何も見ていなかった。刑事達は意気消沈して病室から立ち去った。
確かに犯人は見ていない。しかし心当たりならある。
私に死んで欲しい人間。奴だ。奴しかいない。
私は自分で復讐しようと思い、警察にはその心当たりの人物の事は言わなかった。
私はその夜、包帯も取れていない身体で病院を抜け出した。
そしてまず身支度をするために家に帰った。
私はキッチンにいる妻のところに行った。妻は仰天していた。
「貴方! 大丈夫なの、その身体・・・」
「ああ。復讐するために病院を抜け出したんだ。奴のところに行く。手を貸してくれ」
私は妻にそう告げるとキッチンから出ようと歩き出した。
「灯油じゃなくてガソリンにすれば良かったかしら」
妻の独り言を私は身を強張らせて聞いた。そして次の瞬間背中に激痛が・・・。
「そんな・・・」
私は遠のく意識の中、実は私が妻に復讐されたのだと悟った。
「今度こそ戻ってくるんじゃないわよ、私のパパを殺したクズヤロウ!」