プロローグ
かなりのんびり更新となります
「いっそのこと殺せばいい!」
わたしは目の前に立つ男どもにいい放つ。
拷問を受けた体はあちらこちらに傷ができ、まだ血が出ている箇所もある。腰まで伸びていた髪も拷問の一環で、刈り上げられた。飲食もまともにできなかったため、骨のかたちが分かるくらい痩せこけた。その両手首と腰には、逃げられないように縄で拘束されている。
地べたに膝をつくと、治る前に増やされる新しい傷たちがヒリヒリズキズキと痛みを増す。
嘗ての国一番の美女と謂われた王女の姿はもはやない。乞食と云われても納得するくらいのみすぼらしい姿となりはてた。
それもこれも全てはこの目の前にいる男どものせいだ。
平穏に過ごしていた日々をこいつらのせいで失くしてしまった。
国王であった父は、首を切り落とされ城下に晒された。
后であった母は、拷問の末に民衆の前で火あぶりとなった。
兄も殺害され、弟もわたしの目の前で串刺しにされた。
家族の悲鳴が頭を何度も過る。
拷問で疲れた体は夜の休息を図ろうと眠りに落ちそうになるが、弟のわたしの名前を叫ぶ声、体からわき出る真っ赤な血、阿鼻叫喚する家族の声と映像がフラッシュバックし眠ることを許してはくれない。
つらい
痛い
むなしい
家族に会いたい
わたしへの罰は拷問と家族の死。
わたしはもうこれ以上生きていたくない。
そう思うのに、自分では舌を噛みきる勇気もない。どれだけ痛いのか想像すると震えが止まらなくなる。
威勢だけはいいと言われるのも、その通りだと思う。
王女としての矜持なんてもうない。
自分では痛いことをできないから、目の前にいるこいつらに止めを刺すことを嘆願しているのだ。
目の前の男どもを見上げるように睨み付ける。
早く殺しなさいよと何度も叫ぶ。
しかし、わたしを嘲笑うかのように男どもは何も言わない。ただ薄ら笑いを浮かべている。
甲冑を身に纏い、兜で面を隠してるが、口元だけは見えるようになっている。どんな男なのかも判別できない。
リーダー格の男とそれに付き従う3人の男。
低い声に薄い唇、リーダーと勝手に思っている男。
無精髭にしゃがれた声の男1。
顎髭を逆三角形に綺麗に整えているリーダーよりもやや低い声の男2。
たらこ唇に少し高めの声の男3。
わたしを捕らえてからというもの、拷問の後には必ずしもこいつらが現れる。
罵倒するでも、殴ってくるでもない。ただ、仁王立ちしてわたしを見下ろすのだ。
『お前の罪はなんだ』
男たちは毎日わたしに同じことを問いただす。
知らない、わからない。
わかってたらもう言ってるよ。
そもそも、こいつらがなんでお父様やお母様、兄弟を殺したのかさえわかっていない。そんなこともわからないのに、わたしの罪を聞かれてもなにも答えられない。
わたしが王の娘に生まれたから?わたしが王女だから?わたしが王女の勉強をさぼっていたから?わたしがお兄様にわがまま放題だったから?わたしが弟を甘やかしすぎたから?
全部違うと言われて、もう何も答えがない。思い浮かびもしない。
わたしの罪は何なのか。教えてもくれない。
わたしに生きる価値がないというなら、さっさと殺してしまえばいい。
「思い浮かぶものは全部言った!罪ってなに?なんのこと!?わたしにはなにもわからない!」
そんな日々は長く続くことはなかった。
わたしの体力が尽きてしまったから。
男どもの前で、「生まれ変わっても許さないんたから」そう最後の悪あがきのような言葉を残し、わたしの意識は途切れたのだった。
王女の名前も出てきませんでした
いずれは出てくると思います…多分
お読みいただきありがとうございました