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八月五日
生きて令和という時代を迎えてしまった以上、今私が取りくんでいる小説との対峙は半ば宿命付けられているのだろう。
夏が終わればまた時間が無くなる。学業に本腰を入れなければならなくなる。そうなる前に、何としてでも完成させたいのである。
小説を通しての私の主張。それは裏切りと善悪、そして歪み切った自意識との戦いに喘いでいた二十歳という時期に私を襲った、日本が日本でなくなるという確かな衝撃、自分と世界に対する失望、及びそれを許容した日常の有難みと裏腹の恐ろしさである。
これを書いた結果私がどうなるかは分からぬ。しかしながらこれを完成させなくては前に進めぬ。
私には時間がない。一分一秒が惜しい。この一ヶ月全力でこの道程を駆け抜けていこうと思う。まだ何も始まっていないのであり、何かが始まるのはこれからなのだから。
皇紀二六七九年
八月五日 主人公の名前決定