(45) 再従兄弟(はとこ)
「……停めて…降ろして…」
泣き疲れてぼんやりした顔で森田の車に乗せられた高橋妃奈は、車窓から事務所の煉瓦塀が流れて行くのを見送ると、堪らなくなったのか声を上げた。
車は静かに路肩に停まったが、ドアのロックは掛けられたままだ。
隣に座っていた森田は、小さく溜め息を吐いた。
「…気が変わったか?だが…」
「今更、黒澤の所になんて帰らない。帰れる訳…ない…」
「では、何だというのだ」
「…降ろして」
「…君には、今後の生活の準備が整う迄、ホテルで生活をして貰う」
「…降ろせ…」
両手で口を押さえ、高橋妃奈はフルフルと震えている。
気持ちが悪くなったのだろう…森田が運転をしている部下に命じてドアロックを外させると、高橋妃奈は慌てて外に飛び出し、側溝に吐きもどした。
気が強そうに見えて、案外神経は細いのかもしれない…病院でも、精神科に長く掛かっていたと聞いた。
「大丈夫か?」
顔を上げて口を拭った高橋妃奈に声を掛けると、彼女はペコリと頭を下げた。
「…ここでいい」
「どういう事だ?」
「ここで、降ります」
「これから、どうする積りだ?」
「…それは、森田さんには関係ない」
「……」
「森田さんは、アタシが黒澤の前から消えたら、それでいいんだろ?」
「……」
「じゃあ、いいじゃん…この後、アタシがどうなろうが…」
取り繕う事もせず蓮っ葉な言葉を吐くと、高橋妃奈は後部座席のドアをバタンと閉めた。
リアウィンドウを下げると、森田は歩き始めた高橋妃奈を呼び止める。
「待ちなさい」
「…何?」
「何も持ち出さずに出て来たんだ。どうやって生活する?」
「関係ないだろ?」
「そんな事はない。私には、君を連れ出した責任がある」
懐から財布を取り出し、札束を渡そうとする森田に驚いた顔を見せた高橋妃奈は、少し寂しそうな顔を見せた。
「…そんな所は、よく似てるんだな……やっぱり、親子なんだ」
「……」
「必要ない。アンタからは、何も貰いたくない」
「……」
「アタシだって、プライド位持ってるんだよ…森田さん」
無表情に取り繕いながらも、高橋妃奈は前髪の奥から森田を睨み返した。
「…もう1つ…頼みたい」
「何?」
「東京から…せめて新宿からは、離れて貰いたい」
「……」
しばらく俯いていた高橋妃奈は、ハァと息を吐き出すと黙ったまま頷いた。
「…やはり…」
交通費だけでもと思って再び財布を出した森田を無視し、高橋妃奈はトボトボと歩き始める。
森田は懐に財布を戻すと、リアウィンドウを閉めた。
自分は、あの少女に無体な事をしているという自覚は重々あった。
だが、幾ら黒澤が愛した娘だからといって、我子と他人を比べるべくもないのだ。
それに黒澤なら、もっと相応しい娘が幾らでも居るだろうに…選りに選って、何故あんな娘なのだ…という思いがないかといえば嘘になる。
嶋祢蝶子との縁談は、相手側から望まれたものだ。
然もありがたい事に、嶋祢会長は黒澤を婿養子にと迄考えてくれている。
いずれは黒澤をこちら側の世界に引き入れ、行く行くは森田組を継がせたいと思っていたが、もっと大きな話が持ち上がったのだ。
この縁談は、堂本組にとっても黒澤にとっても、大きな力になる。
若い頃の堂本組長と嶋祢蝶子の件で多少軋轢があった堂本組にとって、そして森田の組にとっても、嶋祢会との絆を磐石にする事が出来る絶好の機会なのだ。
迷う事は何もない…黒澤は抗うだろうが、想定済みだ。
少し、頭を冷却する時間を与えてやればいい。
幸い嶋祢蝶子は、結婚を焦る年齢をとうに過ぎているのだ。
嶋祢蝶子の扱いは、彼女が堂本組長を追い掛けていた頃に手慣れている。
少々待たせた所で、機嫌さえ取ってやれば上手く行くだろう。
問題は、高橋妃奈だけだったのだ。
少し手間取ったが、最後には思いの外あっさりと身を退いてくれた。
後は、彼女を捜索するであろう黒澤の前に、彼女の姿を見せない様にする事だけだ。
「…尾行は?」
森田が声を掛けると、助手席に座っている側近の中沢が透かさず答える。
「多分、大丈夫でしょう。年末の事件で、黒澤さんが彼女の外出に関してナーバスになっているそうですが、組長と一緒に出られたのですから…」
「どうせ聖の所のか、ウチの組の者に追わせているだろう。もし尾行が付いていたら、黒澤よりこちらを優先して、逐一情報を上げる様に寺脇に連絡しておけ」
「卒爾ながら、始末を付けなくても宜しいのですか?後々、禍根を残す事にはなりませんか?」
助手席からバックミラー越しに、中沢の心配そうな視線が注がれる。
「…必要ない」
「ご心配には及びません。お申し付け頂きましたら…」
「いや…手を出すな。さっきお前も言っていた様に、彼女は年末迄警察に関わっていた人間だ。それにあの容姿では、死体が出れば直ぐに身元が判明する。事件絡みで、要らぬ人物が出て来ないとも限らない」
何せ彼女が逮捕された時には、あの『Panther』…連城仁が出て来たのだ。
あの男だけは、敵に回したくない。
それに、今度新しく新宿署の署長に赴任して来たのは、三上とAsia製薬の事件の時に指揮を取っていた人物…連城とも親しい間柄だと聞いている。
極め付けが、年末の毛利の事件を手掛けた人物だ。
まだ若い女性警視だと聞いた。
だがその仕事振りだけでなく、本人の持つバックボーン…名だたる警察官僚を何人も身内に持つサラブレッドの血筋に、流石の毛利も金の力を使えなかったらしい。
当分は、大人しくしていた方が良さそうだ。
無理な事をして、堂本組長に火の粉が掛かる様な事があっては、絶対にならない。
「出過ぎた事を申し上げました。申し訳ございません」
「…構わん。それより今は、婚礼準備に手落ちがない様に徹底しろ。後…嶋祢会長に、面会に行く」
「何か、ありましたか?」
「いや…黒澤の件を報告に行くだけだ」
「御意」
恭しく返事をした中沢は、運転をする部下に車を出す様に命じた。
当てもなくフラフラと歩いて着いたのは、ツインビルだった。
黒澤の元からも、新宿からも出て行けと言われて、妃奈は正直途方に暮れていた。
妃奈が土地勘のあるのは、新宿と蒲田だけだ。
まさか、今更蒲田に帰る訳にも行かない…第一蒲田に帰っても、直ぐに黒澤に連れ戻されるだろう。
それは、新宿中央公園に居ても同じだ。
「どこへ行けってんだよ…」
だからといって、森田組長の世話になるのは絶対に嫌だった。
黒澤の父親だという森田組長に、無理やり黒澤と引き離されたのだ。
それでも渋々納得したのは、心を守る約束は果たせなくても、黒澤の命を守る事が出来ると思ったからで…彼が父親に逆らって迄、妃奈との生活を守ろうとしてくれた事を知ったからだ。
森田組長の世話になるのは、そんな黒澤の気持ちを裏切る事にもなる。
ツインビルの入口に置いてある旅行パンフレットを数冊取ると、妃奈は広場のベンチに座ってペラペラとページを繰った。
「…旅行に行くの?」
不意に背後から声を掛けられ、妃奈はビクリとして振り返った。
植え込みの中から出て来た、小柄な若い女性がニコニコと妃奈に笑い掛ける。
「今から暖かくなるし…来月末には、桜も見頃だし…ねぇ、どこに行くの?」
身なりはキチンとしている…ホームレスではなさそうだ。
だとすると、何かの勧誘か…。
「…何か用?」
不機嫌に尋ねる妃奈に、彼女はアーモンド形の目を見開いた。
化粧の下に隠れる頬の大きな傷痕が、少しだけ引き攣っているのがわかる。
「そんなに、警戒しなくてもいいよ。何もしない…唯、話し掛けただけ」
そう言って妃奈の隣に座ると、彼女は紙に包んだ物を差し出した。
「食べる?お供え物の残りなんだけど」
「…供え物?」
ハッとして祠を振り返った妃奈に、その女性はフフッと笑い声を漏らす。
「やっぱり知ってたんだ。私ね、貴女の事少しだけ知ってるんだ。この辺り、テリトリーにしてたでしょ?」
「……」
訝しむ妃奈に饅頭を渡すと、彼女は自らも1つ包みを剥いてかぶり付いた。
「私もね…昔は新宿を根城にしてたんだよ。その前は、渋谷に居てさ…」
「……」
「前に、何回か見掛けたんだよ?声掛けようとして、いっつも逃げられてたけどね」
「…供え物取ってた事、文句でも言いたかったのか?」
「別に…持って行かれるの承知の上で置いてるんだし、少しでも役に立ってたなら良かったよ」
そうニコニコと笑う女性に…同じホームレスをしていた癖に、何だか自分より上に立っている様な心のゆとりが悔しくて、妃奈はわざとつっけんどんに尋ねた。
「…アンタ、なんでここの祠に供え物なんてしてんだよ?この祠、何の為の祠か…知ってんのか?」
「知ってるよ。ここは…私のね…先祖が眠ってた場所だから」
「……」
「以前は、大きな屋敷があってね…そこから、沢山ミイラの女達が出て来たんだよ。昔から、巫女だった女達が住んでたんだぁ」
「……」
「ここのビル建てた人が、この祠も造ってくれたんだよ」
驚いた…じゃあ彼女は、あの爺さんの親戚って事か…。
「…アタシ…前に、少しだけ…ここに住んでた」
「そうなの?」
「しわくちゃの爺さんと婆さんが居てさ…庭先、貸して貰ってた。直に死んじまったけど…」
「そうなんだ…それ、私のお祖父さんだよ。でも…私には怖い人だった」
「…ふぅん」
「優しかった?」
「どうだろ?直接口利いた事なんてなかったし…でも、アタシが住み着くのも、水道使う事も、見て見ぬ振りしてくれた。他の大人よりは、マシだったんじゃないかな?」
「…そぅ」
ベンチに座った足をブラブラさせながら、彼女はフワリと笑った。
幸せなんだな…こんな笑顔が出来るという事は、そういう事なんだろう。
…自分は…あんな笑顔を作れなかった。
記憶が戻っても、黒澤には泣き顔と怒った顔しか見せる事が出来なかった…心残りといえば、その位だ。
「…で、誰と旅行に行くの?」
「……別に…旅行って訳じゃない。ネグラを移そうと思って」
「えっ!?」
「…何?」
「堅気に…なったんじゃないの?」
「……」
「だって…とても、ホームレスしてる様に見えないよ?」
「今迄はね。引き取ってくれてた人が居たし…」
「何かあったの?追い出された!?」
「…お節介だな、アンタ」
「だって!放って置ける訳ないよ!同じ境遇だったんだよ、私達!?」
「……」
「私だってわかる…住み慣れた場所を離れるのは、余程の事があった時だって…。ねぇ、何があったの?」
「…別に…放り出された訳じゃない。優しくして貰えて、アタシなんかの事、大切にしてくれて…必死で守って貰ってた…」
「じゃあ、何で…」
「色々あんだよ」
「……」
「…でも、アンタには関係ない…そうだろ?」
必要以上に介入する事は許さない…ホームレスにとっての暗黙のルールに、彼女は心配そうな表情を浮かべながらも口を噤んだ。
「ナオ!」
ビルの方から歩いて来る男の呼び掛けに、彼女は明るい笑顔を見せた。
「ねぇ…行く場所ないなら、ウチの旦那さんに相談してみる?」
「…旦那?」
「そう。ウチの旦那さん、何でも屋してるんだよ」
「……」
「大丈夫だよ。昔、私も拾って貰ったんだぁ」
「…で、今は旦那なのか?」
「そう!紹介するよ」
「…いゃ…」
躊躇する妃奈に構わず、彼女は男を手招いた。
「柴さん、柴さん!彼女ね、行く場所がないんだって。どこか住める所、紹介出来ないかな?」
「……」
眉を寄せる強面の男に妃奈が仕方なく会釈すると、男は不躾な程にジロジロと妃奈を見下ろした。
「…高橋……高橋妃奈か?」
「!?」
「そうなんだな?俺の事を覚えてないか?」
「…誰?」
「君は、まだ小学生だった…ご両親が亡くなった時、病院で会ったんだが…」
男の言葉に、妃奈は記憶の糸を辿る…過去の記憶も言葉もなくしたアタシに、眉を寄せる刑事の顔…。
顔を強張らせて立ち上がると、隣に座るナオと呼ばれた女性が妃奈の手を掴んだ。
「どうしたの?柴さんと、知り合いなの?…あっ…貴女!?」
急に驚いた顔を見せた彼女の手を振り払い、妃奈は広場の入口に作られたアーチに向かって走り出した。
「あっ!?ちょっと、待って!!」
追い縋る彼女の声を振り切る様に走る…今更、サツになんて関わる訳にはいかない!!
アーチを潜り抜け表の道路に出た途端、黒塗りのワゴン車が目の前に停まった。
嫌な記憶が蘇り、妃奈は横に飛んで逃げ様とした。
だが目の前のスモーク硝子を貼ったドアが開くと、黒い目出し帽を被った男の手が妃奈の腕を掴み、凄い力で車内に引き摺り込む。
「行けっ!!出せっ!!」
ガラガラとドアが閉まり急発進した車内で、目出し帽の男は暴れる妃奈の腕を後ろ手に縛り上げると、息を上げ帽子を脱ぐ。
見知った黄色い髪と軽薄そうな顔…男はニヤリと笑うと、ガムテープで妃奈の口を塞いだ。
「大人しくしてろ…」
「ウウッ!?」
「危害を加える積もりはありません。しばらく、大人しくしていて下さい」
運転席で眼鏡を擦り上げながら話す男を、妃奈はキツイ視線で睨み付けた。
「そんな怖い目をして睨まないで下さい。僕達は、唯…貴女に一筆書いて貰いたいだけなんです」
運転する清水文彦の言葉に、妃奈は再び呻き声を上げた。
どれ位眠っていたのだろう?
車内で暴れる妃奈に、鶴岡日出夫はハンカチに染み込ませたクスリを嗅がせた。
意識が覚醒するに従い、酷い吐き気と頭痛に襲われる。
「…なぁ、もし承知しなかったら、どうすんだよ?」
「今更そんな事を考えても、しょうがないだろう!?」
「だけどよぉ…」
「あの遺言状がある限り、僕達の家には、びた一文入らない!僕達が遺産を手に入れるには、彼女と婚姻を結ぶか、彼女に遺産の分配を承諾させるしかないんだ!!」
「だからぁ…」
しつこい程に食い下がる日出夫に、文彦が舌打ちをする。
「アイツ、この間の事怒ってんだろ?俺等と結婚なんて、とても納得しそうにねぇじゃん?」
「だから、彼女を説得して一筆書かせるんだろう!?」
「書くと思うか?」
「日出夫…書かせないと、どうなるか…わかってるのか!?」
「……」
「僕達の家の借金…利子を付けて返すという約定を、あの金融屋にようやく取り付けたんだ。どちらにしても、遺産が入るのは2年後…それ迄は、あの黒澤って弁護士が遺産を守って、頑として受け付けない。だがあの男だって、2年後にはお役御免になる。あの男の手から離れれば、こっちの弁護士の手で何とでもなるんだ!」
スモークを貼った窓の外は暗く、舗装されていない道を走っているのだろう…躰にガタガタと振動が伝わって来る。
あの土地は、黒澤の物だ…他の誰にも渡す気はない!
況してや、こんな誘拐みたいなやり方で拉致しといて、アタシがアイツ等の言う事を聞くと、本気で思っているんだろうか?
幸い足は縛られていない…後ろ手に縛られた縄を動かして緩めながら、妃奈は黙って前の2人の会話に耳をそばだてた。
「その為にも、彼女の書いた約定書が必要なんだよ!!今直ぐに!!」
「……」
「持って行かなければ、直ぐにでも全額回収すると、日出夫の家でも金融屋に言われてるんだろう!?」
「まぁ…そうだけど…親父は、会社も家も取られるって焦っちまって…」
「ウチの父親も、このままでは会社の横領がバレてしまう。何としてでも、彼女に承諾して貰うしかないんだ!!」
「だけど、もし…OKしなかったら、どうすんだ?」
「…それは」
「文彦ん家の叔母さんの言う通り、殺っちまうのかよ?」
「…それは、最期の手段だ…」
「アイツが死んだら、俺達も法定相続人ってのになれるんだろ?」
「……」
「アイツの親戚って、俺等の家だけだって弁護士が言ってた。そしたら、アイツが相続する金額、俺ん家と文彦ん家で折半だって」
「…日出夫…お前、何考えてる?」
日出夫は、黄色い頭をガリガリと掻いて頭を揺らす。
「多分、文彦と同じ事だ」
車が停車すると、2人は車を降りて車外で何かを話している様だった。
あの2人は、アタシを殺す計画を立てているに違いない!
妃奈の全身から、嫌な汗が吹き出す。
後ろ手に縛られた縄を何とか解くと、気付かれない様にそのままの態勢で機会を待った。
バンのハッチバックが開き、日出夫が妃奈の躰を車から引き摺り降ろす。
妃奈は自分の足が地面に着いた途端、日出夫の手を振り払い、正面の文彦に体当たりした。
「クッソッ!!テメェッ!?」
「待てッ!!」
降ろされたのは、どこかの山道途中にある駐車場の様だった。
どっちに逃げる!?
右か…左か!?
震える足を必死に動かし、妃奈は暗い山道を走った。
道の片側は崖になっている様で、遥か下から沢の流れる音がする。
それよりも煩いのは、自分の心臓の音と荒い息遣い。
自分の命に未練などなかったが、それでもこの2人にくれてやる事だけは嫌だった。
「待ちやがれッ!!」
後を追って来た日出夫に振り回され、妃奈は道から外れ、枯葉の窪みに足を取られた。
「アッ!?」
ズルッと躰全体が枯葉と共に滑り落ち、妃奈は必死で側にあった木の根元にしがみついた。
薄暗い山道から、4つの冷たい眼が妃奈を見下ろす。
先に行動したのは、文彦だった。
無言で、木の根元にしがみつく妃奈の指を解きにかかったのだ。
「!?」
それを見ていた日出夫も、慌てて文彦を加勢する。
「…お前等が…どれだけ足掻こうと…あの土地は…お前等の手には、入らないんだからな!!」
「…どういう事だ?」
「お生憎様だったな…あの土地は…もう…」
「だからっ!!どういう事かって聞いてんだろッ!?」
指が痺れ、力が入らない…妃奈は焦る2人の顔を睨み付けた。
「絶対に…許さないっ!!」
「ほざけ!!」
日出夫が妃奈の指を踏み付けると、妃奈の躰はバランスを崩しながら崖の下に転がり落ちて行った。




