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第四幕 第八場 オリンピックホテル レストラン
午前零時。
日付が変わる前に遠藤がレストランに入った。
そのまま厨房へ行って、火の点いた蝋燭を持ってフロアへ戻ってくる。
外は暗く、一本の蝋燭だけが辺りを照らしていた。
その状況は、前日に馬渡が死ぬ前と同じであった。
テーブルや椅子の配置が微妙に変わっているが、遠藤は気づいていない。
日付が変わる直前、テーブル席に座る遠藤がカウントダウンを始める。
「五」
「四」
「三」
「二」
「一」
「ゼロ」
遠藤の声がフロアに空しく響き渡る。
「さぁ、みなさん、出てきて下さい」
遠藤の声は陽気だった。
「サプライズ・パーティーを始めましょう!」
遠藤は呼びかけるが、何も起こらなかった。
起こる気配もない。
ただ、馬渡の遺体がそこにあるだけだった。




