謎の襲撃者
「きゃぁぁぁ!!!」
悲鳴だ!俺は隣に居るロゼに視線を向ける。するとロゼも同じように俺を見ていた。考えていることは一緒らしい。
「魔物の仕業かもしれない。急ぐぞ!ロゼ」
「ええ!」
そう言うと俺たちは悲鳴が聞こえた方へと走り出した。
俺は走りながらロゼに話しかける。
「ロゼ、ここは二手に別れよう。その方が効率がいい。」
「でも、どんな魔物か分からない今、離れるのは危険過ぎる!」
「あぁそうかもしれない。だけど今は悲鳴をあげた人を助けるのが先だ!」
「.....分かったわ。でも無理はしないで。」
「そっちこそ。気をつけて!」
こうして俺たちは二手に別れ、悲鳴の先へと急ぐ。
「.....っ!?」
その時、俺の頬を何かがかすめた。そして頬から血が溢れる。今のは.....ナイフ?
そしてナイフがとんできた先、正面を見ると何者かの影があった。あれは間違いなく
「人の影.....?」
その瞬間、その影が俺に襲いかかる。どうやら戦う気らしい。
俺は剣を抜き迎撃する。
がいんっ!
鋭い金属音が鳴り響く。剣とナイフが弾き合う音だ。
すると謎の影は一旦距離を置き、俺にナイフを投げる。全部で3本。
がいんっ!がいんっ!がいんっ!
俺はそれを全て叩き落とし、距離を詰め、
「終わりだぁ!」
剣を振り抜く。しかしそれは空を斬った。
「消えた!?」
視界から一瞬にして消えた謎の影は俺の背後に回り込み、首元にナイフを突き付けた。
俺は大人しく剣を置く。降参のサインだ。すると背後に居る謎の影から聞き覚えのある声がする。
「まだまだ甘いな、オーガ。」
.....この声は...
「し、師匠!?」
「久しぶりだな!オーガ。」
「あ、はい。お久しぶりです。.....じゃなくて!誰かが魔物に襲われているんだ!早く行かないと.....」
「あの悲鳴の事か?」
「あぁ、そうです。」
ってめちゃくちゃ嫌な予感がしてきた。
「もしかして.....あの悲鳴は?」
「あぁ、もちろん私だ。」
何故か自慢げな顔をしながらそう告げる。
「あ、オーガ。やっと見つけたわ。残念ながら私の所には居なかったわ.....!?」
タイミング悪い!オーマイガー!!!
「ちょっとオーガ!?なんで女の人に抱きしめられてるの?」
ロゼの顔がが凍っていく。これはまずい。
「いや、まて!これは違うんだ!」
早く説明しなきゃ本気でまずい!
「師匠もいつまでくっついてるんですか!早く離れて!」
「えぇー!いいじゃないか。久しぶりに弟子に会ったのに.....」
「いいから!離れて!今すぐ!なう!」
「ちぇっ、オーガのケチ。」
渋々ながら離れてくれた。全くこの師匠は疲れる。
「オーガ?今この人を師匠って.....?」
「あ、あぁそうなんだ。紹介するよ、俺に剣を教えてくれた師匠、アストレア・ルイスだ。」
「こっちは訳あって一緒に冒険家になろうって誘ってくれたロゼ・リーファ。」
「は、初めまして!アストレアさん!」
「あぁ、初めまして。ルイスで良いよ。ええと...」
「ロゼと呼んでください。ルイスさん!」
「うん、そうさせてもらうよロゼ。」
ロゼと師匠の自己紹介は終わったようだ。なら、この事件についてロゼに説明しなきゃな。
「ロゼ、さっきの悲鳴の事なんだけど.....実は、師匠の仕業だったんだ。」
「騒がせてすまない。久しぶりに会う弟子へのドッキリのつもりだったんだ。」
にこにこと笑いながら師匠がいう。全くこの人は.....
「えぇ!?そうだったんですか!?.....はぁぁ、良かったー。」
ロゼがへなへなと座り込む。.....本当にごめん。
「で、師匠。今日は何の用なんですか?」
「オーガ。私がお前に会いに来る時はどんな時だと思う?」
師匠が俺に会いに来る時、そんなの決まっている。
「何となくですね。」
「おお!流石私の弟子だ!分かってるねぇ!」
そう言って師匠はケラケラ笑っている。はぁ。
「あ、そうだ。オーガ。今日からお前の家にお世話になるぞ!」
「はぁ!?いきなりなに言ってるんすか!」
「はっはっは、これも含めてドッキリだ!」
「あ、オーガ。それなら私も何日か泊めてくれない?ルイスさんと色々話をしたいし。それに.....」
そう言って俺の顔を見つめる。師匠は絶対帰らないし、一人くらい増えても問題ないだろう。
「分かったよ。好きにしてくれ.....」
こうして、俺の家に二人が泊まることになった。はぁ。
まぁ、師匠とロゼ、二人とじっくり話すいい機会だと思えば、悪くない.....か。
そんなことを考えながら、俺たちは帰路についた。