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剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
終章~三人の英雄たち~
43/50

4.

 不毛の渓谷に戦士たちの雄叫びが木霊する。

 渓谷に生と死の輝きが満ちる。

「クソッ」

 共和国の一兵士スレイ・リャッカはこめかみを伝う汗を拭い、毒づく。

(戦線は完全に混戦状態。敵味方入り乱れての乱戦。敵の召喚獣は無尽蔵で途切れる気配無し。終わるのか? この戦いは)

 自らの闘志を燃え上がらせるべく、己の得物である長槍を強く握りしめた。

「やるしかねぇんだ!!」

 スレイは自身に言い聞かせるように叫び、ふたたび戦場へと突っ込んで行った。味方が歯を食いしばる争いの中心へと。



「戦線は瓦解した。この戦況で突撃させればさらなる混乱を招く……か」

 愛馬の馬上でマグナはひとりごちる。

「前線を信じて見ているしか出来ないのか」

 血が滲むほど歯を噛みしめる。目の前に広がる血みどろの戦場を見つめながら。

 その時、一人の兵士がマグナの前に走りこんで来た。

 顔は兜に隠れて見えないが、鎧の種類で王国軍兵士だと分かる。

 その若き兵士は騎士礼を取った後、言葉を続けた。

「報告でありますザクロフ軍団長殿」

 真っ直ぐな若い声だった。これが初陣だとしても不思議では無いくらいに。

「偵察隊からの報告によりますと、戦場から少し先にサイクロプス、キマイラ、バシリスク等、高危険度魔獣が複数出現、増援を頼むとのことであります」

「そうか」

 拙い調子の報告を聞いたマグナの返答は端的なモノだった。


 彼は頷くと視線を戦場の更に先へ向けた。

 彼は告げた。リーダーとしての命令を、仲間としての懇願を、戦友としての誘いを。

「中隊全軍に告ぐ。俺はこれより巨大魔獣の討伐に向かう。皆の者ついてこい!!」


――ォォォォオオオオオオ!!!!――


 全員が答えた。拒否する者等誰もいなかった。全員が目の前の惨状に疼き、苛立ち、そして憤っていた。このような事件を起こした教団に、そして何も出来ない自分自身に。



『行くのかい?』

 頭に響いたのは後衛を任せる共和国軍団長、コット・ルーチンの声だった。

「あぁ、放っておけないからな。なに、心配するな、大丈夫だって」

『………………………………………………………』

 続いたのは沈黙、それが何を意味するのかはマグナには分からなかった。

『分かった、ならば作戦を告げよう。君たち中隊は目の前の戦場を突っ切れ』

「なんだとっ!?」

 告げられた作戦内容にマグナは驚愕をあらわにする。

『分からなかったのか? もう一度言う、あの中を突っ切れ』

「しかし、あそこには仲間もいるのだぞ!?」

『大丈夫だ、彼らには告げてある。僕の魔法力マナ量を舐めないで欲しいな。心配はいらない、君たちは自分の戦場に向かえばいいだけだ』

「分かった」

『健闘を祈る』

 彼は自分が指揮する隊を見渡し、叫んだ。

「これより、中隊は戦場を突っ切る!! 心配はいらない、後衛の術者隊からの援護がある。」

 告げられた作戦内容に隊はどよめくが、それも少しの間だけだった。

 中隊は静まり返り、聞こえるのは前線の騒乱と、後方の詠唱が僅か。

「行くぞ」


――ォォオオオオオオ!!!!――


 静かに告げられたマグナの声に、全軍は雄叫びで応じた。

 足音激しく、つわものたちは己の戦地に赴いた。



 黄土色の戦士はその拳を固く握る。

 俺は戦士の鉄槌を横に避けて回避。すかさず剣で斬りつけるが、その固い鎧はびくともしない。

(クソッ!! どうしようもないのか!?)

 俺は目の前の堅い敵(ゴーレム)に為す術もなく、避けては斬り、避けては斬りを繰り返していた。

(このままでは剣のほうがイカれちまう。しかしアリアの鍛えた剣は流石だな。何回か打ち付けてるが刃こぼれも無しとは)

 心中で一人の少女に感謝し、振り下ろされる鉄槌を避ける。

 俺は地面にめり込んだ鉄槌に鋭い突きを入れるが、あえなく弾かれる。その際俺の両手に痺れが駆け巡る。

 ゴーレムはまた一歩全身しその拳を横に振るう、動き自体は鈍重なので後ろに退がり、冷静に回避。

「ッ!?」

 俺の視界は一転した。足の辺りに鈍い痛みを感じる、見ると地面から飛び出た根に足を取られたようだった。

 俺はゴーレムに視線を戻す、その固く握られた拳は今まさに振り下ろされんとしていた。

 破られる。分かっていながらも、剣をかざし守りの体勢を取る。それは今までの実戦験からの反射的行動だった。



 その時、突如飛来した緑の閃光がゴーレムの側面を叩いた。

 黄土色の岩石戦士は体勢を崩し、よろめく。

「リアンさん!! 君は先に、ここは僕が」

 俺は視線を閃光が飛んできた方向に移す。そこには短い杖を持った金髪の優しそうな少年がゴーレムの攻撃をよけながら駆け寄ってくる。

「僕が引き付けるから君は、速く!!」

 その目を見れば分かった。その瞳は覚悟の色を湛えていた。

「分かった、頼む」

 俺は立ち上がり、走りだした。この争いの元凶である城に向けて、巨大な黒い樹の根本へと。

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