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剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
第四章~決戦に向けて動き出す隠者~
36/50

9.

「そういえばなんで“シルフの里”っていうの」

 素朴な疑問を向かいあう剣士に尋ねた。

「前々から気になってたんだけど、なんで妖精の名前が村の名前に入ってるんだ?」

 俺の疑問に、次期里長はつらつらと答える。


「昔な、俺たちの御先祖様は魔法術に秀でた部族だったんだ。特に風の属性だな。それで風の妖精“シルフ”の名前で呼び出したのが外の人間。勝手に名乗ってるワケじゃねぇんだぜ」

「なるほどな。左がガラ空きだぜ!!」

 俺は言葉通り、左に斬撃――もとい打撃をいれる。

 しかし、シルフの里次期里長であり、俺の師匠ケイン・マールウェイは両手で握られた大剣で軽々と弾く。

「フッ甘いわ!! 足元が疎かだぞ!!」

 瞬間、俺の視界が九十度回転して大量の水飛沫を被った。






「そうだその調子で炎と水の魔力を練り上げろ」

 スパルタ的な指導をするのは暗殺者であり師匠である『ディー』。本名なのか偽名なのか定かではないし、確かめる術も無ければ確かめる必要も無い。

「水が強いな。炎の割合を強くしろ」

 ボソボソとした声で指示を飛ばす。

「やってるけど、中々…………難しい」

 両手の指を重ね、祈るような手つきになってるが、決してそんな穏やかな事はしていない。肩に力が入ってるし両腕にも力がこもってるし、その表情は苦しげな色をみせている。

「才能はある。コツさえ掴めばすぐにでも実戦で使えるだろう。守るためだろう? 確実に使えるようにならないとな」

 言われた途端、かぁと頬が熱くなる。顔を横に振り、雑念を振り払って術式に集中する。

(守ってもらうばかりじゃ駄目。もっと強くなって、リアンを守る。あたしが!!)


 雑念は消えてなかった。






「本気で行くぜ?」

「良かろう。一度貴様の本気を見てみたかった」

 アイゼンの問いかけに、薄い笑みで返したのは村で一番の双刀使い、アグノス・テイラーだ。


「ふぅ〜」

 アイゼンは肺の空気を全て出しきってから一気に吸った。

 彼の体は少し大きくなる。そして次の瞬間、アイゼンの姿は無かった。

「後ろか!?」

 テイラーは振り向きざまに、短い双刀を体の前で重ねた。

 案の定、アイゼンの思い一撃は短い双刀に受け止められた。

「………重……い」

 アイゼンの攻撃の手は止まらない。

「あぁぁぁぁあああ!!!!」

 体を深く沈めて強烈なタックルを繰り出す。

 不意を突かれたアグノスはタックルをもろに食らって、大きく後ろに下がる。

「まだ、まだぁ!!」

 盾を前に突き出し、またも強烈なタックルを繰り出す。

 しかしアグノスはアイゼンの左方に回る事でそれを回避する。

「甘ぇんだよ!!」

 アイゼンは突き出した盾を大きく左に振った。

 アイゼンの盾にみぞおちを深く打ったアグノスは大きく飛ぶ。

「ここまで……とは……」

 最後の意地とばかりにアグノスは両手の木剣をアイゼンに投げた。

 アイゼンは咄嗟の事で対応が追いつかず。右横腹と額に木剣は受けた。

「ぐ、はぁ……」

 アイゼンも大きく仰け反る。


 二人は同時に倒れた。



「貴様の強さ、本物だな」

「お前さんも中々だぜ」

 木剣を傍らに置いて、二人は並んで座り、笑った。







 廊下というより通路かもしれない。狭く、薄暗い通路を照らすのは両の壁に取り付けられた燭台に灯る紫の火。

 薄暗い通路を歩くのはゼノ・レーク。装備は自室に置いてきたので紫が基調の薄手のシャツとズボンだけだ。

 その真紅の鋭い双眸に紫の火が映り、激しく揺らぐ。その双眸が捉えたのは向かってくる人物が二人。密剣のローグル・レイに、瞬剣のユシウス・アールターだ。二人共、装備をしっかり着けている。


「作戦は明後日だ。用意は?」

 少々派手な金の鎧を身に纏うユシウスがすれ違った後、立ち止まり、語りかける。彼の腰に吊るされた二刀は目を引く程輝いていた。

「万端だ。そっちこそぬかるなよ」

「当たり前。最高司祭ラーガ様に従うだけ」

 答えたのは漆黒の衣服を着、首もとの布でマスクのように口元を隠しているが、言葉の妖艶さは隠せない、密剣のローグル・レイ。結っても背中の中頃まで伸びる長い漆黒の髪は、ゼノでさえ美しいと思わせるほど美をたたえていた。

 数回の会話で離れる二人と一人。彼らの間にそれ以上の言葉は不要だった。


 ゼノは思考を巡らせる。

(伝承が再現されようとしている。二つの“チカラ”がぶつかろうとしている。奴は必ずこの決戦で現れるだろう。俺が伝説の続きを刻んでやるよ)

 ゼノは静かに決意を固め、階段を降りた。



 大きなトビラを片手で軽く開く。

 それは城の中央へと通じるトビラだった。中央には漆黒の巨樹が力強くそびえ立っている。今は幹と少量の枝だけだが、あと二日で巨大な枝と葉が開く。

「来たか、ゼノ」

 未だ幼さを残す声が右方から聞こえる。

「はっ」

 すぐさま跪き頭を下げる。

「いい。楽にしてくれ」

「はい」

 言われるままに元の直立に戻る。そこに立っていたのは“ラーガ”ネザー教団を名乗る組織の最高司祭。暗黒神とも呼ばれている。

「もうすぐ、僕の悲願が達成される。この木は数々の信者と大勢の命を吸っている。しっかり機能してもらわないと困る」

 ラーガは大きなローブで、フードは被っておらず、大きな木製の杖を右手に持っている。緑がかった白髪は短く切り揃えられている。その瞳はライトグリーンの輝きを宿す。

「僕の夢だったんだ。完璧な魔法術式を完成させる。その為ならどんな犠牲もいとわない」

「そう……ですか…」

「そのためにこんな教団だって創ったし、暗黒神だって名乗ってる。ゼノも……しっかり働いてくれよ」

「分かってまいす」

 ゼノは、目指す場所が似ているだけであって。ラーガを崇拝しているワケではない。他の二人は知らないが。

 ゼノの目的は唯一つ。この身に宿るチカラを存分に振るう事。そのために、この大規模無差別攻撃術式の完成を手伝ったのだ。世界の食物が無くなれば国は存続を巡って争うだろう。その争いに参加し、好きなだけ暴れる。それだけが目的だ。

 唯単純に闘いたいだけなのかもしれない。だから“聖剣に選ばれた者のチカラ”を見つけた時歓喜した。


(拍子抜けだったけどな)

 ゼノは軽く笑い、跪いた。

「では失礼します」

「二日後よろしくたのむよ」

「承知!!」

 ゼノは立ち上がりトビラの方へ歩きだす。その顔に獣じみた残忍な笑みを浮かべて。

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