8.
修行日が残り三日となった昼下がり、アイゼン・グリッダは切り株に座り、自慢の長剣の手入れをしていた。
「貴様、その強さの源は何だ?」
長剣の手入れをしている時、不意に後ろから声をかけられた。里一番の双刀使いである武人、アグノス・テイラーだ。修行が開始されてから、アイゼンの稽古の相手を幾度となくこなしてきた。
「俺?」
「貴様意外に誰がいる?」
アイゼンは押し黙る。長剣を鞘に戻し、頭を垂れた。
「聞いてから後悔しても知らないぞ?」
「どういう事だ?」
「ま、気にすんな。まだ、仲間にも話したこと無ぇんだがな……」
「俺はエルル族出身なんだ。聞いたことあるだろ? 大昔に滅んだ戦闘民族だ。エルル族は帝国の侵略作戦の際に帝国に大打撃を与えた後、決死の抵抗かなわず滅亡したんだ。んで俺はその生き残り。戦闘民族の血は受け継がれてるみたいでな、そのせいだよ」
「そうか、その強さは生まれ持った才能というワケだな。そしてその力を仲間のために使うと?」
アイゼンはテイラーの言葉に苦笑交じりで笑った。
「そんな大層なモンじゃない。俺はこの力で数々の人を殺めてきた。殺し屋といった形でな」
「生きるためには仕方無かったんじゃないのか?」
諭すような問いがアイゼンの胸に刺さる。
アイゼンは自分の右手を見つめ、僅かに瞑目した。
「それでも、俺は人を殺した。この手で、何十人何百人となく殺してきた。顔を覚えてるのは誰一人として居ない。最初に殺した感覚や人の顔さえ覚えていない」
アイゼンの告白を受け、アグノスは黙る。しかしその表情は揺るがない。
「エルルの血は今も受け継がれてる。贖罪とは言わない。そんな事、手遅れだって分かってる。けど、何もしないよりはマシだろうが!!」
アイゼンは拳を握り締め、座ってる切り株をおもいっきり叩きつけた。
「続ける事に意味がある」
アグノスは目を伏せ、口を開く。
「貴様のやった事は消える事は無い。だから、誰もが幸福に暮らせる世界の為に、奴らを討たねばならない。過去ではない、未来のために力を尽くせ」
アイゼンは涙に濡れる目をアグノスに向けた。無意識のうちに拳に込められた力が少し緩まった。
「いずれ彼らにも話すが良かろう」
「あぁ。そうするよ」
「まさか生きてるうちにそのチカラを目にする日が来るとは」
次期里長、ケイン・マールウェイが隣の地面に座り、パンをかじりながら言を進める。
「ゼノは“聖剣に選ばれた者の力”って言ってたな」
俺も同じ種類のパンをかじって続ける。正直ラヴェンヌ村のパン屋の方が腕が良い。こっちは少しばかり固い。
「聞いたことがある。一部の村々や集落のみに言い伝えられてる伝承だ。大きな街とかでは消えちまった話だな。この里でも伝わってるぜ」
ケインは時々パンをかじりながら話始めた。
「聖剣、今は変わっちまったから邪剣か……が封印された話は勿論知ってるよな? 子供からお年寄りまでみんなが知ってる。この話には続きがあるんだ。邪剣にはまだ聖なる力が残っていてな、その力に選ばれた者に不思議な力が宿る。蒼い闘気を身に纏い、鬼神の如く力を発揮するとな。そしてそれと対を成すのが“邪剣に選ばれた者”だ。分かるな? 邪剣の邪悪な力が宿った者だ。紅い闘気を身に纏い、これまた鬼神の如き力を発揮する。
伝承の続きはこうだ。遠き未来、聖剣と邪剣の復活を賭けて選ばれた者同志がぶつかり合う。互いは一歩も退かず、壮絶な剣戟を織り成すだろう。
残念だが、勝者は分からない。その先は記されていないんだ」
ケインが語り終える頃にはお互いのパンが無くなっていた。
俺は生唾を飲み込む。
(俺にそんな“チカラ”が!?)
やや真剣な眼差しで両手を見つめる俺の背中を、強く叩いてケインは笑った。
「まぁ、気にすんなって。何度か“チカラ”の話を聞いたけど、二者揃った話は聞いた事無ぇから。お前さんも大丈夫だって」
ケインは冗談めかして笑った。
「ほら、稽古だ。魔法術は武器を介せば使えるから、その“チカラ”をなんとか制御しねぇと。日数も残り少ねぇぞ!!」
「あぁ!!」
俺は強く返事をして応え、置いてある木剣を握った。
今回は色々と説明が多くなりました。もっと戦闘シーンを増やしたいですw
気長に読んで下さいなm(__)m




