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剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
第三章~夢見る少女の鍛冶精錬~
25/50

6.

 リアンの状態が落ち着き、アリアとアイゼンはシエルの淹れたククル茶を啜る。

「リアンは……ぐっすりのようですね」

 アリアはカップに両手を添えたまま眠る少年を見やる。

「この調子だと当分は起きねぇだろうな」

「でも、明日には起きると思うよ」

 シエルとアイゼンはそれぞれの感想を口にした。アリアは床に転がる袋を見た。勿論自分が運んできたミスリルが入っている。

「あたし、帰らなきゃ」

 アリアは思い出したように立ち上がり、カップをテーブルに置いた。袋を持って部屋を出ようとするとシエルに止められた。

「アリアさん。もう夜も遅いしここに泊まっていったらどう? ちょうどベッドも一つ空いてるし」

 シエルの温かい提案をアリアは蹴った。確固たる決意を胸に秘めて……

「いえ、あたしにはやらなくちゃいけない事があるので。それと、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

 アリアは告げ、ドアを開けた。




 アリア・レムナークは走る。希少な金属を抱え、夜中のラヴェンヌ村をひたすら走る。自分の作業場へと向かうために。

 暗い夜道、石畳の若干の段差に躓き、転んでしまった。

 白灰色のミスリル原石が転がる。ミスリルの光は失われていた。ミスリルにこびりついた発光苔が死滅した為だ。

 アリアは手を伸ばしミスリルを胸の辺りに引き寄せ、抱きしめる。


 少しの間目を引き結んでいたが、キッと見開いて立ち上がった。

(リアンはリアンの仕事をした。今度はあたしの番!!)


 少女は走る。自らの戦場へと赴く為に。




 バンッ!!

 豪快な音が家内に響く。

(お父さん、夜遅くにゴメン)

 心の内で唯一の肉親に謝罪し、鍛冶スペースに向かう。

 木で作られた粗い扉を勢いよく開いて室内に入る。壁、床、全てが石レンガで造られた、増設した部屋。


 室内は月の僅かな明かりが差し込む。

 入り口付近の小さいテーブルに置いてあるマッチに火を着けた。

 ほんのりとした明かりが部屋を包む。元々小さい部屋なのでそこまで広さが無い。

 アリアはマッチの火が消えないうちにかまどに放り込む。

(あたしの戦いをはじめるわ。リアンのための戦いを)

 かまどはパチパチとした弱い火から轟々と燃え盛る炎へと成長を遂げる。


 アリアは手袋をはめ、原石を取り出した。

(まずは原石を溶かす)

 原石をとある容器に入れ、竈の口に差し込む。

 すぐに溶けるわけではないのでしばらく火加減と闘う事になる。


 やや弱くなってきたと思うので筒から酸素を送り込む。

 汗がこめかみの辺りを伝うが気にせず続ける。

(そろそろかな?)

 道具で容器を挾み、思い切って容器を抜きだす。

 案の定、ミスリルは熱々の液体となっていた。

 落とさないように気をつけ、道具を使って台に載せる。その後以前造った剣の型を棚から引き出す。

 シンプルだが力強さを感じるデザインだと思う。

 型を台座に差し込む。そして上――柄に当たる部分――から液体化したミスリルを流し込む。

(あとは、待つだけ)

 アリアはホッと一息。ここまでくれば後は型を外して、最終処理をするだけ。

 入り口付近のテーブルの近くにあった丸椅子に座る。

(気付かなかった……汗、凄いな)

 作業を淡々とこなしていたし、作業に集中していたため、気付かなかったが相当な汗をかいていた。

 同じくテーブルに置いてある布で顔の汗を拭う。

(やっぱりある程度汗かいてた方が心地良いな)

 アリアは立ち上がり作業に戻った。


 台座に刺さった型をじっくり見る。注ぎ口も確認したがどうやら固まったようだ。

(ここからが大事!)

 壁に打たれた釘に下げられた槌を取る。重い感触を返した槌は頼もしい感触を右手に与えた。

 台座の注ぎ口を抑え、槌で軽くトントンと叩く。時間も置いたし、ミスリルの熱さでボロボロになった型は簡単に剥がれ落ちた。


 そこには白灰色に出来上がった剣があった。

(出来た……………最高傑作だよ)

 剣を両手に抱え、アリアはペタリと地面に座った。

「リアン。出来たよ。あたしの最高傑作。あんたに使って欲しい」

 自然とアリアの瞳から一粒の雫が流れ、新しく出来た剣へと落ちた。

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