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剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
第三章~夢見る少女の鍛冶精錬~
22/50

3.

 目が覚めると辺りはぼんやりとした光に包まれていた。

 アリアはおもむろに体を起こし、座った姿勢のまま周囲の状況を確認する。

(ここ、は? 地下空洞!?)

 どうやら地盤が落ちて、地下の巨大な空間に堕ちてしまったようだ。

それにしても美しい景観。

空間は幻想的な碧い光に満ち、石たちは巨大な氷柱を作っている。

石の氷柱から落ちる雫が地底湖に落ち、水の音が反響する。見ているだけで心が洗われるようだ。

 アリアは景色に見とれ、重要な事を忘れていた。

(リアンは!?)

 彼女は必死に周りを見渡すがどこにも漆黒の剣士の姿は無かった。

「嘘!? リアン!! どこ!?」

 アリアが焦燥心をあらわにし、リアンを探す。その時、アリアの下でモゾモゾと蠢く気配がした。

「ひっ!?」

 喉の奥から自然と声が出た。動いたモノの正体を確認するべく下を見る。

「お、重い」


 開口一番、漆黒の少年は桜色のポニーテールを携える少女におもいっきり横腹を蹴られた。

「ぐ、ほぁ……」

 少年は思わず体をくの字に折り曲げる。対する少女は頬を赤らめ、ふくれっ面を作り、プイっとそっぽを向いてしまった。

 アリアは、ぼんやりと思考を巡らせる。

(まさか、あたしを庇ってくれた? いや、まさか。それは無いでしょ。でも墜ちる直前、あたしの為に……)

 アリアは思い出し、顔を真っ赤に染めた。



「とりあえず、ここから出ないとだよなぁ」

 リアンは天――落ちてきた上方――を仰ぐ。アリアもそれにならって上を見上げた。

「俺らが生きてるの……奇跡的だよな」

「うん」

 高さは…………よく分からない。高すぎて距離感がつかめないくらいだ。

 アリアは頭上からリアンに視線を戻した。

「これから、具体的にはどうするの?」

 聞かれたリアンは淡々と答えた。

「適当に歩いてれば出れるんじゃね?」

 アリアは不安度マックスの視線をリアンに向ける。

 それに対しリアンは、

「な、なんだよ!?」


「もういい、ついてきて」

 アリアはリアンの手を握ってグイグイ引っ張った。

「痛い痛い。なんか既視感デジャヴを感じるのですが――」

「うるさい!! 黙ってついて来て!!」

 リアンを制しアリアは地下空洞を入り口の方角に進んだ。





(いつまで握ってるつもりだろう?)

 俺は一つの疑問を抱えつつ、アリアに手を引っ張られ、地下空洞内を進む。しかしここで口にそれを出すのは野暮ってものだ。

「ん?」

 俺たちの歩く前方、暗くなってきた空間にポツリと一つの蒼い明かりが見えた。

「あれは……あの光は!?」

 アリアは掴んでいた手を離し、蒼い光の方に駆け出した。

「あ、一人で行くなよ。危ないぞ」

 俺もアリアに続いて駆けた。



「これは? 鉱輝石?」

 光ってるので鉱輝石だと思った。俺の発言を聞いていたアリアに怒られる。

「違う!! そんなチンケな鉱石じゃない。これは、ミスリル!?」

 アリアの目は驚愕に見開かれていた。詳しくない俺でも分かる。すごく珍しいモノなのだと。

「これがあれば、リアンに武器を……」

「え、こんなに良い物使ってもいいのか?」

 俺の問いに対して、少女は満面の笑みを浮かべる。

「勿論!! 借りもあるしね」

(借り? なんかしたっけ?)

 俺は記憶を掘り返そうとするが止めた。



 何かの柔らかい足音が近づいてきていた。

 魔獣だ。恐らくオーク。しかし何故こんな地下深くに、普通は森林などで遭遇するものだが。

 奇妙な形に上向きの鼻、全身が家畜のような茶色い体毛に覆われていて、粗い槍を持っていた。着ている物は局部に巻いた布だけ。

「下がっていろ」

 アリアはコクリと頷き、後ろに下がる。

 俺は抜剣し目の前の脅威と相対した。オークは槍を構える。荒い鼻息をより一層荒くし俺めがけて突進を開始した。

「紫鎧の方がっ!!」

 俺は槍を弾く。一気に懐に入った。

「手強いなっ!!」

 右上への斬りあげ。

 オークは鮮血を吹き出し倒れ伏した。

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