3.
目が覚めると辺りはぼんやりとした光に包まれていた。
アリアはおもむろに体を起こし、座った姿勢のまま周囲の状況を確認する。
(ここ、は? 地下空洞!?)
どうやら地盤が落ちて、地下の巨大な空間に堕ちてしまったようだ。
それにしても美しい景観。
空間は幻想的な碧い光に満ち、石たちは巨大な氷柱を作っている。
石の氷柱から落ちる雫が地底湖に落ち、水の音が反響する。見ているだけで心が洗われるようだ。
アリアは景色に見とれ、重要な事を忘れていた。
(リアンは!?)
彼女は必死に周りを見渡すがどこにも漆黒の剣士の姿は無かった。
「嘘!? リアン!! どこ!?」
アリアが焦燥心をあらわにし、リアンを探す。その時、アリアの下でモゾモゾと蠢く気配がした。
「ひっ!?」
喉の奥から自然と声が出た。動いたモノの正体を確認するべく下を見る。
「お、重い」
開口一番、漆黒の少年は桜色のポニーテールを携える少女におもいっきり横腹を蹴られた。
「ぐ、ほぁ……」
少年は思わず体をくの字に折り曲げる。対する少女は頬を赤らめ、ふくれっ面を作り、プイっとそっぽを向いてしまった。
アリアは、ぼんやりと思考を巡らせる。
(まさか、あたしを庇ってくれた? いや、まさか。それは無いでしょ。でも墜ちる直前、あたしの為に……)
アリアは思い出し、顔を真っ赤に染めた。
「とりあえず、ここから出ないとだよなぁ」
リアンは天――落ちてきた上方――を仰ぐ。アリアもそれにならって上を見上げた。
「俺らが生きてるの……奇跡的だよな」
「うん」
高さは…………よく分からない。高すぎて距離感がつかめないくらいだ。
アリアは頭上からリアンに視線を戻した。
「これから、具体的にはどうするの?」
聞かれたリアンは淡々と答えた。
「適当に歩いてれば出れるんじゃね?」
アリアは不安度マックスの視線をリアンに向ける。
それに対しリアンは、
「な、なんだよ!?」
「もういい、ついてきて」
アリアはリアンの手を握ってグイグイ引っ張った。
「痛い痛い。なんか既視感を感じるのですが――」
「うるさい!! 黙ってついて来て!!」
リアンを制しアリアは地下空洞を入り口の方角に進んだ。
(いつまで握ってるつもりだろう?)
俺は一つの疑問を抱えつつ、アリアに手を引っ張られ、地下空洞内を進む。しかしここで口にそれを出すのは野暮ってものだ。
「ん?」
俺たちの歩く前方、暗くなってきた空間にポツリと一つの蒼い明かりが見えた。
「あれは……あの光は!?」
アリアは掴んでいた手を離し、蒼い光の方に駆け出した。
「あ、一人で行くなよ。危ないぞ」
俺もアリアに続いて駆けた。
「これは? 鉱輝石?」
光ってるので鉱輝石だと思った。俺の発言を聞いていたアリアに怒られる。
「違う!! そんなチンケな鉱石じゃない。これは、ミスリル!?」
アリアの目は驚愕に見開かれていた。詳しくない俺でも分かる。すごく珍しいモノなのだと。
「これがあれば、リアンに武器を……」
「え、こんなに良い物使ってもいいのか?」
俺の問いに対して、少女は満面の笑みを浮かべる。
「勿論!! 借りもあるしね」
(借り? なんかしたっけ?)
俺は記憶を掘り返そうとするが止めた。
何かの柔らかい足音が近づいてきていた。
魔獣だ。恐らくオーク。しかし何故こんな地下深くに、普通は森林などで遭遇するものだが。
奇妙な形に上向きの鼻、全身が家畜のような茶色い体毛に覆われていて、粗い槍を持っていた。着ている物は局部に巻いた布だけ。
「下がっていろ」
アリアはコクリと頷き、後ろに下がる。
俺は抜剣し目の前の脅威と相対した。オークは槍を構える。荒い鼻息をより一層荒くし俺めがけて突進を開始した。
「紫鎧の方がっ!!」
俺は槍を弾く。一気に懐に入った。
「手強いなっ!!」
右上への斬りあげ。
オークは鮮血を吹き出し倒れ伏した。




