表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
第三章~夢見る少女の鍛冶精錬~
21/50

2.

 剣を握る。剣を振るう。これからも相棒でいられると信じていた剣を。


 上半身に軽いアーマー、下半身の局部に薄い布を巻いた獣人。緑の薄い鱗に覆われたリザードマンを斬り伏せた。

「こんなもんか」

 リザードマンは濃い緑の血しぶきを吹き出して倒れた。岩陰に隠れそれを見ていた少女は俺を見ている。

「だ、大丈夫?」

 不安気な調子で俺に尋ねたポニーテールの少女はぴょんっと岩陰から飛び出てくる。

「まだまだ現役だと思うけどなぁ」

 俺は剣を改めて見直した。斬り払いして緑のべっとりとした血を振り落とし背中の鞘に収める。

「だ・か・ら、それはいつスッポ抜けちゃうか分からないんだから」

 少女は腰に左手をあて、悪戯っ子に注意をするように俺に迫る。

「へいへい。わぁあってますよ〜だ」

 俺は後頭部を掻きながら薄暗い洞窟の奥へと足を向けた。 



 少女の話だと、とある洞窟に目的の鉱脈があるらしかった。そこまで深くないので一人でも大丈夫と言っていたが。

「魔獣多くない?」

「う、うるさい!! あたし一人でもなんとかなるもん」

 少女はふくれっ面でプイっとそっぽを向いてしまった。

「あ、はは」

 少女の態度に、俺は苦笑を禁じ得なかった。


 しばらく歩いていると少女が唐突に口を開いた。可愛らしい声が言葉を紡ぐ。

「ね、ねぇ。そういえばあんたの名前はなんていうの?」

「え?」

 勝ち気な少女は更にその口調を険しくさせ、

「あんたの名前は何!? って聞いてんの!!」

 何故か怒られた。しかし俺は文句は言わず答える。

「俺の名前はリアン。リアン・ディール。君は?」

「あ、あぁ……あたし!? あたしは……その……いいじゃない。別に」

 何故か口ごもり俯いた。覗きこむと頬が微妙に赤らめている。

「あたし…は………アリア・レムナーク」

 聞き取りづらく小さかったが俺はなんとか聞き取れた。

「分かった。よろしくな、アリア」

「う、うん」

 アリアは俯いて腕を胸の辺りで組み頬を紅潮させている。具合でも悪いのだろうか。気になるので確認をとっておく。

「顔、赤いけど大丈夫?」

 桜色の前髪から覗いた双眸が俺を睨みつける。

「あ、あんたには関係無いでしょ!!」

 やはり頬を膨らませプイっとそっぽを向く。何か悪い事をしたのだろうか。

 ささやかな疑問を胸に秘めた俺と桜色ポニーテールの少女――アリアは洞窟の奥へと歩を進めた。




 しばらく歩くと暗闇の先に微細な光が見えた。

「なんだろう?」

「鉱輝石よ」

「コウキセキ?」

 よくわからなかった俺は首をかしげ、とりあえず復唱してみる。するとアリアから補足説明が入った。

「自らが発光するから輝く石。加工すると重い剣になるの、ちなみに日の光を浴びるとその光は失われてしまうわ」

「へぇ〜」

(珍しい鉱石なのかなぁ)

 俺の中で勝手に推測する。シエルに見せてあげたいけど、光は消えちゃうらしい。

「ボサっとしてないではやく行くよ」

「お、おう」

 堅い灰色の石で覆われた洞窟の通路に淡い緑の光で満たされた一角が姿を見せた。

その光はとても優しく、決して目が痛くなったりしない。

 鉱輝石の原石の前に俺とアリアは立つ。アリアはおもむろに肩掛けバッグを降ろし大振りなツルハシを取り出した。なんか重そうだなぁ。

「俺がやろうか?」

「いい。あんたにはどこを叩けばいいか分からないでしょ?」

 確かにそうだ。知識の無い俺などでは彼女の仕事を代わる事も出来ない。

(自分の仕事に誇りを持ってるのかもな……)

 俺はぼんやり考えたがそこで思考を止めた。


 ガチャリ、ガチャリ。


(聞き覚えのある音だ……)

「まさか!?」

 気付いた時には既にそこに居た。アイゼンが苦戦しつつも退けたあの紫鎧だ。

「クソッ!! なんでこんな所に!?」

 俺の表情は自然と鬼気迫る表情に変わっていた。

「アリア!! 俺の後ろに!!」

「えっ!?」

 紫鎧から視線をはずさない。紫鎧は以前と全く同じ姿形装備をしていた。関節の隙間からは禍々しい光が漏れ、大剣からも同様に光が滲み出る。

 俺は勢い良く抜剣した。

(最後の大仕事だ。俺とアリアを守ってくれ)

 俺の思いが伝わったのか、鞘走る際に相棒は頼もしい感触を返してくれた。

「アリア、下がってろ!!」

 俺は振り向かず叫ぶ。紫鎧はゆっくりと、力を感じさせない動きで近づいてくる。

「う、うん!!」


 俺は紫鎧との距離を測る。五歩で縮まる程度の距離だろう。

「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 俺は勢いよく地面を蹴り、走りだした。

 紫鎧はゆっくりとした動作で大剣を持ち上げ、上段に持ってきた。構えはとっていない。

 右手に握った剣で紫鎧の側部を斬りつける。しかし、やはりと言うべきか、紫鎧は恐るべき速さで大剣を一閃。

 俺は勢いに負け、剣を押し戻される。

「クッ!!」

 戻された勢いを殺さず、時計回りに回転して回転斬りを叩き込む。大剣はまたも閃き、俺の剣と斬り結ぶ。

 俺は左手を添え鍔迫り合いに持ち込む。

 

 やはり押されているか。俺自身の持つ剣の刃が鼻先まで迫っている。

 俺は左手を外し、紫鎧の胸の辺りの突起を掴んで足を払う。

 途端、一気に力が弱まり押しこむ事に成功した。

 しかし紫鎧は後ろに飛び退る。直後、俺は見てしまった。その左手付近に漂う紫の光の球体を。

「あれは!? 闇属性魔法術!? だとしたら!!」

 闇属性であの光量。地盤が砕けるほどのモノであろうことは容易に想像出来る。それにこの場所で発現させたら術者の方も危険な筈なのに。

「まずい!!」

 俺は剣を納刀するのももどかしく、逆手に持つ。

 そして、後ろで俺と紫鎧の戦闘を見ていたアリアに向かって走りこんだ。

「え?」

 ややタックル気味に――もはやタックルで――彼女に抱きつき、倒れる。後頭部と腰の辺りに手を回し、直撃は避けたがやはり苦しかった筈だ。曇った呻き声が漏れた。


 俺とアリアが倒れた直後。

 黒の閃光。のちに爆風。

 俺とアリアは揃って闇の奈落へと墜ちる。


「うぁぁああああああ!!!!」「きゃああああああああ!!!!」


 悲鳴は木霊する。闇に覆われた奈落の底まで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ