間章
目を覚ました俺を迎えたのは濃い紺の髪を肩の辺りまで流した少女の笑顔だった。
「あ、起きた!!」
シエルは満面の笑みを浮かべ、俺の胸に抱きつく。俺は起きてすぐの覚醒しきっていない頭で状況を整理して、シエルの頭をゆっくと撫でた。シエルはうっすらと涙を浮かべた。
どれくらいかは分からないが、しばらく寝込んでいたようだった。
「悪い、心配かけたな」
シエルは顔を上げ、首を横に振った。
「信じてた。絶対に目を醒ますって」
シエルの言葉に俺はゆっくりと笑み浮かべ、
「そっか」
シエルとの感動の対面を果たしたその後、しばらくして相棒が勢いよく部屋のドアを開けたのだった。
「リアン!! 心配したんだぜ。もう目を覚まさねぇもんかと」
アイゼンは泣く寸前で堪えた。
「それよりお前ぇ。あのチカラはなんだ?」
部屋に静寂が満ちる。シエルだけがよく分からないという顔をしていた。
「俺も……よく分からないんだ。あの時は、シエルを助ける事に無我夢中で、そしたら急視界が蒼く………………」
「そうか」
アイゼンの答えは淡白だった。俺も本当によく分からなかった。視界が薄い蒼に染まったり。
本来高位の魔術師にしか扱えない、俺なんかが扱える筈のない詠唱無しの術式の使用など、訳が分からなかった。
俺たちの沈黙を破ったのはシエルだった。
「そ、そうだ!! フールの実食べる? 安かったから買ったんだ」
「う、うん」
「すぐに剥いてあげるね」
告げるとシエルはベルトから多目的ナイフを抜き、自分のベッドからフールの実の入っている(と思われる)紙袋を持ってきた。
シエルは青い実をひとつずつ取り出し丁寧に剥いていった。
「チカラについては王都に戻ったら王立図書館とかをあたってみるよ」
俺はアイゼンへ向けて言った。それを聞いたアイゼンは踵を返す。
「分かった」
彼は一言告げて部屋を出て行った。真剣モードのアイゼンを見るのは戦闘中など、命の危機があるときだけだ。
ここは取り繕っているだけだろう。俺の予想は当たっていたようで後日。その日は酒場で騒いでいたことを聞いた。
『フールの実』は現実での『リンゴ』のような物と捉えて下さい。(皮が青いリンゴです)




