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剣戟の幻想物語 とある少年の冒険記   作者: やきたらこ
第二章~王の懇願~
12/50

6.

 城の中庭。応接室への道を俺たち三人は歩いていた。スカウトの兵士を先導に。

 舗装された道の脇には整えられた樹木、道以外は平坦な緑が覆っていた。

「ここでは兵たちの訓練も行われているのですよ」

 兵士の説明が入る。兵士たちの血と汗と涙が染み込んでる芝なのだ。安易に踏めない。


 応接室は中庭の中央に位置する。しかし中庭は広大だ。兵士の訓練などが行われている事から、城の人間の運動スペースでもあるのではないだろうか。

 俺はどうでもいい考えを巡らせているうちに応接室に着いた。

 どうやら城と応接室は直接繋がっていないようだった。

 重々しい扉は、赤く塗装された木材を金であしらっている。兵士の案内はここまでだ。

 俺は重々しい扉を開く。室内は一流の調達品で彩られ、隅々まで掃除の手が行き届いていた。しかし様々な調達品よりも真っ先に視線を釘付けにさせたのは、王。アルバート・ラグス・ディメンティだった。

 全てを射抜くその双眸は真っ直ぐに俺たちを捉えていた。老いが入っても未だ消えぬ風格は、長い歴史を重ねてきた王国の主を堂々に表していた。

 隣で唾を飲み込む音が聞こえる。アイゼンも緊張しているのだろう。


 突如アルバートの目の奥の鋭い光が消えた。その後彼は優しい表情を作り、俺たちの顔一人一人見つめた。

「さぁさ。お座りくだされ」

 俺たちは完全に拍子抜けした。もっと堅いイメージを作っていたからだ。

「は、はい」

 俺は慣れない返事を返してアルバートの向かいの席に座る。俺が中央、アイゼンが右、シエルが左隣だ。

「まぁまぁ、そう緊張しなさんな」

 王は低い声で囁きかける。とても優しい声音だった。確かに国民に好かれるわけだ。


 王側の扉がゆっくり開かれる。入ってきたのは一人のメイドさん、ティーワゴンを押して入ってきた。

「ちょうどお茶も届いたようだな、どれ淹れてさしあげなさい」

 メイドさんは一礼し、カップやらなにやら準備を始める。

「ところで、そなたらはどのような職に就いておるのだ?」

 アルバートは問う。俺が代表で答えた。

「俺たちは流浪の身です」

「旅人の方だったか、道理で。では実戦経験も多いのでは?」

 緊張気味だが、俺は質問になんとか答える。

「え、えぇ、一応。我が身を守る為に幾度かは」

「そうか…………ぬしもご苦労だった」

 後半はあのメイドさんに向けた言葉だった。俺たち三人の前に運ばれていたのはハーブティー。ソーサーの上にカップ――恐らく一つ数十万もの値段が付く――が置かれ、カップ全体の半分くらいの量が注がれていた。色は薄い赤。真っ先に手を伸ばしたのはシエル。そういえばお茶が好きとか聞いた事ある気がする。

 シエルはカップとソーサーを上品に持ち上げ、カップに口をつける。そして感想を一言。

「美味しい!! これ、どんな種類のハーブを?」

「数十種類の葉を組み合わせているらしい。私には分からないがな」

 アルバートは苦笑気味に言う。

しかし朗らかな目に唐突に真剣な火がともった。

「そろそろ本題に移ろうか」

 



「おぬしらも知っていると思うが我が国は戦時下にある」

 王がハッキリと“戦っている”と言った事に俺は驚いた。

「必然、人出が足りなくなる。ここで、おぬしらに手伝って欲しい」

「ドラゴンの事っすね」

 アイゼンが先に答えた。王は少し面食らって微笑を漏らした。

「案内の兵に聞いたか。それなら話が早い」

 王は笑みを消して続けた。

「どうか、手を貸してくれぬか?」

 王は問う。俺たち一人一人の目を見つめて。

 俺たちは異口同音に口を開いた。

「任せてください。必ず竜を討ち取ります」

「悪い竜はあたしたちが退治します」

「村の平和は任せて欲しいっす」

 俺たちの返答を聞き、王は表情をほころばせた。

「そうか、よかった。よろしく頼むぞ。ほらお茶の冷めないうちに」

 アルバートに促され、お茶を啜った。





「えっと。この街の東方面か」

 俺は地図を見つめ呟いた。

 俺たちは宿に戻ってきて部屋で出発の準備をしていた。俺とシエルの準備が終わり、アイゼンを待つのみとなっていた。彼は一番荷物が多い。

「港街の近くだね」

 シエルが地図を覗き込み言った。

「馬車で往復してもらえるから助かるよな」

「確かにそうだね」

 俺とシエルが談笑しているとアイゼンの準備も終わった。

「よし。行こうか。馬車の兵士を待たせると悪いし」


 俺たちは宿屋を出て、王都東側出口へと歩を進めた。

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