3. 悪役に攻略対象を紹介する
私は悪役に連れられて廊下を歩いていた。この聖マリア学園は名家の子息、令嬢も多く通うお金持ち学校だった。かく言う私も、父親が医者で裕福なほうだが。
(さっすが私立、隅々まで金かかってるなー。)
うひょーと思いながらも前を歩く悪役キャラの少女、久遠 玲子を見ていた。
久遠 玲子──久遠財閥の一人娘で、攻略対象のファンクラブ会長を務めている。
この学園には、アイドルとしてまつられている男子が3人いる。それぞれ派閥ができており、一つのファンクラブに隊長が一人いてファン会員たちをまとめている。彼女はその隊長たちをまとめているいわばトップだった。
ものすごいお嬢さまで負け知らず。プライドが高い、気の強い美人。
(私の好みドストライク………!!)
ツンデレ系が好きな私は、素直じゃないくらいがちょうどいい。普段はすました顔をしているけど、咄嗟の出来事にうろたえて赤面したり涙目になったりする……。っていう妄想をずっとしてきました。はい。
今まさに憧れの彼女と一緒に歩いている…!!そう思うと顔がにやけた。
「…何を笑っていらっしゃるの?不愉快だわ」
見られてしまった。ツンをご馳走さまです。デレもくださいお願いします!訝しげな顔をしたが、その歪んだ顔もすてきだね!!諦めたのか、玲子はそのまま前を歩き出した。
玲子が向かった先は温室だった。色んな種類の花が咲き誇っている。そんな美しい花にも目を向けず、彼女はさっそく口を開いた。
「わたくしの言いたいことはわかるかしら、春風さん。あなたはあの方たちに近づきすぎているのよ。これではファンクラブの、いいえこの学園の均衡が崩れてしまうわ。分かったならあの方々にこれ以上近づくのはやめなさい」
玲子は淡々と忠告をする。呼び出しをしても冷静で、取り巻きも作らない。そこも彼女のいいところだった。孤高で美しい。彼女とお近づきになりたい。
(でも………)
私の女子ハーレムのために!!
「聞いてるかしら?」
私は意を決して口を開いた。
「──久遠さんは、あの人たちの誰かを好きなの?」
「………は?」
私は話を聞かない天然女を演じることにした。
「あのね!私、ずっと久遠さんとお友達になりたかったの!!そういうことなら私、久遠さんに協力するね!!!」
「は!?」
玲子はポカンとしていた。
「わたくしが言いたいのは、そういうことではなく」
「好きじゃないの?」
「わたくしは、そんな恐れ多い感情を抱いては──」
「でも、ファンクラブの会長さんなんだよね?だったらやっぱり好きってことだよね!!大丈夫!私、誰にも言わないから!私のことシノってよんで!久遠さんのこと、玲ちゃんってよんでいい?」
「あの、わたくしの話を……」
「よしっ!そうと決まれば行こっ!!善は急げだよ!玲ちゃんはやく!」
玲子の手を取って走り出す。わー手がすっごい華奢だ!!さっすがお嬢様だね!わたくしの話を聞いてーとかなんとか言っているけど、構うもんか。悪役の手を引いているからか、百歩の法則は現れなかった。やったね!どさくさにまぎれて玲ちゃん呼びしてやったぜひゃっほう!!
玲子の友達になりたかったのは、攻略対象を紹介したかったからもあるけど、もう一つある。
ファンクラブの存在だ。
イケメンのファンクラブだ、構成員は女子。玲子と友達になってファンクラブの子とお近づきになりたい……!知り合いを増やしていって女子ハーレムをそこから築こう。てかもう囲まれたい。敵意のない目でね…!
玲子の手を握りながら、一人目の攻略対象を探す。……いた。
さぁ、作戦開始—─




