柵の中より
僕はずっとこの柵の中にいます
ときどき かわいい! と女の子が駆け寄ってきたりします
僕はなにも物言わずここから柵の外を見ています
ある日沢山の白と黒の車がやってきました
慌しく沢山の人が走り回っています
僕の耳に聞こえる会話の中に「殺人」「事件」「犯人」「被害者」そんな言葉が聞こえてきます
その時青いシートにくるまれようとしている女の子を見ました
あ、その子なら知ってるよ
さっき僕の頭をかわいいと撫でてくれた子だよ
そのあとその子が倒れているところで一緒に来た男の人と喧嘩になってその子は急に倒れたんだよ、声も立てずにね
その時の男の人 僕は知ってるよ ほら集まって見てる見物人の中にいるよ 黒い服の
ほらそこに
じっとその様子を見ている僕に気付いた刑事さんと呼ばれていた男の人がが僕の頭を撫でながら呟きました
「お前、なんか見てたか?馬が目撃者じゃな~、お前が喋れれば聞いてみたいよ」
そうだね 貴方が馬の言葉を理解できたならね・・・・・
あの黒い服の男の人の姿はもう見物人の中にはありませんでした
僕は今日も柵の中にいます
そしてときどきかわいい!と言われ女の子に頭を撫でられているのです
そうあの日のように