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密室

 続いて。

 202号室を、様々な角度で調べてみましたが――。

 殺人現場は、間違いなく密室でした。

 つまり、バナナ殺人事件は密室殺人という事になります。

 普通のアパートの二階で扉と小さな窓は、普通に施錠。

 そういう、普通の密室です。

 ほんの少し考えただけでも、十かそこらは、この部屋を密室にする方法が浮かんでくる。合い鍵を使うという簡単なモノから、糸や仕掛けを使った古典的な方法、それに心理的なトリックまで、幾らでも方法が浮かんでしまう。

 202号室の密室は、そんな、ごく普通の密室だったのです。

 その代わりではありませんが、よくよく調べてみると、殺人現場の外側には、もう一つの密室がありました。

 バナナ殺人事件は、アパートの二階で起きた事件ですが、この二階には上がるには、道路に面している階段を上らなければならないのです。その階段前では、朝はいつも、一階の奥様方が井戸端会議をしているのです。

 その証言に依れば、殺人事件が起こった事になっている一時間、階段を使った人物は一人も居ないのです。

 つまり、一階のご婦人方が共謀していない限り、容疑者は二階の住人に絞られます。

 勿論、現実的に考えれば、階段を使わず二階に上がったという可能性や、光学迷彩を使用して脱出した可能性もあります。他にも、人目に触れずアパートの二階を出入りする方法は、幾らでもあるでしょう。

 けれど、Code1101によって発生した殺人事件は、数式のように、かなり明確な答えを有しています。

 ある探偵は、Code1101を評して、こう言いました。

『Code1101はアクロイド殺しの真相並みにフェアなんだよ』

 その言葉を信じるならば、Code1101には、本当に最低限の公平さは保証されているのでしょう。少なくとも、どこからか侵入した謎の人物が犯人という、現実にはありふれている、しかし、推理小説としては破綻してしまう掟破りは無い筈なのです。だから、二重密室であると確認できた以上は、容疑者は二階の住人に絞っても良いでしょう。

 そう結論づけた私は、二階の住人から聞き取り調査を行う事にしました。

 アパートの管理人でもある管理局局員から話を聞くと。

「二階には、四つの部屋があります。その内、三つが埋まっています。一つは、殺人現場となったシステムエンジニアの部屋で、残り二つには、マッドサイエンティストとゴリラが住んでいます」

「……ゴリラ?」

「はい、ゴリラとマッドサイエンティストです」

「…………なにそれ」

 本当に容疑者にゴリラが出てくるなんて。

 しかも狂科学者のおまけ付きで。

 私は思わず素に戻って、管理局局員の顔を呆然と見返します。けれど、管理局局員は、ガラス玉のような瞳で、私を見つめ返すだけでした。

 この事件。

 一筋縄ではいかないかも知れません。


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