表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

魔法?

「ふむ……」

「もう、難しいですよー」


 メルカさんに、文字を教えてから既に1時間。持って来た本は『世界情勢について』だった。

 メルカさんはMなのだろうか?文字が読めない人が、初めに手を着ける物ではない。


「あのさ、もう1度聞くけど……絵本とかないの?」

「私はコレがいいんです!」


 10分起きに聞いているが、反応は同じ。やはり、Mなのだろうか?


「えっと……これが『あ』で……」


 正直、これじゃあ一生読めないと思う。この本にはもちろん、漢字だって入ってくる。そう漢字。

 音読み、訓読みに始まり、『田舎』などの例外を持つ物もある。かけてもいい、絶対無理だ。

 ただ、一言言いたい。ここまで、演技する必要があるのだろうか?文字が読めない演技をする必要が。


「あーもう!ルイさん、読めませんよ!」

「なら、本を変えようよ」

「嫌です!」


 ヤル気だけは認める。ヤル気だけは。

 俺はそれより、怒る度に尻尾が垂直に立つのが面白い。これも、機械仕掛けなのだろうか?最近のコスプレは凄い。


「なぁ、その尻尾……」

「触らないで下さい!」


 悲しいな……。


「読んでみせますよ!」

「がんばって……」


 この『世界情勢について』なる本は、多分このメルカさんが演じているであろう世界設定だと俺は踏んでいる。

 聞いた事がない国名ばかりが載っているし、まず世界地図が違う。


「演技も凄いのに、想像力も豊かなのか……」


 いや、役者と言うのは演技をするに当たってその役を想像すると言うし……やはり、才能なのだろうか。


「なぁ、俺暇なんだけど」

「ちょっと、うるさいですよ!」


 俺……一応、客扱いなんだけど……餌だけど。


「コレでも読んでて下さい!」


 メルカさんに渡されたのは……。


「初級魔法?」


 わお、魔法だって。

 火の玉とかだよ。漫画とかで良く見るよね。


「どうせ、獣人族は魔法使えないので私は興味ありません」


 ふむ、獣人族は魔法が使えないのか……まぁ、使えるって言って俺がお願いしたら、そこで演技終了だもんな。


「なら、俺はコレを読んでるわ」

「あぁ、もう!なんて読むのこれ!」


 既に聞いてなかった……。




「魔法……ねぇ」


 本を開くと、そこには日本語で書かれた文字が。

 やはり、メルカさんが書いたのだろうか?


「どんなのがあるのかなー」


 元々本を読むのは好きだ。それが、親に止められている物ならなおさら。


「ライト……指先に灯りを灯す魔法……。他には」


 魔法と言うから、火の玉を連想していた俺としてはがっかりする物ばかりだった。なんか、日常生活に使う物ばかりなんだもん。

 最初にあった『ライト』に始まり『ウォッシュ』は服に付いている汚れを落とす魔法。

 何か、こう……とりあえず、火の玉を!


「ん?あるじゃん、攻撃魔法」


 俺が見つけたのは、皆大好き火の玉の魔法。

 いや、絵的に火の玉だと思う。


「えーと……こう、腕を前に出して……」


 なんか、めんどくさいな。

 とりあえず外に向けて……火の玉を想像して……。


「……」


 結果、火の玉が見事に完成!でも、そのまま下に落ちた。


「って、熱っ!って熱くない!」


 どっちだよ!

 火の玉だから熱いと思ったら、全然熱くない……と言うより、床に落ちたはずなのに燃えないんだけど?


「火の玉……だよな?」


 とりあえず、触ってみる。

 うん、熱くない……つか、持てる。火を。


「……火の玉なの、これ?」


 手に収まるぐらいの大きさの火の玉……であろう物。

 どうしよう、コレ……。


「投げたり……出来るのかな?」


 とりあえず、目標は……目に止まったのは、読書と言うより解読に夢中なメルカさんだった。


「ふむ……えりゃ」


 見事にメルカさんの頭に命中……つか、頭に乗っかった。


「……」

「…………」


 反応なしか。


「メルカさーん」

「はい?」


 俺は頭の上を指で指す。


「頭?……キャァ‼︎」


 面白いな。


「え、なにこれ……火の玉?にしては、熱くないし……」


 やっぱり、熱くないよな。

 なんなんだこれ?


「魔法ですか?これ」

「魔法……なんじゃない?」


 分からない。


「ルイさん、魔法も使えるんですね」

「魔法なのかな?」


 熱くない火の玉は、まず火の玉なのか?


「ふむ……」


 水を想像したら、出たりするのかな?

 とりあえず、メルカさんに向けて水鉄砲のイメージで。


「……」

「…………」


 出た。

 まっすぐにメルカさんめがけて、水が飛んで行った。


「ルイさん?」


 出るとは思ってなかったから、水が出た後の事を考えてなかった。


「何か言うことはありますか?」

「あー……ごめんなさい?」

「謝ってませんね」


 メルカさんの、怒りの込めた言葉と共にメルカの姿が消えた。


「なっ!」


 床を見ると、窓から射し込んだ光で出来た影が。

 俺のともう一つ、頭に猫耳がある影が。


「後ろ⁉︎」


 だが振り向いたそこには、何もなかった。


「普通の人間かと思ったら……一瞬でも、私がいた場所が分かったなんて……ルイさんは、やっぱり凄いですね!」


 目を覚ましてから、2回聞いたメルカさんのはしゃいだ声。

 ただ、聞こえたのは俺の後ろ……つまり、最初にメルカさんがいた場所。


「どう……やって……」


 後ろを振り向けば、今度こそメルカさんの姿があった。


「どうもこう……獣人族ですから」


 答えになってないし……。

 それに、メルカさんの場所が分かったのもたまたまだし……。


「これは、ご主人様に報告ですね!」


 よっぽど興奮しているのか、既に本に対しての興味をなくした上に、俺の事すら見てない。


「ルイさんはー……とりあえず、寝てて下さいね」

「え……」


 疑問を感じた瞬間に感じる、腹部の痛み。気付けば目の前にはメルカさんの姿が。

 そして、メルカさんの拳は俺の鳩尾(みぞおち)へと吸い込まれていた。

 そこまでの、状況判断が限界だった……俺はそのまま、意識を放り出すしかなかった。


不定期更新ですm(_ _)m


感想、批評お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ