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精霊と主人

 朝の講義室。


 先日、問題児である西門路と、オレは佳奈を、西門路は退学をかけて模擬戦を行い勝ちを得たオレ。その結果、西門路は学校を本当に退学した。オレ自身、西門路はどうなろうと知ったこっちゃないため、あーそうなんだ。とほぼ無関心。

 西門路のお付きの三人のうち二人は模擬戦での、西門路の情けなさを見て見限って離れていった。

 西門路は問題児であるとともに、大学内での番長的な位置にいたのだが、その地位までも失った。そのせいもあり、仲間と居場所を失った西門路は大学を自主退学した。


 おかげで講義に復帰する生徒がたくさんいた。講義には問題児がいなくなったことでいつも通りの静かな光景が戻ってきた。


 それはいい。それは全然問題ないんだ。


 だが、西門路を倒したという事が広まり、オレは有名人となってしまった。オレのことを知ってる生徒からは、良くやった!、ありがとう!などの言葉をもらって正直困りものだ。別に退学させようと思ってたわけじゃないし、佳奈を守ろうとしただけで、こうなった。


 さらに1つ困った事があった。西門路のお付きの一人だった片凪ひなたがオレ達とつるむようになった。それ事態は全然問題ないのだが、佳奈が不機嫌となりオレへの態度が冷たくなった。何というか、ツンデレのツンしかないツンツンみたいな事態になってしまった。その反面で、ひなたはニコニコ笑顔で楽しそうにしている。西門路達といる時に見たことのない笑顔で、少しドキッとする。


「俊貴は今日3限までだっけ?」


 オレの右隣に座るひなたが笑顔で聞いてくる。左側には佳奈がムスッとしながら座っていて、オレの頭の上ではノエルが横になって眠っている。


「そうだけど、何か用事があるの?」


「よかったら遊びにいかない?」


 と、帰りの寄り道を誘ってきたひなた。

 特にやることもないし、いいか。


「いいよ。佳奈はどうする?」


 佳奈も今日は3限で終わるため、佳奈にも聞いてみる。佳奈は話を振られてオレを睨み付ける。

 睨まなくてもいいだろ…


「…わたしはパス。課題やんないといけないし」


 つん、と前を向き机に肘をつく佳奈。


「そっか。じゃあ、二人で行く?」


 ノエルもいるけど、周りをふわふわと浮くか、オレの頭か肩の上にいるだけだから、そんな問題もないだろう。


「私も行っていいの?」


 上半身だけ起こしてひなたの方を見るノエル。


「いいよー。ノエルは俊貴と一心同体だからねー」


 ニコニコ笑顔で言うひなた。どことなく浮かれてるような気もするが、まぁ気にしないどこう。


「じゃあ、行くー」


 そういって、ノエルはまたオレの頭へと上半身を沈める。

 そのタイミングと同時に先生が講義室に入ってきた。


「はい。では、今日の講義は身体強化の魔術を…」


 ガヤガヤしていた講義室が、次第に静かになっていき講義が始まった。


*****************************************


 講義も終わり、街中を歩くオレとひなた。ノエルはオレの頭の上に陣取り、道行く人や店を見ている。オレとノエルが一緒にいるようになって2週間経つが、まだ魔術都市が珍しいようでキョロキョロと周りを伺っている。大人しく頭の上にいてくれるため心配はしてないが、いなくなったら嫌なので気を付けてはいる。


「で、どこに行くんだ?」


 オレは何をするのかも聞いてなくて、ただひなたについてきただけだったため目的地を聞く。


「どこって、ゲーセンだよ」


 何を聞いてんの? みたいな顔をするひなた。


「ゲーセンか、久しぶりだな」


 いつから行ってないかな。記憶では大学に入ってからは一度も行ってなかったな。たまには良いか、ゲーセンも。


「俊貴はあんまりゲーセン行かない?」


「んー? まぁ行かないね。ゲーセン行ってまでゲームやろうとは思わないし、やるならゲーム買ってやるかな」


 お金払ってゲーセンでゲームやるんなら、店でゲーム買って好きな時にやれる方を買う。


「そうなんだ、じゃああんまりクレーンゲームとか好きじゃない?」


「あー…、あれは取れるときはとれるけど、とれないときは全くとれないよ。って、そういうもんか」


 苦笑いするオレ。それを見て可笑しそうにクスクスと笑うひなた。


「じゃあ、プリクラとかもとらないの? 佳奈とか」


 と、ひなたが聞く。


「…とらないな。ってか、一回も一緒に行ったことないし」


 言われてから気づいたが、佳奈とゲーセンに行った記憶がない。確か、面白くないし不良が多いとか色々文句を言ってたな。

 不良が多いってなんだよ…


「へぇー。じゃあ、アタシが初めてになるんだね」


「え? プリクラとるの?」


「うん」


「そのために行くの?」


「うん」


「…そっか」


 良くわからんけど、まぁいいか。女子のプリクラ大好きっプリがオレには良くわからない。でも、口には出さない。


「ほら、ここ!」


 と、急に止まって目の前のお店を指差す。


 3階建ての大きな建物で、あちこちにライトが着き夜になるとかなり明るそうな店が建っていた。自動ドアの真上にでかく目立つ字で‘マル・リアス’と書かれていた。


「マル・リアス?」


「うん、お店の名前。何かゲーセンの他にもオークションとかやってるらしいよ」


 ひなたがスタスタと自動ドアへと向かっていく。オレもその後に続いて店の中へと入っていく。


******************************************


 店内に入って数時間後。オレとひなたは店から出てきた。オレが初めて入るということもあり、1階から3階まであって、一般客は2階まで入れて、特別な客は3階まで入ることができる。


 1階はゲーセン。2階はオークション会場となっていて、3階は入れなかったため何なのかわからなかった。


「やー、一杯撮ったね!」


 満足気に先程撮ったプリクラと、腕に2個ほど何かのマスコット的なぬいぐるみを抱いている。このぬいぐるみはプリクラを撮り終わった後にやったクレーンゲームでオレがとった景品だった。オレはいらないからひなたに全部あげた。


「それにしても、俊貴はクレーンゲーム上手いね!二回やって二回とも成功するとかすごいよ」


 満足そうに笑みを浮かべるひなた。


「あんま嬉かないけど、ひなたが喜んでるならまぁいいか」


 頬をかき苦笑いするオレ。


「にしても、どうだった? 気に入った?」


「うーん、どうだろう」


 正直、あまり気にいってない。ゲーセンはともかく、オークション会場がどことなく怪しい雰囲気をしていた。2階、3階は何か雰囲気が違う。裏があるというか、普通じゃない。


「どうかした?」


 店を出て、店の外観を見ていたらひなたが聞いてきた。


「…オークションって何が出されてるとか知ってる?」


「ううん、わたしはゲーセンしかいってないから全然知らないよ。それがどうかした?」


「いや、何が出品されてるのかなぁと思っただけ」


 外観は派手なゲーセンと、オークション会場でしかない。


 ふと、その店の中へと入っていく大きめの馬車が見えた。馬車は人を載せてるようで、白い布の隙間から人の姿が見えた。ただ、薄暗くて良く見えなかった。


「…」


「俊貴、どうかしたの?」


「いや、大丈夫。帰ろうか」


「うん」


 オレとひなた、ノエルは帰路へとついた。


*****************************************


 夜。

 オレとノエルは晩御飯を終えて部屋でくつろいでいた。


 ノエルは晩御飯を終えて、楽しそうにテレビを見ている。どうやら、テレビが気に入ったようで家では大体テレビを見ている。


 楽しそうにテレビを見るノエルを見て、オレは表情を緩め、その場に横になる。


「あ、そうだ」


 オレは上半身を起こし、ノエルの方を見る。

 ノエルもオレの方を見て首をかしげる。


「ノエルを襲ってきた変なやつが言ってた、‘精霊が表面に出てる’‘主人格も表面に出てる’ってどういうこと?」


「あー…。そうですね。契約した精霊とユニゾンすると、主人の中に精霊が入って同期し、‘精霊の分’強くなれる。でも、同じ肉体に2つの意思があるわけです。それが私達で言う、主人格が俊貴、精霊が私に当たります。その意思は別のものなので、表面には主人格か精霊のどちらかが出るのが普通なんです」


 なぜか丁寧な口調になるノエル。オレは気にせずに頷く。


「2つの意思は、いくら波長が合っていようとも別の意思。各々違う考え方を持ってる。だから、2つの意思が表面に同時に出てるということは良くないんです。何が良くないって言われると色々あるんですが、例えば、1つの銃弾が飛んできました。それを私は左に俊貴は右に避けようとします。ですが、体は1つ。2つの相反する意思に体は動かず銃弾は直撃する、という事態が発生するんです」


「なるほど。でもそれだったらあの男が驚いた理由とは違うよな。相手の心配してる」


「うん、あの人は私が表面に出てた事に驚いてるんだよ。普通、精霊と契約してユニゾンしたとしても、私達精霊が表面に出てくることは殆どないの。あったとしたら、その精霊とかなり波長が合うか、二人の間に信頼関係が築けているかのどっちか。それで、半日しか一緒にいなかった私達なのに、私が表面に出てた事に驚いてたんだとおもう」


「へぇ、そうなのか。ってことは、あの男はそうとう精霊とユニゾンの事を調べてたんだな。」


「うん、そうだと思う。精霊と無理矢理でも契約して何がしたかったんだろう。あの人は」


 力を得て人の役に立とうとしたとは思えないし、何か大きな事を企てていたのだろうか。


「何にせよ、捕まえれて良かった。」


 ノエルとユニゾンしたおかげで、謎の男を撃退して捕らえる事ができた。牢屋に入れられたら流石に何か事件を起こすなんてできないはず。


「ねぇ、話変わるけどいい?」


 と、ノエルが話を切り替える。オレは、いいよと頷く。


「俊貴のお姉さんはまだ帰ってこないの?」


 前に家族の話をして、姉が仕事でここに居ないのを覚えていたようだ。


「もうちょっとかかるんじゃないかな。っても、いつ帰ってくるのかなんてわからんから何とも言えないんだけどね」


 姉は仕事に出ていき、帰ってくる時は急に帰ってくる。それが夜だったり早朝だったりとムラがある。


「そっかぁ。どんな人か気になるなぁ」


 ノエルはその場から飛んで、机のはしっこに移動して座り、脚をぶらつかせる。


「なんと言うか、1人で騒がしい人だよ。」


 オレは苦笑いして答える。


「賑やかそうだね」


 ノエルは姉に会うのを楽しみにしてるみたい。


 とまあ、そんな会話をしながらのんびりと今日を過ごした。

どうもー。


活動連絡としてGWは基本的に休みとさせてもらいます。自分の状況で変化しますが基本的には休みとさせてもらいます。なので、次回更新は来週からと考えてます。


感想、誤字脱字等もらえると助かります。

これからもよろしくお願いします。

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