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拾肆

ごぶさたしております。

火が、燃えていた。

メラメラと、激しく。

目の前の家屋を飲み込んでいく。


しかし、その熱を感じなかったから。


(ああ、これはあの夢、か)


新選組に入ってからは、その忙しさのためにあまり見なくなっていた、夢。


父と妹と三人で暮らしていた、その最後の記憶。


『お前たちは、早く逃げなさいっ、早く!!』

『父さんはどうするんだよっ』

『私のことはいいから、早く!!青藍、紫紺しこんを頼んだぞっ』

『お父さんっ』


普段の父からは想像できない力で外に押し出される。

そのあとすぐに柱が崩れた。


そして、ただ炎に飲み込まれていく家をただ見つめることしかできなかった。

泣きながら、父を呼ぶ妹を、ただ、抱きしめて。



なぜ、父が死ななければならなかったのか。


その後、人の噂で初めて知ったことだが、父はただの浪人ではなかった。

蘭学者と広く交際があったらしい。


ただ、父が開国主義者であったかどうかは、定かではない。

青藍の知る父は幕府やら尊王やらなどとは関係のないように見えた。


それなのに、一部の過激な尊王攘夷者に、放火された。


その炎は周辺の家々も巻き込んだ。

その後、いつのまにか、妹とはぐれてしまった。


しっかり、手をつないでおけばよかったと。

幾度後悔しても足りない。


『兄上』


笑顔がとてもかわいかった。

将来はとても美人になると、まだ見ぬ未来の妹の夫に嫉妬するほど心配だった。


もう、二度と会えないかもしれない。


とても家族思いで、あのときだって必死に父を追おうとしていた。


夢の中の紫紺は、青藍の腕からすり抜けていく。


(待て、行くな。いっちゃだめだ。…戻ってこいっ!……紫紺っ)



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