拾壱
短いです。
京都は、盆地という独特の地形のためか、夏は夜になっても蒸し暑い。
しかし、秋口に差し掛かっている現在は、その暑さが恋しく思えるほど涼しくなっていた。
「全員そろっているか」
集まった隊士たちに声をかけているのは、副長助勤の一人、井上源三郎だ。
新選組の中で最も年上で、落ち着いた雰囲気の持ち主だ。
土方、近藤とも気軽に話せる数少ない人物の一人でもある。
「こちらはそろっていますよ」
そう、返事をしたのは、同じく副長助勤の山南敬介。
おっとりとした雰囲気の知性を感じさせる青年だ。
新選組の幹部で、御用改めに向かうのは、この二人と斉藤を含めた三人である。
残りは峰岸を含めた平隊士で、計十数人の一団であった。
「ではいくぞ」
井上が声をかけ、一団は屯所の門をくぐった。
「…き、気合、気合っ」
「…何か言ったか、峰岸」
「あ、いえっ。藤堂さんから御用改めは、気合だと。それで」
「…無理はするな。別に死ににいくわけではない」
「まあ、その意気や良し、ですがね」
「山南さん。…何かあったのか」
「ええ。…山崎君からちょっとね」
「今回は当たりだと聞いていたが」
「ええ。当たりは当たりでも、大当たり。結構きついかもしれません」
「そうか」
「ふふふ。斉藤君には関係ありませんね。私は気を引き締めないと。…峰岸君?大丈夫ですか?」
「…えっ?いや、あの、はいっだ、大丈夫です」
「うん。それならいいよ。では、ね」
にこり、と。品のよい笑顔を浮かべてから山南は先へ歩いて行った。
これから、人を斬りに行くようには見えない。
「峰岸。一つ言っておくが」
「はい、なんでしょうか」
「実践は稽古とは違う。怖気づいたら、死ぬ。生きたければ、殺すしかないことがある」
「…はい」
「…生きろよ、峰岸」
会話ばかりですみません。