隣の席の幼馴染がつめたくない?大丈夫そう?そんなにつめたいと浮気するからね?
オレには、紗智という幼馴染がいる。
そんな紗智は、とにかく他の人とは違うオーラが漂っている。
泉の精霊かのような美しさは、いつどこでどのようにうまれたのか?ずっと幼い頃から一緒にいるのに、なぜ…なぜいつのまにか、こんなに美しくなってしまったのだろうと、真剣に考えてしまうほど、美しい。
そんな美しい幼馴染がいるなんて、オレは自慢して歩きたいくらいだ。
しかし…
実のところ、オレたちが幼馴染だということを、だれ一人として知らない。
うん、言ってないからね。
紗智も、おそらくだれにも言っていないのだろう。
別に秘密にしているわけでは、ない。
ただ…とくにいうことでもないし、タイミングがないだけだ。
言ったところで…ね?っていうのもある。
高校生のオレたちは、クラスが一緒だ。
なんなら、席も隣同士だったりする。
クラスメイトの男子からは、羨ましいと何度も言われた。
なんなら、睨まれる…
でも、こればっかりは運命だから仕方ありません。
席替えの運命で、これからの人生がかわるといってもいいほどである。
席替えってさ、ある意味お見合いパーティなんじゃね⁉︎
なんなら、合コンかもしれない。
素敵な儀式をありがとうございます。
校長先生をはじめとする、保護者代表及び皆さま、また、先生がた皆さま。
そして、地域の皆さまの理解があるからこそ、今ぼくたちは安全にこうして暮らしております。
と、席替えバンザイを一人で黙々とかみしめる。
「ねえ、賀名斗」
オレを…オレの名前を優しく包み込むような声で呼ぶのは、もちろん隣の席の紗智だ。
「なに?もう全身で包み込んでもいいんだぞ?」
「え、なに言ってるのかわからないけど、さっきから先生が呼んでるよ?」
⁉︎
先ほど感謝したばかりの先生が呼んでるだと⁉︎
すっかり自分の部屋へ心が閉じこもっていたせいで、先生がかやのそとになるところでした。
「あ、先生…いたんですね。傷んでるかと思って心配してたんですよ」
クスクスと笑いが起きる。
「なに言ってるの!先生は、傷んでいません!なんなら、ぴちぴちなのよ!」
「あー、たしかに…」
服がぴちぴちだ。
皆、大爆笑だった。
「もう…いいから、ここの問題解いてみて」
「あ、そういうことですね。了解です」
オレは、サラサラと問題を解いて席へ戻った。
そして、紗智に言った。
「またせてごめんな。さみしかっただろ?もうひとりにはさせないよ」
って。
そしたら、普通に
「そんなわけないから、大丈夫だよ。なんなら静かでよかったわ」
と、かえされた。
ええ、ですよね。
「なぁ、紗智」
「なに?」
「そんなにつめたいと、オレ浮気するからな?」
「えっ?それは、理不尽すぎるよ。だって、わたしたち…付き合ってないのに…浮気なんて…ひどいよ…妄想がね」
「ですね。」
「うん、てか、授業中だから集中して?」
「紗智にだろ?もう全集中してるぞ?」
「勉強に」
「はい。」
こうして、楽しい時間が過ぎつつある。
でも、席替えって…先生の突然の気分でやってきてしまうんですよ。
明日席替えしまーす。っていうんです…
皆は、チンパンジーなのかってくらい、手をぱんぱんさせて喜んできゃっきゃしていた。
何人が先生へ、笑顔で前歯のお披露目会をしたことか…
しかし、オレは絶望感半端なかった。
「えっ、席替えだってよ⁉︎紗智…オレたち…別居婚だぞ?いいのかよ、このままで‼︎オレ、さみしくて浮気したらどうすんだよ⁉︎一緒についてきてくれるか?」
「それはよくないよ。虚言すぎるって…そもそも結婚してないからね?浮気もついてくるも、ないのよ」
「あ、そうっすね。なら、とりあえず結婚するか」
「そんなこと、あっさり言わないでよ。しかも、こんなところで」
「だな。ちゃんとオレの布団の中で言わなきゃだな。抱きしめながら、今夜ちゃんというよ。ベッドメイキングもバッチリしとくからな」
「いらない、ベッドメイキングとか、いらないから。時間の無駄すぎるよ」
「そうだな。そんな時間あったら、紗智を抱きしめるほうが優先だな」
「違うから。とりあえず、わたしは静かになるから、よかったわ」
「強がりだなぁ。後でひとりで泣くんだろ?大丈夫だ。ひとりには、させない。泣かせたりしないよ。紗智」
「うん、大丈夫。泣かないし、ひとりじゃないから安心して。このクラス、何人いると思ってるのよ」
「あー、言われてみればたくさんいるね。でも、言われるまで気づかなかったよ。オレには、紗智しかみえない」
「眼科いきな」
…
もう、つめたいやつめ。
つめたいなら、あたためたらいいのか。
「紗智、抱きしめていい?」
「意味わからない。てか、そんなこと今、ぜったいやめて」
「今…ぜったい?」
「ぜったい。」
「絶交?」
「そこまでは…」
「じゃあ、絶好調?」
「それは、賀名斗だけね」
「なら、結婚しよ?」
「しない…てか、今は…だから、そもそもこんなところで言わないでってさっき言ったよ?」
「あ、そうだったな。てか、今夜も徹夜でアレする?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、席替えしても安心だ。オレたちは、毎晩つながってるもんな」
「うん、もちろんだよ。ゲーム仲間なんだから」
「そのチーム名、かえない?」
「チーム名だったの?てか、なんてかえるの?」
「ゲーム夫婦とか、夜な夜なこっそりイチャつく幼馴染とかにさ」
「べつにイチャついてないじゃない」
「じゃあ、イチャつこう?今夜から」
「やだよ…まだ…」
「まだ?なら、あとでこっそりな♡」
「ばか…っ」
…
てか、あなたたち…今まさにめっちゃイチャついてない⁇って、席の近くのクラスのほとんどが思っているのでありました。
おしまい♡




