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骸欠血損する食品群に関する一連の報告書  作者: 初枝れんげ(『追放嬉しい』7巻3/12発売)


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学生T氏へのインタビュー記録(2024年12月28日)

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 毎日19:07に更新!

 ぜひ読んでね!


タイトル

「骸欠血損する食品群に関する一連の報告書」


キャッチコピー

「 関係者はメニュー表にない料理を絶対に出さないでください 」


ジャンル

「ホラー(モキュメンタリー)」


作品リンク

https://kakuyomu.jp/works/822139836343947661

・ブログ読者様である学生T氏へのインタビュー記録(文字起こし)

・今回T氏より連絡をいただき、インタビューさせて頂く運びとなった

・インタビューの条件として特定を避けるため、人物名・地名・団体名など全て仮名としている

・以下、インタビュー内容。取材側:佐倉 山羽(表記:佐) 取材を受ける側:T氏(表記:T)



佐「本日はお越しいただきありがとうございます」


T「いえ……、とんでもないです。むしろ、突拍子もないお話なのに、聞いて頂く時間をとってもらって、ありがとうございます」


私とTさんはK駅のラウンジでインタビューを行っている。

彼は年末の寒い季節だからか、素肌を隠すような大きめの長袖の服、更に厚手の手袋までしていた。


だが、汗のかきかたが尋常ではない。


佐「簡単にDMでは概要をお知らせ頂きましたが、改めてTさんが遭遇したという奇妙な事件についてお伺いしてもいいですか?」


T「はい……。あれは半年前のことでした」


T「俺含めて友達4人で遊んでまして、どこか食べに行こうっていう話になりました。で、学生なんでそんなに金もないってことで、安くて飲み放題があるような店がないかって探してたんです」


T「え? 探す方法ですか? 美味ログってのがあるんですよ。そこで条件を入れて探しました。安いとか、クーポン使えるとか、学割とか」


T「店はすぐに決まったんで、そこでネットで探すのはやめたんですけど、Yってやつだけは他にもいい店があるかもとか言って、しばらく適当に探してました。そうしたら、変な書き込みがあるって騒ぎ出したんです。ほら、店のコメントとか見ると、結構料理が本当にうまいのか、とか、店員の態度とか分かったりするじゃないですか。生の声っていうか。それで見つけたみたいです」


佐「なんて書いてあったんですか?」


T「はい、なんか全部カタカナなんですけど、『ウデガタリナイ。ウデガタリナイ。シタモタリナイ。アタマモ』って書いてあるんですよ」


佐「悪質ないたずらみたいな感じですね。クレームというか。コックさんが悲しみそうな」


T「そうなんですよ。ただ、Yも面白がっちゃって、便乗して書き込みしたんですよね」


佐「どんなことを書き込んだんですか?」


T「『アシモタリナイ、ナニモカモタリナーイ(笑)(笑)(笑)(笑)』『タリナイノハオマエノハートダヨ(笑)(笑)(笑)』。とか、そんな感じの書き込みでした。いわゆる煽り返す、みたいな」


佐「はぁ、なるほど」


T「ただ、それからです。変なことが俺たちの周りに起こり始めたのは……」


佐「変なこと、ですか?」


T「その集まりの後、1週間してYがロープ自殺しました」


佐「それは……悲しかったでしょうね。何か悩みがあったのでしょうか」


私は悲痛な面持ちで言う。


しかし、T氏は顔を青白くさせたまま首を横に振った。


T「いいえ。あいつは自殺するような奴じゃありません。もちろん、悩みのない人間なんていない、そう言うのは簡単です。でも自殺するぐらい悩んでいるかくらい分かる。あいつには将来を誓った彼女だっていたんですよ。今度旅行に行くって楽しみに話してました。それにあんな死に方、普通じゃない……」


佐「死に方……?」


T「ロープ自殺……と言いましたけど、あいつが死んだのは首つりじゃないんです」


佐「え?」


T「足に自分でロープを結んで廃ビルから飛び降りたんですよ。逆さづりです。人間は逆さづりになったままにしておくと、内臓が圧迫を受けて、呼吸困難で死亡するんです。あいつはそうやって廃ビルで自殺したんですよ」


佐「……」


T「それから2週間して、別の友達も自殺しました。滋賀の山に一人で行って、そこで地元の工具屋で購入した電動のこぎりを使って、首を切断して死んでました。警察は木を切ろうとした時に誤って首を切る事故だったって言いましたけど絶対に違います。あいつはインドアな奴でいきなり電動のこぎりで木を切ろうとするなんてありえないんですよ」


T「また4週間が経過して、最後の一人が亡くなりました。電車に轢かれての死亡です。やはり自殺だって警察には言われました」


佐「駅のホームから飛び降りたのでしょうか?」


T「いえ、あらかじめJR●●線の線路近くに潜んでいたみたいです。それで、特急が近づいてきたときに飛び込んだみたいで」


佐「それは、自殺ということじゃないんですか?」


T「俺もそうかと思いました。ただ、詳しく聞くと、変なんですよ」


佐「変?」


T「レールが敷いてあるじゃないですか? そこに腕を広げて十字っていうんですかね。そういうポーズをとってわざわざ轢かれようとした、っていうんです」


佐「十字?」


T「はい。自殺なら特急に体を轢かせようとするはずです。でも、レールに十字になるっていうのは。それじゃまるで」


佐「両腕だけを切断しようとしていた?」


T「そ、そうなんです! 他の奴らもそうなんじゃないかって!」


佐「お、落ちついてください、Tさん。えっと、『そう』とは、一体どういうことでしょう?」


T「書いてあったじゃないですか。『ウデガタリナイ。ウデガタリナイ。シタモタリナイ。アタマモ』って」


そして、それに対しYは『『アシモタリナイ、ナニモカモタリナイ、タリナイノハオマエノハート』と返事をした。つまり……。


T「俺は、何となく、それが返答になってしまったんじゃないかって思うんです。足りないものを『捧げます』っていう」


T「最初のYがわざわざ逆さまになってたのは、内臓ナカミを口から出そうとしていたんじゃないかって思うんですよ。二人目のノコギリは、首を切ってアタマを差し出そうとしていた。そして三人目はさっきのウデを捧げようとしていたんじゃないかって」


佐「そ、そんなことは……」


私は否定しようとしましたが、その書き込みとの奇妙な符合に、二の句を告げず、ゴクリと喉を鳴らしました。


しかし、私は何とか言葉を探して彼に言いました。


佐「で、でも、Tさんは無事じゃないですか。半年前からこうして変わらず生活している。それなら……」


私は何となく、怯え、震えている彼に触れようとして指先を伸ばそうとした。


その時。


T「触ってはダメです!」


佐「え?」


Tさんが突然大きな声を上げました。


周囲にいた人たちが一瞬奇異な視線をこちらに向けましたが、すぐに関心を失って自分たちの会話に戻って行きます。


T「すみません。ただ、触ってはいけません。なぜなら……俺が一番最初だったんですから」


佐「え、それは、どういう……?」


T「これ、見てください」


彼は十枚ほどの写真を広げて見せてくれた。


そこには大きなカメレオンが口を開いている写真だった。全て死んでいる。


死んだカメレオンの口を開けて、その口内を写した写真だった。


それらすべてのカメレオンの舌が、なぜか根本からなかった。


唖然とする私に、彼は言った。


T「『シタモタリナイ』。ははは、そういうことですよね」


彼は乾いた笑い声をあげる。


T「俺が素手で触った生き物は、舌がちぎれてしまうんです。最初は意味が分かりませんでした。たまたま飼育していたカメレオンが突然死んでしまったんですから。ただ飼育していた2匹とも同じ状態で死亡しました。舌がちぎれて、口からいっぱい血を吐きながら、のたうち回りながら死んだんです」


T「可愛がってたペットが突然奇妙な死に方をしてしまったんで、しばらく大学にも行かないでいました。そうしているうちに1週間後、Yが死んだことを他の友達から聞かされたんです」


T「そのあとのこともご想像の通りです。次々に、あの日集まった友達が奇妙な死に方をしました。死ぬ時期に法則があることはすぐに分かりました。1週間、2週間、4週間です。つまり8週間後に俺も死ぬんじゃないかと思いました。ところが、死ななかった。その代わり、飼い始めた鳥も、猫も、犬も、しばらくしたら舌がちぎれて死んでしまうんです。俺に触れられると、そうなります」


佐「だから、肌を全て隠しているのですね?」


T「はい。人間が万が一、俺に触れたら舌が……。ちぎれてしまうかもしれませんからね……」


佐「そうですか……」


そこまで話すと、Tさんは少し安堵したような顔色になる。こんな奇妙な話だ。おそらく、今まで誰にも打ち明けられずにいたのだろう。


T「話はこれで終わりです。公開されたブログを読んだ時に、美味ログにカタカナで奇妙な書き込みがあった、という話を見つけたので、何か関係があるんじゃないかと思って、連絡をさせて頂きました」


佐「ありがとうございます。関連があるかどうかは分かりませんが、Tさんの情報も含めて、必ずこの謎を解明してみせます」


T「よろしくお願いします」


こうしてT氏には薄謝をお渡しして解散となった。


翌日、この近くの高いビルの屋上からT氏が飛び降り自殺を行ったというニュースが放送された。


運悪く真下にあった先端が槍の様に鋭くなっているモニュメントに突き刺さった状態で発見されていた。


直接の原因はその突端部が心臓を貫通したことによる心臓停止である。

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「骸欠血損する食品群に関する一連の報告書」


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