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骸欠血損する食品群に関する一連の報告書  作者: 初枝れんげ(『追放嬉しい』7巻3/12発売)


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園児の描いた絵に関する日報記録

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タイトル

「骸欠血損する食品群に関する一連の報告書」


キャッチコピー

「 関係者はメニュー表にない料理を絶対に出さないでください 」


ジャンル

「ホラー(モキュメンタリー)」


作品リンク

https://kakuyomu.jp/works/822139836343947661

・滋賀県のK幼稚園におけるお遊戯時間中の出来事に関する報告

・日報作成者:園長 谷崎

・作成日:2022年10月11日


一、概要


滋賀県の郊外に所在する当園K幼稚園では、日々の保育活動の一環として、情緒教育、創造性の育成を目的としたお絵描き遊びを定期的に行っている。


この日は年長組を対象に、「最近あったうれしかったことを絵で表現してみよう」というテーマを設定し、自由画形式で実施した。


園児たちはそれぞれが思い思いに筆をとり、中には自転車に乗っている自分を描く子。家族でサッカーをしている子。友達とままごとをしている絵や、お姫様になった自分を描く子など、どれも明るくのびのびとした内容であった。


しかし、その中に一枚だけ、明らかに他と趣の異なる絵が含まれていた。


二、問題の絵の内容


その絵は、全体としてレストラン、あるいはカフェのような場所を描いているように見えた。

白いテーブルクロスが敷かれ、料理皿やグラスが並んでおり、その周囲には三名ほどのホールスタッフと思しき人影も描かれている。


だが、テーブルの上は異様であった。


白いクロスの上に、大量の赤い絵の具が乱暴にぶちまけられており、それは血液のような質感を思わせるほど濃く塗り重ねられていた。


さらに皿の上に盛られたはずの料理部分は、真っ黒な線で何度も塗りつぶされ、何が描かれていたのかは判別できなかった。まるでその塗りつぶしたのではなく、もともとそういった造形であったかのようにすら、思わせるものであった。


絵の中のスタッフ3名も人間の形をしてはいたが、輪郭は曖昧で、こちらもなぜか目鼻のない影のように黒に塗りたくられていた。


床のあたりには、犬と豚を掛け合わせたような異形の生き物が描かれていた。

その口元には腸や臓物のようなものが加えられ、周囲には食べ残しと思われる残骸が散乱している。


その動物は明らかに表情らしきものを浮かべており、嬉しそうなもの。苦しそうにものの両方が存在した。人間は黒く塗りつぶしていたのに……。


ただし、この絵の中で最も目を引くのは、テーブルを囲む四人──すなわち絵を描いた少女自身とその家族と思われる人物たちである。


彼らは全員、満面の笑みを浮かべている。


そして、唇の端からは真っ赤な筋が垂れ下がっていたのである。


一見、家族団らんの食事風景にも見えるものの、目を開いてまっすぐに画用紙を見る我々の方を見つめており、笑顔は浮かべているものの、張り付いたような笑顔であり、見た者全員が背筋を凍らせるものであった。


描いた本人の筆跡もしっかりとしており、明らかに偶然描かれた絵ではなく、実際に見た光景であることがうかがえた。


三、児童への聞き取り内容


担当の担任教諭が教室にてその少女(6歳・年長組)に対して、「これは何を描いたの?」と優しく尋ねたところ、少女は少し考えるような仕草をしてから、笑顔でこう答えたという。


「そこのおみせでね、ゆびやあしがね、たくさんでてきて、おなかいっぱいなの」


言葉の調子は楽しげであり、特に怯えた様子もなかった。

しかしながら、言葉の意味はまったく理解できなかった。


担任は「お肉の料理のことかな?」と再度確認したが、少女は首を傾げ、「ううん、ゆびのほうがやわらかかった」と答えたと記録されている。


なお、この発言をした瞬間、同室にいた園児、また園庭にいた園児の全員が、一斉に遊びの手を止め、少女がいるの方を見たという報告もあるが、これはさすがに偶然であろう。


四、家庭への確認


念のため、当園としては翌週の家庭訪問の折に、当該児童のご両親へ状況を報告し、少女との会話の真意を尋ねてみた。


両親は終始にこやかで、特に困惑する様子も見せず、


「まあ、うちの子は想像が好きですから」


と軽く笑いながら応じていた。


しかし、会話の終盤、こちらが絵の具体的な内容について質問をした際。

即ち、血のような赤、黒く塗りつぶされた料理、犬か豚のごとき生き物の件に触れた際、ご両親は顔を見合わせ、そしてまるで合図を取るように、声をそろえて言った。


「ケガオイシカッタデスヨ。ゴチソウサマデシタ」

「トクニユビノブブンガオススメデス」

「コンドイッショニイキマショウ」


言葉の抑揚や発音は日本語として不自然な響きであった。

まるで暗記した文章を一言一句間違えずに復唱するようであった。

笑顔はそのまま、まばたきもしなかった。ただ、唇の隙間からわずかに見えた舌が黒く変色していることが確認できた。


当方は軽い戦慄を覚えたが、業務上の訪問であり、表立って追及することは差し控えた。帰り際、靴を履き替えようとした際に、玄関脇の靴箱の中から、泥のような赤黒い染みが床に垂れていたことを、念のためここに記録しておく。


五、補足と今後の対応


当該児童は普段から明るく、友人も多く、園内での人間関係に問題は見られない。

学習態度、生活習慣ともに良好で、特筆すべき異常は確認されていない。


ただし、今回の絵および発言内容から、想像上の「お店」や「食べ物」に強い印象を抱いていることがうかがえる。本人の創作の一部である可能性が高く、大人が常識の物差しで測ることは適切ではない。


一方で、その表現の具体性には一定の配慮が必要と思われると共に、反復性を見せるかどうかについても注意が必要と考える。


保護者との会話内容は両親に許可のもと録音に残しているが、再生時に常時ノイズ(低い笑い声のようなもの)が入るため既にデータは破棄している。


園としては、念のため今後も当該児童の描く絵の傾向や発言内容を注意深く観察し、必要に応じて児童相談所とも連携を検討する所存である。


記録者:園長 谷崎

K幼稚園 日報記録 2022年10月11日


(追記:当報告書のコピーをファイルに閉じた翌朝、職員室の机上に、あの少女の絵が再び置かれていた。誰が移動させたのか確認したが不明。

なお、教員の中には、絵の中の人物の位置が異なっている。すなわち、黒い影の一人が、こちら側に向かって歩いてきている、と証言している。

衝撃的な絵であったため、見間違いであろう)

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タイトル

「骸欠血損する食品群に関する一連の報告書」


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https://kakuyomu.jp/works/822139836343947661

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