お料理教室「触れ合いの心」紹介ビデオ【編集途中素材】(2023年10月4日撮影)
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タイトル
「骸欠血損する食品群に関する一連の報告書」
キャッチコピー
「 関係者はメニュー表にない料理を絶対に出さないでください 」
ジャンル
「ホラー(モキュメンタリー)」
作品リンク
https://kakuyomu.jp/works/822139836343947661
※以下は、番組編集部が収集した編集途中の映像を文字起こししたもの。
※撮影日は2023年10月4日
※撮影スタッフは全員、現在行方不明。
【映像開始】
カメラが静かにパンしながら、郊外の静かな住宅地の路地を進んでいく様子から開始される。
昼下がりの柔らかな日差しのはずなのに、画面にはどこか黄ばんだ薄闇がかかっている。
普通あるはずの風の音はなく、近隣の家からの生活音も消えているようだ。
やがて、看板が映った。
《お料理教室・触れ合いの心》
とある。クリーム色に塗られた木の扉は、まるで長く人が出入りしていない建物のように古びていた。
ナレーション(男性の落ち着いた声)
「はい、皆さま、はじめまして。本日は、地域のなかでも評判になりつつある『お料理教室・触れ合いの心』 の内部をご紹介いたします」
カメラが建物の外観をゆっくり舐めるように映した。
映像には奇妙な乱れが数秒入る(ノイズの原因は不明)。
ナレーション
「こちらの教室では、心に傷を抱えた方、ひと息つきたい方、そして日常から少し離れたい方が集まり、仲間とともにゆったりと過ごすことを目的としています。特別なことはなにも致しません。ただ、皆さまが社会から受けた痛みや受け入れがたい喧騒を、一度そっと横に置き、静かに、料理に触れる時間を味わっていただくのです」
カメラが玄関に近づいていく。
扉が開き、廊下を歩いておくの部屋に入る。
内部には白いレンガ調のキッチン・カウンター、吊り棚に整然と並べられた鍋やボウル。一見すると清潔だが、壁の一部に淡く赤いシミが乾いて残っているのが映り込む。
編集でカット予定と思われるが、この素材ではそのまま記録されている。
ナレーション
「朝は、決まった時間に起床し、参加者同士で元気に挨拶を交わします。その後は基本的に自由時間です」
「“悲しいことがあった人”
“しばらく休みたい人”
“心の奥に、まだ片付いていない痛みを抱えている人”
どなたでも、自分のペースで癒しを得られるよう、ゆったりと過ごしていただいています」
カメラはキッチンの奥へ進む。
参加者と思しき数名が、静かに椅子に座って談笑する姿を捉えた。
しかしその笑顔はどこか焦点が合っておらず、誰一人として相手の顔を見ていない様子であった。
ナレーション
「そして、夜。この教室では『共同調理』が行われます。みんなで力を合わせて鍋をかき混ぜ、切った野菜をボウルにまとめ、香辛料を調合し……言葉で語り切れない触れ合いが生まれるのです」
カメラが大鍋に寄る。
ごく普通のカレーの調理風景…のはずだが、煮込まれている具材の一部……人参がありえないしなる動きを見せる。
撮影者が息を呑む気配が入るが、すぐに「気のせいだろ」と小声で呟く音が入った。
ナレーション
「今日の献立は、カレーライスです。肉、人参、ジャガイモ、玉ねぎ。教室特製の香辛料は、熟成に時間をかけたこだわりの品。煮込むほどに旨みが引き出され、参加者からはこの世のものとは思えないほど美味しいとの声もあがっています」
鍋の湯気がカメラを曇らせる。
湯気を上げる鍋の中に、一瞬人間の腕のような形が映りこむが、参加者からは完全にスルーされている。
テーブルに並べられた皿はどれも同じ向きで配置されている。
フォークとスプーンが人体の肋骨のような並びになっていた。
参加者たちは無言で手を合わせ、静かに、まるで祈るように口へ運んでいた。
ナレーション
「さて、それでは教室を運営されている代表のSさんにお話を伺いたいと思います」
カメラが振り向く。
白いエプロンを身につけたS代表が穏やかに微笑んで立っている。
30代程度の女性だ。
背後の棚には、野菜が供物のように整列していた。
インタビューが開始される。
ナレーション
「Sさん、この教室を続けてこられて、どのような想いがありますか?」
S代表
「そうですね…… _̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘ ここに集まる方々は皆、それぞれに深い痛みを抱えています。
こ _̸̨̠͙͎̞͔̙̹ こでは、それらを急いで治す必要はないんです。ゆっくりと、心の温度を取り戻していただければと _̷̨̡̢̡̢̜̬͕̜͕̠ 思っています」
ナレーション
「皆さん、とても穏やかな表情をされていました。その秘訣は、やはりお料理なのでしょうか?」
S代表
「ええ、お料理はすばらしいものですよ。人は、言葉を交わせなくなるときがあ _̵̡̜̝̘͔͙̞͇ ります。けれどお腹は減る。死人すら。その単純な事実が仲間同士を自然に結びつけてくれる _̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘ んです!」
代表の声は柔らかいが、時折、音声が割れて聞き取りづらくなる不可解な現象が発生する。
背後の野菜たちの影がライトの位置と反して別方向に伸びているように見えた。
ナレーション
「今日の食材は、Sさんが調達されたのですね?」
S代表
「はい。たいへんなことではありますが、心の平穏のためですから、惜しみません ̸̡̢̨̠͙͎̞͔̙̹。」
ナレーション
「ご自身で育てているのですか?」
S代表
「育てているわけではなく、段階を踏んで入手している _̴̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱のです」
ナレーション
「段階……?」
S代表
「まず ̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘は、欲しい食材をレシピ化します。 ̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘ ――納めの儀、とも呼びます ̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘〈〉」
ナレーション
「なるほど……儀式的なんですね」
S代表
「_̷̨̡̢̡̢̜̬͕̜͕̠_̷̨̡̢̡̢̜̬͕̜͕̠次に、マーキングです ̵̡̜̝̘͔͙̞͇。」
ナレーション
「マーキング、とおっしゃいましたか?」
S代表
「ええ。良い反応を示し_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱てくれた相手を、候補と_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱して印をつけ _̷̨̡̢̡̢̜̬͕̜͕̠ るんです。ここの別の区画では『喫茶店』も経営しているので、そこで行うこともあります」
ナレーション
「えっと……食材の話、ですよね?」
S代表
「もちろん食材の話です。そのあと ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ は“調理条件の発生”です ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ ね。これはコントロールできません。候補が置かれた状況の流れで自然に決まります _̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱ から」
ナレーション
「たしかに、その日の料理に応じて方法は変わりますからね。」
S代表
「ええ。できれば穏便に済むほうがありがたいのですが……――素材が暴れることも ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ ありますので」
ナレーション
「……? そ、それは大変ですね」
S代表
「 ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ 次_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱ は“ガイケツケッソン _̷̡̜͍̝͚̝̯̬̘ ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ ”」
ナレーション
「す、すみません。聞き慣れない言葉ですが……?」
S代表
「作物になる段階です。ええ、作 物 ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ に“なる”んです」
ナレーション
「作物……になる?」
S代表
「ええ。その瞬間、夜の国からの食物として現れます。きちんと手順を踏んで食べれば、人は、とても幸せになれるんですよ ̸̡̢̨̠͙͎̞͔̙̹。」
ナレーション
「は、はぁ…… 皆さんが美味しそうに食事をされていたのは、きっとその……こだわりの結果なのですね……」
S代表
「そうですとも。あとは――_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱ 蚕の糸を手繰って、戻ってくる _̷̨̡̢̡̢̜̬͕̜͕̠ だけ_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱ 」
_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱ ̸̡̢̨̠͙͎̞͔̙̹ ̸̨̠͙͎̞͔̙̹ _̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱_̸̢̢̠͙̥̯̞͓̙͕̦̰̙̱
その瞬間、S代表の顔にモザイクが走る。
カメラが一瞬、真っ暗になり、次に映ったときには代表の背後の野菜の並び順が全く別のものになっている。食物が追加されたのだ。こうして食物は随時納められる。
【映像はここで途絶している】
◆補足。S代表が残したと思われるメモ書き
次は彼の好きな肉じゃがを作りたい。
メニュー表作成。メモ。
供物/食材
指・爪/細長い野菜、インゲン、オクラ →メニュー表に追加
髪・体毛/麺、キノコ、芽しめじ、えのき、麺状の何か →メニュー表に追加
眼球/球状果実、ぶどう、トマト、さくらんぼ →メニュー表に追加
心臓/芋・果実、かぼちゃ、里芋 →メニュー表に追加
内臓/キノコ・柔肉、空芯菜(野菜)、ぬめるキノコ
鼻/魚類
死の強い恐怖/苦味・渋味
無念・悲しみ/甘味・甘い果物になることも →メニュー表に追加
暴力的死/赤い野菜・肉・唐辛子になることも →メニュー表に追加
血液/酒・転換の媒介 →メニュー表に追加
頭部/蚕
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