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アベニーパファーはどう生まれた?

大陸移動と海面変動が生んだ“奇跡の淡水フグ”誕生の物語(仮説)

挿絵(By みてみん)

淡水フグの中でも圧倒的な人気を誇る「アベニーパファー」。

しかし、その生息地はインド南西部(西ガーツ山脈)だけという、極めて限定的なものです。


なぜ世界のどこにもいないのか?

なぜインドの“その場所”だけに現れたのか?


この謎を、「大陸移動」と「海面変動」という地球規模の視点から読み解くと、

アベニーパファー誕生の“壮大な物語”が浮かび上がってきます。


* * * * * * *


1. 舞台は5,000万年前──インド大陸が“ぶつかった日”


今のインドはかつて、南半球のゴンドワナ大陸の一部でした。

そこから切り離され、北へ大移動し、約5,000万年前にユーラシア大陸へ衝突します。


この衝突によって生まれたのが、インド西海岸に沿って走る巨大な山脈──


西ガーツ山脈(全長1600km)


この山脈がモンスーンの湿った空気を受け止め、

インドでも例外的な「高温多湿の淡水地帯」を作り出しました。


アベニーパファーは、この特殊な環境が生んだ「進化の箱庭」に閉じ込められ、生き残った淡水フグだったのです。


* * * * * * *


2. 海面変動が“道を断ち切った”──アベニーは孤立する


インドがアジアにぶつかった後、アジア地域には、淡水フグが広く住める 湿潤地帯の回廊 が存在しました。

(スンダランド~ミャンマー~インドまでがつながっていた)


しかし、氷期の乾燥化で状況が激変します。


・氷期 → 海面100m以上低下

・気候が大きく乾燥

・湿地帯・小河川が消滅


こうして、淡水フグが移動可能だった「湿潤の回廊」は完全に分断。


その結果、西ガーツ山脈にいたフグの系統は、

他地域との交流を絶たれた“孤島”に閉じ込められます。


この孤立こそが、アベニーパファーの独自進化の始まりでした。


* * * * * * *


3. 収斂進化──アベニーは「カリノテトラオドン属」と無関係?


一般には、アベニーパファーは「Carinotetraodon属」に分類されます。

しかし、生物地理学的にも、繁殖戦略的にも、実は“別物”と考えられます。


実際、スンダランドの4種(lorteti / irrubesco / borneensis / salivator)は、

2万年前〜6000年前の海面上昇によって種分化した、比較的新しいグループです。


一方でアベニーは、


数千万年前に西ガーツで隔離 → 独立進化した古い系統


つまり、スンダランドの4種と似て見えるのは、

同じ淡水環境で“似た形が有利”だったための収斂進化と考えられます。


翼を持つ鳥・コウモリ・昆虫が別進化で同じ「飛ぶ形」になったのと同じ現象です。


* * * * * * *


4. 卵が語る真実──アベニーは“最強のK戦略種”だった


アベニーとスンダランド4種を決定的に分けるのが、卵の戦略です。


スンダランド4種(Carinotetraodon)

・卵:0.8mm

・産卵数:1000〜3000個(r戦略)

・川と海を行き来してきた名残

・「数で勝負」する外洋的な繁殖戦略


アベニーパファー(インド)

・卵:1.3mm 大きい(栄養豊富)

・産卵数:1〜10個(K戦略)

・完全な淡水生活に特化

・少数精鋭で“生存率を高める”閉鎖環境型戦略


これは、アベニーが非常に古く、独立した淡水フグであることを示す強力な証拠です。


* * * * * * *


5. 対となる系統──エメラルドパファーとパオ属の進化


この物語をさらに深くするのが、エメラルドパファー(Leiodon cutcutia)の存在です。


彼らはインド〜ネパール〜バングラデシュ〜ミャンマー〜タイに広く分布し、

ヒマラヤの隆起で生まれたガンジス水系に適応しました。


さらに興味深いのは、


パオ属(Pao)もすべて「オスが卵を守る」


という点。


海面上昇による湿潤化が進むと、

ガンジスからタイ・ラオス・カンボジアへ“淡水回廊”が復活します。


この回廊を通って東進したエメラルドの祖先が、

各地で隔離され、パオ属へ種分化したと考えられます。


アジア淡水フグはこうして、


・西ガーツのアベニー(古い系統)

・スンダランドの4種(中程度の新しさ)

・ガンジス→東南アジアへ広がったパオ属(比較的新しい系統)


という3つの“独立物語”に整理できます。


* * * * * * *


6. まとめ:アベニーパファーは「大陸移動が生んだ孤高のフグ」


今回の仮説を一言でまとめると──


『アベニーパファーは、インド大陸の衝突(約5,000万年前)で形成された西ガーツ山脈という“陸の孤島”で隔離され、淡水に特化した独自の系統として長く存続した、アジア淡水フグの中でもブロンズパファーに次ぐ古いグループである。』


そしてスンダランドのCarinotetraodon属とは別系統で、

似て見えるのは収斂進化の結果である。


卵のサイズ・産卵数・繁殖戦略は、その進化史の違いを物語っている。


アジア淡水フグの進化は、

・大陸移動(西ガーツ・ヒマラヤの隆起)

・氷期・間氷期の海面変動

・湿潤回廊の形成と分断

・収斂進化

・繁殖戦略の変化


といった“地球史の巨大な歯車”が生んだ、壮大な生物ドラマだったのです。

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