第五十一話「答えは、僕の中にあった」
その夜、悠真は眠れなかった。
明かりを落とした部屋の天井をぼんやりと見上げながら、何度目かの溜息をつく。
(……どうして、こんなに彼女のことを考えてしまうんだろう)
遥の笑顔が浮かぶ。
不意にこちらを見上げて、いたずらっぽく笑う顔。
目を伏せて、ほんの少しだけ不安そうにする仕草。
嬉しそうに話すカフェの話題。買い物中の何気ない一言。
(最初は、ただの偶然だった。どこか放っておけないって、それだけだった)
それがいつの間にか、「また会いたい」に変わり、
「一緒にいたい」になり、
そして今は、「触れたい」「知りたい」「守りたい」と願っている。
(……これが、恋じゃなかったら何なんだ)
たしかに、彼女はまだ17歳だ。
年齢差もあるし、社会的に見れば誤解されることもあるかもしれない。
でも。
(あんなにまっすぐにぶつかってきてくれて。僕のことをちゃんと知ろうとしてくれて。怖がらずに一歩踏み出してくれた)
自分は――何をためらっている?
(もし、誰かにどう思われたって、僕の気持ちは変わらない。……遥ちゃんが、好きだ)
ようやく言葉にできた“答え”に、胸がじんわりと熱くなる。
戸惑いは、もうない。
(ちゃんと伝えよう。彼女の目を見て、僕の言葉で)
スマホのカレンダーを開く。
次に会う予定を確かめて、そっと画面を閉じた。
その夜は、不思議なほどすぐに眠りにつけた。
心のどこかで、ようやく何かが「定まった」ことを感じながら。




